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1: 王様、商人に出遭う。
しおりを挟む「こんにちは、王様。私は旅の商人オタィシ・トナリーノです。今日は美しい王様にぴったりの、とても珍しくて美しい商品やお召し物を沢山持ってきました。」
ある日、王様の元にやってきた王太子は、旅の商人だと身分を偽って王様に様々な贈り物を見せました。
「え?!これがこんなお値段で???」「何と!今回限りの限定お値段です!!」「ワーー!素敵!買います♡♡」
「ほら、見て!王様!こーんなプリップリの身がぎっしり詰まって!それがほら!こぉんなに入って!!」
「でも、お高いんでしょぉ?」「何と!今見て下さってる王様に限り!このお値段!!」「うわぁ~~♡♡安いっ!買っちゃう!」
元々、商人でも商品でもない、惚れた相手への贈り物であるため、出血大サービス処か庶民でも手が届くような捨て値で種々の貴重品を売るオタィシに、王様、ココノ・オーサムアはあっという間に心を許し、ぴっとり密着して小さな宝石の中に内包された小さな虫の説明をされても違和感を感じない程になったのでした。
「王様…♡ここで、全ての商品を購入して下さった大大大得意様な王様に、私の取って置き商品をお見せしましょう♡」
そろり、と肩を撫でても違和感なく受け入れるココノに、内心ほくそ笑みながら、オタィシは満を持して大きなつづらを開いて見せました。
「さぁ、王様!ご覧になってください!馬鹿には見えない大陸の馬鹿には見えない国の織物で作ったシャツでございます!この布のてろりとした質感!肌触り最高ですよ!見てください!こんなに軽やかなのに、この精緻な刺繍!さぁ!どうです!?絹の質が良いから、刺繍がまるで金銀宝石の如く煌めくでしょう??」
この日の為に猛修行したパントマイムの腕を存分に活かし、オタィシが腕を広げ、何かを持ったり揺すったりしてる様に装えば、まるで何もない空間に本当に美しい絹のシャツが見えるようだったと云います。
横で黙って見ていた宰相も、思わずその素晴らしい演技に拍手し、演劇好きの補佐官も思わず感嘆を洩らしました。
さて、この国、オーサムア国の王様はとっても美しく、真面目で、宰相や大臣、将軍だけでなく、下位貴族や使用人、農民達の意見にも耳を傾け、一生懸命政務に励んでいたので、オーサムア国は小さいながらも長閑で平和な国でした。
しかし、そんなパーフェクトビューティーな王様にも1つだけ欠点がありました。
王 様 は ア ホ だ っ た の で す 。
(うわぁ~凄いなぁ!!綺麗なんだろうなぁ!!どうしよ!見えないや!)
王様は、すっかり騙されてしまいました。
(凄く欲しい!着てみたい!何としても賢くなって、どんなのか見てみたい!!)
その上、馬鹿な自分には見えないその洋服がどうしても欲しくなり、どうしても見たくなってしまいました。
そーゆーところが、アホだというのです……。
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