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5: 君に届かないアプリの声と極太先生の肉声。
しおりを挟むえ?これ幻聴??ナニコレどゆこと??俺はアプリに変化しつつもバクバクと鳴る心臓をそっと押さえた。
(あ"ーーークソっ!動け動けよぉぉ!!イライラする!)
お、おい、何か極太先生、意識ないか??どーゆー事だ!?
時間停止ものとかで時々意識あるのもあるけど、俺のマニュアルにはないぞ!?どういう事だってばよ!?
(テメーもキャンキャンキャンキャンうっせーんだよ!)
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!カイワシタァァァ!??
(うっせーつってんだろ!あのクソガキのケツに突っ込んでじゅぽじゅぽ言わすぞ!!)
恐怖におののく俺に、毒づく擬音がエロい!流石極太先生!
てか、これヤバいだろ!今解除したらまだ間に合うかもしれん!おい!社畜!!直ぐに出ようぜ!ヤバいって!!社畜!焔村!!そろそろ帰ろう!!届け!!俺の想い!!!届いて!!届いてよぉぉ!!
「あ、極太先生の時間停止ものだ♪やったぁ♡」
イヤァァァン暢気ィィィ!!!一個も俺の声届いてねぇー!お前の時間停止がピンチなんだってばよーー!
(何、アイツ時間停止して時間停止もの読んでンの?バカ?)
うわぁ嬉しい!だよねそうだよねアイツバカだよね!ってうわ思わず共感されて喜んでしまったけど違う!一応俺の今のユーザーは社畜君で、俺はそれなりに何か情みたいなものが…!
なんて俺の想いも虚しく、社畜君は読み耽り、全くこっちを見ようともしない。ひくり、と何だか極太先生が動いた気がする。ヤバイ!ヤバいって!社畜ー!焔村ーー!!後ろ見てえーー!焔村ーー!後ろ後ろーーー!!アアエアア"ア"ア"ア"!!
「へへへ…♡時間停止解除したら何か快感とかブワァァって一気に来るの、浪漫だよnぇ」
ぴくり、今度はハッキリと判る程身動ぎした極太先生の大きな左手が、すぅ~と伸びてきて、俺の時間停止ボタンをトン、トン、とゆっくり二回タップした。
ヴヴヴ…と一瞬、様々な電化製品の音が一斉に部屋に溢れ、直ぐまた無音に戻る。そんな静寂の中、横の極太先生だけが優雅に伸びをした。
「っあ"~~……くそだるっ。っったく、人の仕事場にズカズカ踏み込みやがって。」
さっきまで響いていた心の声じゃない、肉声の極太先生の悪態。
でも、もう、社畜君はそれに驚いたりもせず、ぴくりとも動かなかった。
あーーあ……。
俺はアプリをそっと閉じ………
「閉じれる訳ねーだろ。喋れるだけのクソアプリ。」
あっはぃ。そうです。クソアプリです。ごめんなさい。ノリで言うただけで俺にそんな権限ないっす。どーぞお使いください。使い方の簡単な説明は左上のメニューから使い方をタップでどうぞ。あ、でも、特に使用時間の制限とかはないです。はい。
スタスタと極太先生は俺の媚びとか謝罪とか説明とかをスルーして社畜君に近寄ると、ひょいと小脇に抱えて戻ってきた。
良く見たら、テーブル横に仮眠スペースか、本棚や荷物のないスペースがあった。その近くに社畜君を降ろし、何やらガサガサあちこちひっくり返している。
「まずは防水シーツとー?……お、これこれ。うっわ、相変わらずエッグいなー…。」
次から次へと出てくる悍ましいアイテムの数々に俺はそっと社畜焔村の冥福を祈った。
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