【本編完結済】白豚令嬢ですが隣国で幸せに暮らしたいと思います

忠野雪仁

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第三章

白豚令嬢でしたが、隣国でプロポーズをされました

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食事を済ませてサロンで団らんをしていると、
急に外が騒がしくなった。
こんな時間に公爵邸に来る要件など碌なものではない。

途中から執事と共に対応していたジーク様のお父様と、
私のお母様が揃ってサロンに戻って来た。

どうやらお母様宛に王城から封書が届いた用で、
お母様はソファーに座ると封書を読んで、
少しばかり難しい顔をした。

「簡単に言うとこの国の第一王子とリーナの婚約の打診ね、
まだ正式な申込みでは無くて、
我公爵家に対しての打診だから断る事も出来るわ。
リーナは、どうしたい?」

「私は第一王子様の事を良く知りません、
今日同じクラスで会った時は良い印象はありませんでした」

白豚発言があった以降は、特に話しもしていない。
私の事を良く知らなかったみたいなので、
直接私を知っていての批判では無いのだろうけど。

「我が家の問題としてだけ考えれば、
良く知らないと言う理由だけなら、
婚約を受けても良いと思っているわ。
王子は私も知ってるけど、まだ横柄なところはあるけど、
そこそこの器はあるからね。
逆にこの段階で断る気ならリーナは、国に連れて帰るわ。
国内ならともかく、国外の王子の婚約を断ったらこの国では、
相手が限られてしまうもの」

「…そうですね」

私はジーク様に想いを寄せている、
だけど公爵家の娘としてそれを口に出せるかと言えば出せない。

今まで家族には随分守られて来た、
海外の遠いとはいえ親戚筋の王族と揉めて気苦労をかけたくない。

それにお母様のおっしゃる通り、
王子との婚約を断った令嬢との婚約なんて、
ジーク様のお家に迷惑をかけてしまう。
きっと皆は、優しいから私のわがままを聞いてくれるだろう。

だけど私は、公爵の娘。
ノブレス・オブリージュ。
決して個人の我がままを通して良い訳がない。
私だけでは無い、貴族の結婚なんて政略結婚がほとんどだ。
その時が私に来ただけ。
私は、この国にきて楽しい思い出も一杯貰った。
それだけでも圧倒的に恵まれているのだ。

「それで良いかしら、ジークさん?」

お母様は、ジーク様に話しをふった。
なんで?
公爵家の嫡男として答えなど決まっている。
でも直接は聞きたくなかった。

「いえ、それは困りますね。
私は、リーナ嬢を愛してます。
まだ年齢的に無理ですが、私と結婚して欲しいと思っていますので、
まずは婚約からお願いします」
「でも、そんな事をしたらジーク様のお家にも迷惑をかけてしまいます」

「あら全然迷惑じゃありませんよ、
今日もフレイ公爵夫人ともそんなお話をしてましたし、
王家からこんなに早く打診が来たのは想定外でしたけど」

「お母様?」
「いやね、ジークさんがチョットヘタレ過ぎじゃないかと思ってね」
「グッ」

お母様、やめてあげてジーク様がお可哀想よ。

「ごめんなさいね、リーナちゃん。
ほら家はジークの下は二人女の娘でしょ、
扱いは上手いのだけど、好きな娘への距離のつめかたが分からないのよ、
家の旦那様とそっくりね」

「うっ」

スノー様やめてあげて下さい、
折角傍観を決め込んでいた、ジーク様のお父様が苦々しいお顔で俯いてしまったわ。

「リーナ本当は、もっと良い雰囲気で気持ちを伝えたかった。
実は、婚約指輪も既に買ってあって、然るべき機会を狙ってたんだ。
リーナ、誰よりも君を愛している」
「わ、私もジーク様が大好きです」

「リーナ、卒業後に私と結婚して欲しい」
「はい、私もずっとジーク様と結婚したかったです」

私のその言葉を聞くと嬉しそうに、お顔をちかずけて…

「ウォッホン、私達は見なかった事にしても良いが、初めてが親の前だと後々くるぞ」

私達は、ジーク様のお父様のその言葉で我にかえり少しばかり離れた。

「良いとこでしたのに」
「チィ」

スノー様、お母様、やめて、今回はジーク様のお父様が正しいわ。

二人の非難の目に体を小さくしているジーク様のお父様を見て私はそう思った。

「まあでもあれよリーナちゃん、お母さんも別に意地悪をしたんじゃないのよ。
今回は、向こうもこちらの立場を考えて打診で済ませてくれたけど、
相手によっては、きちんと立場を示しておかないと断われない場合もあるの、
特にリーナちゃんは、海外からも認められている聖女、そこを絡み手で攻められると、
一国の筆頭公爵家とはいえ、対応が難しくなる事もあるのよ」

「はい、心得えております、お母様。
私の事を気づかって頂いて、ありがとうございます」

お母様は、私の事を溺愛してくれている。
どんな困難があっても私を守ってくれるだろう。
だけど少しでも私に負担がかからない様に、少しばかり強引な言い方をしたのだ。

私は、嬉しくて涙を浮かべながら、お母様に抱きついた。
お母様は、小さな頃から変わらないままで、私の頭を優しく優しくなでてくれた。

ちなみに婚約指輪は、二人きりのデートの時に渡してくれるみたいだ。

それよりも先に王城で国王に直接謁見して、お断りをしないといけない。
一応、お母様へ届いた封書には明日に時間を取ってくれるらしい。

王子とは同じクラスなので、私としても出来るだけ早く正式にお断りしたかったので、
翌日王城に赴く事にした。



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