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戦禍足利
織姫の戦い①
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元ショッピングセンターの建物から出た臨次は、あまり余裕のないポイントを稼ぐ為に、建物の周辺をぐるりとまわって小型モドキを掃討していった。それでも倒したのは小型、思ったより稼げていなかったのでどうするか、と思っていたとこで少し離れたところに中型のモドキを見つけた。ステゴサウルス型だ。
パワーは大型に匹敵するが耐久力は劣り、速度は小型並み。真正面から力勝負を挑みさえしなければ、比較的戦いやすいモドキだ。後ろから回り込んだ臨次は背中に飛び乗り、背中の板状のものを斬り飛ばしながら頭部へにじり寄り、右腕のブレードを脳天に突き立てた。
転げまわるステゴサウルス型はその巨体を揺らしながら、尻尾を叩きつけて臨次を振り落とそうとするが威力が足りず、もう一度脳天へブレードを叩き込まれて粒子と化した。
一息ついてポイントを確認すると、それなりの量を手に入れることが出来たようだった。
「…よし」
ひとまず、ショッピングセンター周辺で目に付いたモドキを狩って、ポイントをしっかり確保出来た。
あとは、織姫神社へ向かいながら小型を倒し、細かくポイントを補充するだけでいいだろう。と思ったところで、立体駐車場に入り込んでいる小型モドキを見つけたので狩る。
「なにしてるんだ俺」
自分自身の行動にツッコミを入れつつ、織姫神社へ移動を開始する。
織姫神社への侵入ルートは車両侵入用ルート。
市役所の付近を通っていくのだが、そこへ行くには足利の街中を東西に流れる渡良瀬川を渡らなければならない。渡るルートは、臨次が今いる場所からだと三つ。
まずは、織姫神社を正面に見る渡良瀬橋。
国道293号である田中橋。
足利市駅脇から市役所まで真っすぐ抜ける中橋。
他に二本ほど橋はあるが、遠回りすぎるので候補から外した。
渡良瀬橋に関しては、織姫神社の真正面に位置するため、モドキの徘徊が最も多いことが予想出来るので却下。
あとは田中橋と中橋、どちらにするかなのだが…臨次は、中橋を選んだ。
田中橋は車道と歩道のどちらも広く、平時に通行するなら間違いなく田中橋なのだが、国道ということで陸橋から橋に繋がる形になっていて、橋を渡るためにはかなりの距離、身を隠すことが出来ない場所を通らなければいけない。つまり、モドキに襲撃される可能性が一番高い。更に、あの翼竜型もいることを考えると、田中橋を行くのは危険すぎる。
その点、中橋は鉄骨アーチ構造で身を隠せる場所が最初から存在し、大きな陸橋もなく道路からそのまま橋に繋がる。橋へのアプローチも建物に身を隠しながら近づけるので、田中橋と比べても危険度はかなり下がるだろう。
つまり、今いるのはショッピングセンターの裏側。ここから296号へ出てそのまま西へ。通りに出たらそのまま北へ行く。このあたりは男浅間神社へ行った時と同じルート。そして足利市駅にたどり着いたら、曲がることなくそのまま北上。すぐに中橋なのでモドキに注意しつつ渡り、踏切を渡って真っすぐ行く市役所の目の前に出る。更に進んで織姫神社がある山を左側に見ながら、民家の脇を西へ曲がって進むと、織姫神社駐車場へと通じる道に入れる。
こんな状況になっていなければ、歩いても一時間かからないくらいの距離だ。だが、今はそこらじゅうをモドキが徘徊している。たどり着くまでに消耗するわけにはいかないので、慎重に移動しなければいけない。
特に、大型と戦闘になるのだけは絶対に避けなければ。
道中、絡んでくる小型モドキは片っ端から倒し、大型の姿が見えればやり過ごすか迂回する。中型は周囲に他のモドキがいなければ相手をする。
どう対処するかだけざっくり決めていたが、まさか小型が複数集まって徘徊しているとは思っていなかった。
大きなダメージはくらっていないが、かぎ爪や体当たりで細かく削られていくのがじわじわと効いてきそうで怖い。
なんとか足利市駅まで大型と遭遇せずにたどり着き、橋の様子を伺おうとすると瓦礫の山があって見えない。橋の手前にあった商業施設が崩れていて、その瓦礫が道路に山を作っているようだ。かといって状況も見ずに橋を渡るのは避けたい。仮に、モドキが一匹もいないとしても。
そういえば、足利市駅は二階建ての駅舎で、ホーム部分は二階にある。そこからなら橋の様子も確認できるはずだ。臨次は駅舎の中に潜り込み、改札を乗り越えて二階への階段を駆け上ろうとしたら小型モドキがそこにいた。慌てて右腕ブレードを展開して斬り付けるが、距離を見誤り胴体までは届かずに左腕だけを斬り飛ばす。
ブレードを振りぬいてしまった臨次は、モドキに対して背中を見せた。
小型モドキは右腕のかぎ爪を振り下ろして臨次の背中を刻む。
Q.Mの表面ががりがりと削れるが、肉体までは抉られなかった。
「このっ」
追撃を喰らう前に返した右腕ブレードで首を落として、小型モドキは消滅した。
嫌な感触が背中に残る。Q.M越しでもこれでは、生身なら生存は絶望的だろうな、と思う。
少し急ぎすぎていたと反省し、階段下からホームを伺う。見える範囲にモドキがいないのを確認後に階段を駆け上がる。
そして、目の前に見えたのは。
ビジネスホテル。
…忘れていた。
足利市駅の隣にはビジネスホテルがあった。それがホームから北側の眺めを悪くしていたことに。
気を取り直してホームの西側へ歩く。ビジネスホテルの建物は途中までしかないので、端まで行けば視界は確保出来る。
そうして見た橋には、小型が数匹いるだけだった。アーチ構造の上に翼竜がいることもない。
これはチャンス。
足利市駅から出て橋へ真っすぐ向かって、小型モドキを斬り飛ばしながらそのまま駆け抜けた。
渡良瀬川の河川敷には大型が散見出来た。しかし、臨次には気付いていない。
一安心すると、建物に身を隠しながらそのまま踏切を越えて、直進。ここまでくると、小型モドキを見ない方がおかしいくらいの密度だった。
大型と中型を見かけないのが幸いか。
行く手を遮る小型を片っ端から斬り飛ばしながら、やっと市役所までたどり着いた。
下から見上げる市役所は、ボロボロだった。窓ガラスで割れていないところはなく、服もあちこちに散らばっている。角材や鉄パイプも同じだ。上階には外壁が崩れている場所すらある。
モドキが出現した直後のものだろう。きっと、役所員や民間人がここへ押し寄せるモドキ相手に必死の抵抗ををしたことがうかがえる。その結果は、考えるまでもない。ほぼ全滅だろう。数人は逃げれたかもしれないし、Q.Mを使える人が出て戦ったかもしれないが、個人がいくら強くても、圧倒的な多数には絶対に勝てない。仮にある程度抵抗が継続出来たとしても、そのQ.Mを持っている人は、きっと、壊れてしまうだろう。Q.Mを持たない人から頼られ、縋られ、崇められ、貶められる。この変わってしまった世界では、持つ者と持たざる者は、仮に協力出来たとしても、理解しあうことは出来ないから。
臨次は市役所へ足を向けることなく、更に北へと進む。
途中の道を山側へと曲がると、そこには看板があった。
『足利織姫神社 1.0km』
『織姫公園 0.7km』
「この先だな…」
幸いにも、想定を遥かに超える小型モドキの密度のおかげでポイントはかなり稼げた。
それなりのポイントを使って左右ブレードを強化し、歩き出す。本当ならQ.Mの表面も強化したいのだが、臨次のスマホから操作をしても、本体部分の強化は一切出来なかった。他の人は出来るのだろうか?
臨次にはQ.Mを使う仲間がいないので確認のしようがない。
少し歩いたところで気付いた。
先ほどまで見えていた、徘徊していた小型モドキの姿が一切見えない。
おかしい。
今までこんなことは一度もなかった。
嫌な予感しかしないが、行くしかない。
パワーは大型に匹敵するが耐久力は劣り、速度は小型並み。真正面から力勝負を挑みさえしなければ、比較的戦いやすいモドキだ。後ろから回り込んだ臨次は背中に飛び乗り、背中の板状のものを斬り飛ばしながら頭部へにじり寄り、右腕のブレードを脳天に突き立てた。
転げまわるステゴサウルス型はその巨体を揺らしながら、尻尾を叩きつけて臨次を振り落とそうとするが威力が足りず、もう一度脳天へブレードを叩き込まれて粒子と化した。
一息ついてポイントを確認すると、それなりの量を手に入れることが出来たようだった。
「…よし」
ひとまず、ショッピングセンター周辺で目に付いたモドキを狩って、ポイントをしっかり確保出来た。
あとは、織姫神社へ向かいながら小型を倒し、細かくポイントを補充するだけでいいだろう。と思ったところで、立体駐車場に入り込んでいる小型モドキを見つけたので狩る。
「なにしてるんだ俺」
自分自身の行動にツッコミを入れつつ、織姫神社へ移動を開始する。
織姫神社への侵入ルートは車両侵入用ルート。
市役所の付近を通っていくのだが、そこへ行くには足利の街中を東西に流れる渡良瀬川を渡らなければならない。渡るルートは、臨次が今いる場所からだと三つ。
まずは、織姫神社を正面に見る渡良瀬橋。
国道293号である田中橋。
足利市駅脇から市役所まで真っすぐ抜ける中橋。
他に二本ほど橋はあるが、遠回りすぎるので候補から外した。
渡良瀬橋に関しては、織姫神社の真正面に位置するため、モドキの徘徊が最も多いことが予想出来るので却下。
あとは田中橋と中橋、どちらにするかなのだが…臨次は、中橋を選んだ。
田中橋は車道と歩道のどちらも広く、平時に通行するなら間違いなく田中橋なのだが、国道ということで陸橋から橋に繋がる形になっていて、橋を渡るためにはかなりの距離、身を隠すことが出来ない場所を通らなければいけない。つまり、モドキに襲撃される可能性が一番高い。更に、あの翼竜型もいることを考えると、田中橋を行くのは危険すぎる。
その点、中橋は鉄骨アーチ構造で身を隠せる場所が最初から存在し、大きな陸橋もなく道路からそのまま橋に繋がる。橋へのアプローチも建物に身を隠しながら近づけるので、田中橋と比べても危険度はかなり下がるだろう。
つまり、今いるのはショッピングセンターの裏側。ここから296号へ出てそのまま西へ。通りに出たらそのまま北へ行く。このあたりは男浅間神社へ行った時と同じルート。そして足利市駅にたどり着いたら、曲がることなくそのまま北上。すぐに中橋なのでモドキに注意しつつ渡り、踏切を渡って真っすぐ行く市役所の目の前に出る。更に進んで織姫神社がある山を左側に見ながら、民家の脇を西へ曲がって進むと、織姫神社駐車場へと通じる道に入れる。
こんな状況になっていなければ、歩いても一時間かからないくらいの距離だ。だが、今はそこらじゅうをモドキが徘徊している。たどり着くまでに消耗するわけにはいかないので、慎重に移動しなければいけない。
特に、大型と戦闘になるのだけは絶対に避けなければ。
道中、絡んでくる小型モドキは片っ端から倒し、大型の姿が見えればやり過ごすか迂回する。中型は周囲に他のモドキがいなければ相手をする。
どう対処するかだけざっくり決めていたが、まさか小型が複数集まって徘徊しているとは思っていなかった。
大きなダメージはくらっていないが、かぎ爪や体当たりで細かく削られていくのがじわじわと効いてきそうで怖い。
なんとか足利市駅まで大型と遭遇せずにたどり着き、橋の様子を伺おうとすると瓦礫の山があって見えない。橋の手前にあった商業施設が崩れていて、その瓦礫が道路に山を作っているようだ。かといって状況も見ずに橋を渡るのは避けたい。仮に、モドキが一匹もいないとしても。
そういえば、足利市駅は二階建ての駅舎で、ホーム部分は二階にある。そこからなら橋の様子も確認できるはずだ。臨次は駅舎の中に潜り込み、改札を乗り越えて二階への階段を駆け上ろうとしたら小型モドキがそこにいた。慌てて右腕ブレードを展開して斬り付けるが、距離を見誤り胴体までは届かずに左腕だけを斬り飛ばす。
ブレードを振りぬいてしまった臨次は、モドキに対して背中を見せた。
小型モドキは右腕のかぎ爪を振り下ろして臨次の背中を刻む。
Q.Mの表面ががりがりと削れるが、肉体までは抉られなかった。
「このっ」
追撃を喰らう前に返した右腕ブレードで首を落として、小型モドキは消滅した。
嫌な感触が背中に残る。Q.M越しでもこれでは、生身なら生存は絶望的だろうな、と思う。
少し急ぎすぎていたと反省し、階段下からホームを伺う。見える範囲にモドキがいないのを確認後に階段を駆け上がる。
そして、目の前に見えたのは。
ビジネスホテル。
…忘れていた。
足利市駅の隣にはビジネスホテルがあった。それがホームから北側の眺めを悪くしていたことに。
気を取り直してホームの西側へ歩く。ビジネスホテルの建物は途中までしかないので、端まで行けば視界は確保出来る。
そうして見た橋には、小型が数匹いるだけだった。アーチ構造の上に翼竜がいることもない。
これはチャンス。
足利市駅から出て橋へ真っすぐ向かって、小型モドキを斬り飛ばしながらそのまま駆け抜けた。
渡良瀬川の河川敷には大型が散見出来た。しかし、臨次には気付いていない。
一安心すると、建物に身を隠しながらそのまま踏切を越えて、直進。ここまでくると、小型モドキを見ない方がおかしいくらいの密度だった。
大型と中型を見かけないのが幸いか。
行く手を遮る小型を片っ端から斬り飛ばしながら、やっと市役所までたどり着いた。
下から見上げる市役所は、ボロボロだった。窓ガラスで割れていないところはなく、服もあちこちに散らばっている。角材や鉄パイプも同じだ。上階には外壁が崩れている場所すらある。
モドキが出現した直後のものだろう。きっと、役所員や民間人がここへ押し寄せるモドキ相手に必死の抵抗ををしたことがうかがえる。その結果は、考えるまでもない。ほぼ全滅だろう。数人は逃げれたかもしれないし、Q.Mを使える人が出て戦ったかもしれないが、個人がいくら強くても、圧倒的な多数には絶対に勝てない。仮にある程度抵抗が継続出来たとしても、そのQ.Mを持っている人は、きっと、壊れてしまうだろう。Q.Mを持たない人から頼られ、縋られ、崇められ、貶められる。この変わってしまった世界では、持つ者と持たざる者は、仮に協力出来たとしても、理解しあうことは出来ないから。
臨次は市役所へ足を向けることなく、更に北へと進む。
途中の道を山側へと曲がると、そこには看板があった。
『足利織姫神社 1.0km』
『織姫公園 0.7km』
「この先だな…」
幸いにも、想定を遥かに超える小型モドキの密度のおかげでポイントはかなり稼げた。
それなりのポイントを使って左右ブレードを強化し、歩き出す。本当ならQ.Mの表面も強化したいのだが、臨次のスマホから操作をしても、本体部分の強化は一切出来なかった。他の人は出来るのだろうか?
臨次にはQ.Mを使う仲間がいないので確認のしようがない。
少し歩いたところで気付いた。
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