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第四章
縋られる日々――ララシア⑫
しおりを挟むそのまま部屋に招き入れると、エドワード君はバルコニーへと足を向かわせた。そこにあるソファのヘリに手を置いた。私が座るまで待っているようだった。
「うん、今行くね。ほら、リッカも」
「……」
「リッカ?」
リッカはエドワード君、それから私を見ていた。じっと見ていた。見終えると、ベッドの上に乗って丸くなった。そのまま寝る体勢に入っていた。
「……眠かったのかな」
リッカを見守ったあと、私はバルコニーに出ることにした。
「座らないの? それじゃ……座るね」
「ああ」
私が座ると、エドワード君も隣に座った。そのまま私の膝の上で横になった。膝枕、でも私は仰々しく驚くこともなく、普通に受け入れていた。何もおかしなことはないと。
「あの後、誰かと会ってきたのか」
膝枕されたまま、エドワード君は喋り始める。
「……それは」
「どこぞの馬の骨が、そなたを見初めたのか。そうも考えた。だが、実際は違うだろう? ――あの翁に会ってきた」
「……」
私は否定出来なかった。頷くだけだ。
「……そうか」
またしても、エドワード君は私の腰に抱き着いてきた。頬をすり寄せてもきて。
「……余はな、幸せなのだ――このまま、幸せでいたい」
「エドワード君……?」
「ララシアも安泰しており、余も一国民として……ただの国民として」
エドワード君は強く縋ってくる。震える声のまま、彼は語り続ける。
「この国と共にありたい。ずっと続くように願っていたい――」
「そう……それが、君の願いなんだね」
私は彼の髪を撫でた。緩い胸元から覗くのは、首飾りだ。うん、君のもの――。
「ああ、そうだ。この国がずっと在るように。余も尽力したいのだ」
ゆっくりと体を起こしたエドワード君は、今度は私を包むかのように抱きしめた。年下といっても、体格は彼の方が大きいから。私を包み込むのは十分だった。
「――シャーロット殿。共にララシアで暮らそう。共に生きて欲しいのだ」
「……」
「ああ、返答は焦らずとも良い。ただ……しばらくはこうさせてくれ」
「うん……」
エドワード君の体越しに見えるのは――ララシアの海。彼を、ララシアの民を育んできたもの。
この美しい世界を守れるのなら。強そうでいて脆い彼の心を守れるのなら。
――壊さなくて済むのなら。
「……本当に素敵な国だから」
私は、エドワード君に身を委ねた――。
溶けない雪のようだと。そう言っていたのは誰だったか。
唯一溶かしてくれるというなら。終わりを、結末を迎えられるとしたら。
それは、彼に溶かしつくされること。彼との未来を選ぶことなのでしょう――。
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