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「やっと会えたんだ……」

 とんでもない執着だ。怖い、怖すぎる……けれど、嫌という気持ちはない。
 むしろ、今まで存在しているかどうかも分からない扱われ方だった。それに、私としても裏表がありすぎる為、人が嫌いだった。
 ……だけれど王太子殿下は私に対する気持ちが真っすぐで、裏表もない。

 ――嬉しい。

 心のどこかで、そう思うのか、くすぐったく感じる。まぁ、こういう感情の向けられ方に全く慣れていないと言うので、今すぐにでも全力で逃げ出したい思いもあるのだけれど。恥ずかしすぎて。

「……ショーン殿下……」
「イル!」

 精一杯の勇気を出して、名前を呼べば、嬉しそうな声が返ってきた。流石に面と向かっては恥ずかしくて言えないから、顔を背けているけれど、声のトーンで王太子殿下の機嫌が分かるくらいには一緒に居るのだ。

「イル~~!!」
「きゃあ!」

 そっぽ向いていれば、いつの間にか王太子殿下の腕に抱きしめられていた。
 いや、だから今は人間だから!人間だから~~!と思って、思わず恥ずかしさから逃げる為に猫へと変化するも、王太子殿下は変わらず私を抱き留めたままだ。
 ……まだ、こちらの方が心臓への負担は少ない。
 そう思って大人しくしていれば、師匠の笑い声が聞こえた。

「君達二人ならうまくいくと思ったんだよね~。兄の策略も阻んでくれそうだったし」
「は?」

 そんな言葉に、私は素っ頓狂な声を上げた。

「イルの熱狂的なファンである殿下は、裏表なく実直。兄のターゲットだけれど、そんなのはイルの護衛能力を考えれば微々たるもの。……まぁ、呪いは想定外だったけれど」
「あぁ、イルと出会わせてくれたのなら感謝しかないな」

 師匠の言葉に、王太子殿下は素直に喜んだ。……今までの嫉妬はどこへやら、だ。というか……。

「え? 仕組まれて……?」
「仕組むだなんて人聞きが悪い。丁度良く当てはまっていただけだよ」

 最高級の笑顔で師匠はそう言った。
 ……え?じゃあ師匠としては私と王太子殿下がこうなる事まで予測済みだったと?
 ただでさえ大きい猫の瞳を、更に大きくして、瞳孔も開ききっている状態で師匠を見ていれば、一緒にお風呂と呪いは予想外だったけれど。と、視線を反らしてポツリと呟いた。
 てことは、それ以外は想定内だったわけで!
 上手く手のひらで転がされていた!?

「師匠~~!!??」
「まぁ、幸せそうだし良いんじゃないかな! 幸せになるんだよ!」
「幸せにすると決まっているだろう」

 反抗心的に叫べば、嬉し恥ずかしい言葉が返ってきた。
 どうして良いのか分からず、私は猫のまま王太子殿下の胸へと顔を埋める……きっと、幸せになれるのだろうな、と思いながら。
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