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父
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しおりを挟む勢い付いて喋った藍川の顔を、真柴はまじまじと見る。その口から呆れ気味の溜息が漏れた。
「それじゃぁ、確証もなくロビーであんなことを叫んだんですか? 貴方も無茶な人ですねぇ。それが根も葉もない噂話で、僕が名誉棄損と業務妨害で貴方を訴えたり警察を呼んだりしていたら、どうするつもりだったんです?」
「それは…っ、……考えなくはなかったけど、それより優輝を見付けたい気持ちの方が大きかった。――それにもう一つ、どうしても引っ掛かる闇サイトの情報があったんだ。その真偽を確認したくて――いや、出来れば否定して欲しくて、こんな無謀な行動に走ってしまった……」
親としてのつらい心情を吐露する藍川。足された言葉に、真柴の唇の片端が微かに持ち上がる。
「ほう。それはどういう情報ですか?」
尋ねられ、藍川はぐっと拳を握る。僅かに逡巡してから、一番気に掛かっていたこと、訊きたかったことを口にした。
「……裏ビジネスというのが、実は富裕層向けの子作り商売で、誘拐してきた妊娠可能な体質の男に客の子を孕ませ出産させていると――。優輝がそういう体質だとは思いもしなかったが、そう考えると話の辻褄が合ってくる……っ。――どうなんだっ、真柴さん! 息子はやはりここにいるのか? 監禁されて、男に無理矢理凌辱されていると言うのか?! 答えてくれ!!」
中腰で立ち上がり真柴の二の腕を掴んで返事を迫る。一瞬目をぱちくりとさせた真柴は、ふっと表情を緩めた。力の籠る藍川の手にポンポンと触れ、掴んだ腕をゆっくりと放させる。
「そんなに息巻かなくてもちゃんと答えますよ。――ええ。貴方の仰る通り、優輝くんはこの建物内にいます。そして、毎日お客様に犯され種付けされている――」
「――っっ!!」
自分から確認を求めたこととはいえ、真実として知らされるとその衝撃は予想の比では無かった。藍川の固まった顔の中で、唇だけがワナワナと震える。真柴の補足がその脈拍を更に上昇させた。
「……にしても、『監禁』とはまた人聞きの悪い。彼は自ら望んでここにいるんです。それを証明する書類だってあります」
「な…、馬鹿な…っ!」
「優輝くんは、このビジネスに適した最高の身体の持ち主です。犯されながら至上の快楽に幾度も絶頂を味わい、孕まされることに悦びさえ感じている。男を迎え入れている時の彼は、いつもうっとりとして幸せそうで――本当に、犯されてあんな可愛い顔をする男の子は見たことがありませんよ」
ソファに凭れ、真柴は腹の前で手指を組む。彼が語る息子の様子に父は愕然とした。
「――とても信じられない…、あの子がそんな……。何故…どうして、こんなとんでもない事に……」
「一応断っておきますが、我が社のビジネスは裏で国にも推奨されている優良事業です。警察などに訴え出ても意味はありませんのでご承知おき下さい。――どうです? 藍川さん。事実を知って、これで気が済みましたか?」
真柴に訊かれ、藍川は弱々しくかぶりを振る。
「――ショックだ……。ある程度は覚悟していたつもりだったのに、それを軽く超えるほどの衝撃を受けることになるとは……。――だが、真柴さん。それでも、私は息子に会いたい。家族の元に連れ帰りたい。話だけ聞かされても、納得なんて到底出来ないとあんただって分かるだろう。会わせてくれるまで、私は梃子でもここを動かないぞ」
腕組みをし、部屋に居座る体の藍川。真柴はふうと溜息をついた。
「やれやれ、仕方がありませんね。それほど仰るなら、会わせてあげましょう。ですが、まずは遠目に姿を見るだけです。更にショックが増す結果になるだけかも知れませんが、その責任については関知しかねますので、悪しからず」
先に立って応接室を出ていく真柴の後を、慌てて立ち上がった藍川が追う。エレベーターホールへ向かいながら、真柴が背後の彼に尋ねた。
「優輝くんの居場所が分かったかも知れないことや、今日ここへ来ることは、ご家族には――?」
「……いや。仕事で出張に行く振りをして出てきた。本当かどうか分からなかったし、自分の目で確かめてからと思って――」
「それは賢明でしたね。息子さんの状況は、女性にはなかなか理解し難いものだと思いますから」
ホールに着き、VIP専用のエレベーターに藍川を乗せる真柴。
「彼の居住スペースにある一室に向かいます。これから見るものは、きっと貴方の価値観や人生観を根底からひっくり返すことになると思いますから、心してご覧になって下さい。どんなに耐え難いものであっても、決して妨害などなさいませんように――」
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