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26:☆フェロモンに溺れさせ、フェロモンに溺れる。

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唇と唇。舌と舌。吐息と吐息が重なりあう。

齎される快楽が、ジン、と舌の根に蓄積して、思わず怖くなった俺がそっとジュリアの胸を押せば、優しく指と指が絡み合い、気が付けば両手がジュリアに優しく絡め取られていた。

「はぁ…ジュリア……んぅ…」

何か言おうとしても、優しく、けれども、お喋りは許さないとばかりに舌を食まれ、吸われ、撫でられ、呼吸まで奪われかけて。

只、快楽を享受するためだけに存在するかの様に扱われる俺の舌は、唇は、口内は、すっかり俺の意思に従うことを放棄してしまっていた。

「ひゃら………」

優しく俺の服を剥いでゆく、滑らかなジュリアの指先に抗議しようにも、か細く情けない、呂律の回らない音が零れるだけで。
ソファに座ったジュリアの膝の上、俺はあっという間に裸でジュリアに横抱きにされる形になってしまった。

「可愛いよ、ネオン…♡綺麗で、魅力的だ……。」

うっとり俺の身体を指先で撫でながら見下ろすジュリアの視線に、何だか燃えてしまいそうで、俺はそっと内腿をこすり合わせた。

「っと……誤解しないでくれよ?……俺はネオンの性格が一番好きなんだ。ちょっと天然で抜けてるとこもあるけど、いじらしかったり、底抜けに明るかったり……そんなネオンが好きなんだ。身体とかフェロモンだけじゃないからな??」

どうやら大分抑制剤が効いてきたらしいジュリアが弁明するが、その言い方が、裏を返せば俺のΩにもちゃんと魅力を感じてるって事で……。

枯れ枯れに干からびていた俺のΩ性が、まるで、水をたっぷり吸った砂漠の植物みたいにうるうるプルプルに潤むのを感じた。

ジュリアが、そんな俺に言葉が染み込んでいくのを見届けるように俺を見詰め、ゆっくりと、腰骨をなぞり、指先を下げていく。

「………っ!」

つつ…とジュリアの指が俺の俺に触れ、俺はジュリアの藤色の瞳を見詰めたまま、ひくり、と喉を軽く反らせた。

ふ、とジュリアが穏やかな笑みを浮かべる。

「あ、あ、あっ、……ぁあっ……」

そこから先は、もう、何だか良く判らなくて。

只ジュリアの指が、何だか俺の俺にとんでもない快楽を齎し、俺は翻弄されていた。

サンダルウッドにジンジャーに黒糖、シナモン、蜂蜜、少しのカルダモン。甘くスパイシーな香りに、雑味、と呼ぶのが相応しい邪魔者、鳴りを潜めつつ、確かに存在する蒼い海の香り。

ジュリア、俺が常飲してた薬やハーブを止めたから、代わりに君が抑制剤を飲んでくれてるの?
俺のフェロモンに惑わされず、傍に居るために…。俺を守るために…。そう、自惚れても良いのかな??

芯が蕩けて眩眩する脳味噌でそんな事を考える。

「ウュィア……へぁっ!…ん、ンンッ!」

ジュリアの太い指の腹で撫でられ、巧く回らない舌でジュリアを呼ぶけれど、問い掛けようとするけれど、何にも言葉に出来なくて。

「ッッーーーー!!」

只俺は背を仰け反らせ、ジュリアの腕の褐色の檻の中、盛大に白濁をぶちまけた。

世界が回り、どく、どく、と鼓動のリズムに合わせて跳び跳ねて踊る。

どうやら刺激が強すぎたらしい。俺は眩む世界をぼんやり見つめ、世界に平常が戻るのを待った。


だが、ジュリアは俺の世界に平常が戻るまで待つとか、そんな積もり毛頭無かったようで、呆ける俺をソファに寝かすと、するり、と俺の太腿を撫でながら開いた。

「前だけじゃ、いつまで経っても熱が引かないだろう?……大丈夫。俺、巧いから安心して?」


『大丈夫。俺、巧いから安心して?』………?

ぼわぼわと幾重にも膜が掛かったような脳味噌に、ジュリアの言葉が染み込んでくる。

けれど、俺はそれを正しく理解する事が出来なくて、ぼんやりと脳内で反響させていた。
大丈夫、安心して。







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