EDEN ―孕ませ―

豆たん

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 艶めく裸体に釘付けになった眸子が、次第に卑しい色彩を帯びていく。早鐘を打つような鼓動と荒くなる呼吸に、藍川の身体がゆらりと傾いだ。肩で息をする父の異変に気付いた優輝が心配そうに声を掛ける。

「…父さん…? どうしたの?」

 熱さを増していく股間を押さえ背を丸める藍川。その様子を見ていた真柴のひと言に、彼の全身が硬直した。

「――藍川さん。貴方、優輝くんを犯したいと思っているでしょう」

 それを聞いた優輝の目が驚愕に見開かれる。焦る父は否定しようとしたが、己の身体の反応はそれが図星であることをあからさまに示していた。動揺で舌が縺れる。絞り出した言葉には、それを真とするだけの力も勢いも無かった。

「…ち、違うっ。犯すなんて、そんな…こと……」

「嘘をついたって無駄ですよ。ココをこんなにしておいて、違うも何もないでしょう」

 スラックスのベルトをぐっと上へ引き上げられる。張った箇所に股ぐりが食い込み、藍川は唇を噛み締めて呻いた。

「その気がなければ、これほど立派に勃つわけがない。息子さんの艶かしい姿を見て、どうしようもないほど興奮したんでしょう? 自分も彼を犯したいんだと、正直に仰ったらどうです?」

 ずけずけと言い当てる真柴に、何も返すことが出来ない。黙したまま顔を伏せた藍川の肩を彼がポンポンと叩く。

「まぁ、無理もありません。それだけの魅力と才能が優輝くんにはある。体にも心にも、男を惹き付ける天性のものがそなわっているんです。しかも貴方はまだお若い。息子さんの話では確か40を過ぎたばかりだった筈だ。実の父親といえど、その甘さに当てられてしまうのは致し方ないことですよ」

 自分の邪な欲望を肯定し半ば共感するような言葉を掛けられ、固く口を閉ざしていた藍川の気持ちが揺らぐ。「私は……」とひと声発すると、堪えていた思いが堰を切ったようにその口から溢れ出した。

「――優輝を、抱きたい……。人道に背く行為だということは分かってる。…しかし、それでもこの子を愛してやりたくて堪らないんだ。男に犯されるのが優輝の人生だと言うのなら、この私も全力で犯して可愛がってやりたい――」

 苦しげに吐露した心情を受け止め、腕組みをした真柴が「うーん」と唸る。

「――確かに、貴方のような親御さんが稀にいらっしゃいますよ。ただ、連れ戻しに来たというよりは、単純に息子を犯してみたいという願望のみの方がほとんどですけどね。通常の『孕ませ』並みの大金を支払って、念願の父子相姦を愉しまれるわけです。セレブな方々の考えることは次元が違うというか、僕のような凡人にはなかなか付いていけませんよ」

 大袈裟に首を振る彼のセリフに、藍川の顔が強張る。常軌を逸した世界に足を踏み入れたという思い以外に、より不安を煽る聞き流せない単語があった。

「か…、金……? …大金なんて、私には……」

 俯いて微かに声を震わせる藍川を見遣り、真柴はほんのひと時考える素振りをする。組んだ腕を解き彼の意思を確認した。

「藍川さん。息子さんを犯したい気持ちに変わりはないのですか? 後で後悔したりはしませんか?」

 訊かれた藍川は瞬間ぐっと息を詰まらせたが、思い切ったように顔を起こし真柴の目を見てはっきりと頷いた。錆色の髪を掻き上げながら、勿体振った仕種で溜息をつく真柴。

「――仕方がないですねぇ。優輝くんはうちの花形で別格の男子ですし、お父さんも芯から納得しなければお帰り頂けないでしょうから、例外中の例外ということで特別に無償で許可しましょう」

「…ほっ、本当か?」

 意外な言葉に思わず大声を出しそうになる藍川の顔を覗き込み、真柴が真剣な表情で話し出す。その口調は、先程までとは打って変わって真面目くさっていた。


「ただし、一つだけ注意して頂かなくてはならないことがあります。決して中出しはしないで下さい」


 藍川は生唾を呑み込む。

「一親等間での種付けは母子ともに後々の健康リスクが高くなる恐れがあります。サックは、万が一にも漏れないとは限りませんし、何より男子達の体質に合わないので使用していません。ですから、射精はご自分できちんとコントロールして、必ず外で出すようお願いします。――倫理上の問題ばかりではなく大切な男子達の身体を護る為に、我が社では父子による種付けを禁止しているんです。実際に禁を犯してしまったら、損害賠償で莫大な借金を負うだけでは済みませんよ。――いや、そんな枷がなくても、自分が孕ませることで可愛い息子さんの健康に影響が出るのは本意ではないでしょう? くれぐれも気を付けて下さい」


「自分と社員は立ち会わせて貰う」と言う真柴に表情を曇らせたものの、拒否など出来よう筈も無い。やむなく了承の返事を返して、父は息子の傍に立った。口元に手を当て不安げに二人の遣り取りを見ていた優輝が、困惑の面持ちで見上げてくる。

「…え…? え? 父さんが、僕を犯すの…? 親子なのに…どうして…? ねぇ、父さんっ」

 スラックスの布地を掴む細い手指。それに己の手を重ね、藍川は他方の手で優輝の絹糸のような髪を梳いてやった。

「すまない、優輝……。お前があんまり色っぽいから…父さん、我慢出来なくなってしまったよ。……だけど、ただ抱きたいだけじゃない。お前の本心――いや、お前の心も体も全部ちゃんと理解して、その上でお前を犯している人達の気持ちも知りたいんだ。……隅から隅まで…父さんに、優輝の全部を見せてくれ……」

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