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父
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しおりを挟む検査を終え、先刻のラウンジに戻って結果を待っていた藍川の元に、真柴が「問題なかった」と電話で知らせてきた。これで会えると気を高ぶらせたものの、時間まではまだ間がある。真柴は「その部屋のものは自由に使って構わない。時間が来るまで少し休んだらどうか」と言ってきたが、落ち着かない藍川はソファに腰掛けることもせず室内を歩き回り、一秒一秒が過ぎるのをただひたすらに待った。
「検査に通って本当に良かったですね。いよいよご対面ですよ。最後の帰省から、ほぼ一年振りの再会になるのかな」
優輝の居住フロアに向かう二人。真柴が帰省日まで知っていることに父は瞬間驚いたが、息子が信頼し、割と親しい付き合いをしていた相手だったと思い出して納得する。きっと、何気ない世間話から親の愚痴まで話していたのだろう。
「着きましたよ」と言う声でハッと顔を上げる。そこは、玄関を入ってすぐの白い片開き戸の前だった。
「ここが彼の寝室です。先ほど無事に双子の女の子を出産しています。多胎出産と言っても、とても軽いお産でしたので疲れも軽微ですし、普通にお話し頂いて大丈夫ですよ」
先に部屋へと入っていく真柴に付いてドアを潜る。緊張し激しく動悸を打つ胸を押さえ付け、真柴の背に隠れるようにしてベッドへと近付いた。ベッドの足元に白衣を着た男が一人立っている。子作り部屋から優輝を運んでいった白衣男とは別人だが、どちらも背が高く体格のいい若者だった。服越しにも分かる筋肉質の身体はいかにも『雄』というイメージで、腕力も精力も有り余っていそうだ。男子達を直接管理する実動社員として、この会社はそういう人材を大勢雇用しているのだろう。たとえここで自分が優輝を連れて逃げようと思っても、それは叶いそうも無かった。
改めて前方に目を向ける。ベッド上の大半を隠す真柴の背中の端から、白く細い脚が見えていた。
「優輝くん、双子の出産お疲れ様だったね。『フォロー』の時間だけど、今日は君に会いたいと言う人を連れてきたんだ。ちょっとだけ話をさせてあげよう」
誰かが自分に会いに来たと聞いて、優輝が「え?」と驚く気配がする。振り返った真柴に二の腕を引かれ、藍川は思い切って前へ出た。
「…っと…、父…さん…?」
シーツの上にしどけなく投げ出された身体。少し気怠そうな顔が、父親の姿を認めて一瞬固まる。信じられないと呟くかのように小さく口を動かした彼は、藍川を見詰めながら掠れる声を絞り出した。
「……ホントに…父さんなの……?」
夢を見ているのではないかと不安に駆られ尋ねる息子に、父は優しく穏やかな声音で答える。
「そうだよ、優輝。お前の、父さんだ」
その声を聞いた優輝の頬が朱に染まる。細められた双眸から、滲んだ涙がぽろりと零れ落ちた。何も身に着けず晒された恥部を、思い出したように形ばかり隠そうとする優輝。その手をぎゅっと握って、藍川は話し始めた。
「心配したんだよ、優輝。ずっと探していたんだ。なかなか手掛かりが掴めなくて、居場所を突き止めるのに半年も掛かってしまった。もっと早く会いに来てやれなくてごめんな……」
「…父さん…っ」
優輝が両腕を上げて父の方へ差し伸べる。藍川はその背に腕を回すと、細い上体を強く抱き締めてやった。細かく震える肩を摩り優輝を落ち着かせる。暫くそうしてから、父はゆっくりと身体を離した。
半年もの間行方を探し続け、漸く見付け出した息子。ベッドに横たえた肢体はやつれた様子も無く、生来の色白が増している気はするものの、寧ろ以前より健康的にすら見える。つい今し方双子を出産したばかりとは思えない、スリムでしなやかな裸身。この身体から新しい命が毎日産まれ出るのだ。腹や骨盤の辺りを感慨深く見詰めた藍川の目に、優輝のペニスに巻かれたバンドが映り込んだ。
「…っ、これは……」
眉根を寄せる彼に、真柴が説明する。
「男子が妊娠するには、吐精せずに何度もイって卵子を作る必要があります。その為のバンドです。勿論これを着けない時間もありますが、優輝くんはお産の刺激でもイってしまいますのでね。一度でも無駄にしないよう、出産中やその後も暫く着けているんですよ」
言われて思い出したが、種付け中も何かの器具が息子のペニスに装着されていた。蜜口から飛び出していたように見えたそれに精路を塞がれ、あの時も優輝は射精せずに幾度も絶頂を迎えていたのだ。今回の出産でもイったのだろう。彼のペニスは、バンドを巻かれたままで未だびんびんに勃っていた。それに手を伸ばし、藍川はそっと先端を撫でてみる。
「あ…っ」
甘い吐息を零す優輝。その微かな声に、藍川の中心をズクンと脈打つような感覚が駆け抜ける。びくりと肩を強張らせ、父は改めて眼前の息子に見入った。
出産で汗ばみ、薄く上気した肌。先刻の涙で潤んだ瞳。決して女性的というわけでは無いのに、その色気は鳥肌が立つほどだ。我が子をそういう目で見るなどあってはならないことだが、仮に血縁を無視して考えたとしても、腑に落ちない部分がある。女性が性対象である自分ならば関心を抱くのは娘の方である筈なのだ。だが、目前の艶姿が娘に置き換わったとしても、その姿を見て妖しい欲望が湧き起こるとは到底思えない。どちらも同じ血を持つ姉弟なのに、男にそんな感情を抱いたことなど一度も無いのに、自分は今確かに息子の身体に欲情していた。
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