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第五章 もっこもこカフェパワー全開!
じゃぶじゃぶ、るるる~!
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「じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ~。今日も沢山、洗うでるるる~」
新たなもこもこは陽気に歌っているけど、洗いあげていくスピードは凄く早くて、食器もピカピカ光っていて、その輝きは遠目からでも眩しく見えた。
「あの人……『タフィー』さんは、洗い物が得意なの?」
「はいでちゅ」
「大好きでちゅ」
小リスたちにタフィーさん情報を聞いてみた所、多分『タフィーさんは洗い物が大好き』と解釈して良さそうだった。
タフィーさんの方に視線を戻すと、立っている後ろ姿が妙に様になっている気がする。そしてふっさふっさの尻尾は、狸みたいだ。でも多分――――狸ではないのだろう。
「タフィーさんて、もしかして……」
「アライグマですよ」
「そう、それ! って、ステラさん!?」
声が聞こえた方へ振り返ると、ステラさんが立っていた。
「樹木さん、中々戻って来ないから、どうしたのかと思って様子見に来ちゃいました」
「あ……すみません。洗い物した方がいいのかなと思ったら、あの方がいたから驚いちゃって」
一緒にテーブルセッティングをしようとしていたステラさんに、わざわざ俺を呼び戻し来させてしまったようだ。言い訳して肩を竦める俺に、ステラさんは口元に手を当ててクスクスと微笑む。
「余り気を使い過ぎると、疲れちゃいますよ」
「でちゅよ」
「はいでちゅ」
ステラさんの言葉に、双子も賛同して輪唱のように繰り返す。
「タフィーさんはご覧の通り、洗い物が大好きなんです。毎日はいらっしゃらないけど、お店に来た時は、洗い物を専門でやってくださるんです」
「それは、助かりますね」
食器や調理器具は何回も使うものだから、専属で洗ってくれる人が居たら、作業も凄く捗るだろうな。でも毎日じゃないなら、タフィーさんが来れない日は、他の人がカバーしなきゃいけないんだ。
「タフィーさんが居ない時は?」
「手が空いているもこもこや、私がします」
確かにそうするしかないだろうけど、昨日だってかなり忙しくて、引っ切り無しにオーダー入っていた。キッチン担当のバウムさんと小リスたちだじゃ、慣れていると言っても正直厳しい筈だ――――。
「それは、大変ですね……」
まだちょっとしか知らない俺でも、それくらい想像が出来た。これは本当に『猫の手も借りたい』という理由が良く分かる。
俺の心からの呟きに、ステラさんと小リスたち目がキラリと光った。――――瞬間、凄い勢いで三人が飛びついてきた。
「わっ!」
「そうなんですよ樹木さん! 分かってくださいますよね!」
「樹木が来てくれて助かるでちゅ!」
「樹木がいると楽しいでちゅ!」
ガシッと手を握ってくるステラさんに、俺の頭と肩の上で飛び跳ねるビスケとサブレ。ちっこい癖に、着地の振動が地味に身体に響く。双子を捕まえたいけど、ステラさんに力一杯、手を握られているからされるがままに振動が襲ってくる。
「ま、待ってぇぇぇ! ビスケェェェとサブレェェェ、降りてぇぇぇ~!」
「樹木、変な声でちゅ!」
「面白いでちゅ!」
振動で声がブレるせいか、双子は余計にはしゃぎ出す。そして益々、俺の全身がバイブレーションしていく。
これではタフィーさんに挨拶も出来ないし、テーブルセッティングどころでもない。先ずはステラさんに、手を離して貰う方が先決だぁぁぁ。
ビブラートが掛かる声で、必死でステラさんに呼び掛ける――――。
「ステラァァァさぁぁぁん……」
「いい加減にしろ! 樹木、は忙しいんだ!」
再び迫力のある低音ボイス――――バウムさんが、俺を救ってくれた。同時にちびっ子たちはバウムさんに首根っこ掴まれて、高い高~い空中へ持ち上げられていく。
「きゃぁ~でちゅ!」
「ごめんなさいでちゅ!」
――――とは言っているけど、顔はめちゃ楽しそうに笑っている。きっとこれじゃぁ、全然懲りないだろうな。
ようやく振動が収まったふらつく頭で、ぼんやりと思ったのだった。
「ステラさんも、手を離して貰っていいですか?」
「あら、ごめんなさい。うふふふ!」
慌てて俺の手を離したステラさんは照れ臭そうに笑っているけど、その微笑みの真意を考えると複雑な気分になる。
握られていた両手を見ていると、自分の手が『猫の手』に見えてきそうだ――――。そんなことを考えながら、俺は小さく息を吐いた。
「じゃぁテーブルセッティングしましょうか……」
「そうですね。時間も迫っていますし」
意気揚々と客席に向かうステラさんの後をついてキッチンを出ようとする前に、今一度タフィーさんの方に視線を向ける。
「じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ~。今日も沢山、ピカピカだよるるる~」
俺たちの騒ぎにも気付いていなかったのか、それ程洗い物が大好きなのか――――タフィーさんは鼻歌を歌い続けながら夢中で器具を洗っている。
「挨拶……後で良いのかな?」
またちょっと複雑な気持ちを抱えつつ、俺はテーブルセッティングへと向かった。
新たなもこもこは陽気に歌っているけど、洗いあげていくスピードは凄く早くて、食器もピカピカ光っていて、その輝きは遠目からでも眩しく見えた。
「あの人……『タフィー』さんは、洗い物が得意なの?」
「はいでちゅ」
「大好きでちゅ」
小リスたちにタフィーさん情報を聞いてみた所、多分『タフィーさんは洗い物が大好き』と解釈して良さそうだった。
タフィーさんの方に視線を戻すと、立っている後ろ姿が妙に様になっている気がする。そしてふっさふっさの尻尾は、狸みたいだ。でも多分――――狸ではないのだろう。
「タフィーさんて、もしかして……」
「アライグマですよ」
「そう、それ! って、ステラさん!?」
声が聞こえた方へ振り返ると、ステラさんが立っていた。
「樹木さん、中々戻って来ないから、どうしたのかと思って様子見に来ちゃいました」
「あ……すみません。洗い物した方がいいのかなと思ったら、あの方がいたから驚いちゃって」
一緒にテーブルセッティングをしようとしていたステラさんに、わざわざ俺を呼び戻し来させてしまったようだ。言い訳して肩を竦める俺に、ステラさんは口元に手を当ててクスクスと微笑む。
「余り気を使い過ぎると、疲れちゃいますよ」
「でちゅよ」
「はいでちゅ」
ステラさんの言葉に、双子も賛同して輪唱のように繰り返す。
「タフィーさんはご覧の通り、洗い物が大好きなんです。毎日はいらっしゃらないけど、お店に来た時は、洗い物を専門でやってくださるんです」
「それは、助かりますね」
食器や調理器具は何回も使うものだから、専属で洗ってくれる人が居たら、作業も凄く捗るだろうな。でも毎日じゃないなら、タフィーさんが来れない日は、他の人がカバーしなきゃいけないんだ。
「タフィーさんが居ない時は?」
「手が空いているもこもこや、私がします」
確かにそうするしかないだろうけど、昨日だってかなり忙しくて、引っ切り無しにオーダー入っていた。キッチン担当のバウムさんと小リスたちだじゃ、慣れていると言っても正直厳しい筈だ――――。
「それは、大変ですね……」
まだちょっとしか知らない俺でも、それくらい想像が出来た。これは本当に『猫の手も借りたい』という理由が良く分かる。
俺の心からの呟きに、ステラさんと小リスたち目がキラリと光った。――――瞬間、凄い勢いで三人が飛びついてきた。
「わっ!」
「そうなんですよ樹木さん! 分かってくださいますよね!」
「樹木が来てくれて助かるでちゅ!」
「樹木がいると楽しいでちゅ!」
ガシッと手を握ってくるステラさんに、俺の頭と肩の上で飛び跳ねるビスケとサブレ。ちっこい癖に、着地の振動が地味に身体に響く。双子を捕まえたいけど、ステラさんに力一杯、手を握られているからされるがままに振動が襲ってくる。
「ま、待ってぇぇぇ! ビスケェェェとサブレェェェ、降りてぇぇぇ~!」
「樹木、変な声でちゅ!」
「面白いでちゅ!」
振動で声がブレるせいか、双子は余計にはしゃぎ出す。そして益々、俺の全身がバイブレーションしていく。
これではタフィーさんに挨拶も出来ないし、テーブルセッティングどころでもない。先ずはステラさんに、手を離して貰う方が先決だぁぁぁ。
ビブラートが掛かる声で、必死でステラさんに呼び掛ける――――。
「ステラァァァさぁぁぁん……」
「いい加減にしろ! 樹木、は忙しいんだ!」
再び迫力のある低音ボイス――――バウムさんが、俺を救ってくれた。同時にちびっ子たちはバウムさんに首根っこ掴まれて、高い高~い空中へ持ち上げられていく。
「きゃぁ~でちゅ!」
「ごめんなさいでちゅ!」
――――とは言っているけど、顔はめちゃ楽しそうに笑っている。きっとこれじゃぁ、全然懲りないだろうな。
ようやく振動が収まったふらつく頭で、ぼんやりと思ったのだった。
「ステラさんも、手を離して貰っていいですか?」
「あら、ごめんなさい。うふふふ!」
慌てて俺の手を離したステラさんは照れ臭そうに笑っているけど、その微笑みの真意を考えると複雑な気分になる。
握られていた両手を見ていると、自分の手が『猫の手』に見えてきそうだ――――。そんなことを考えながら、俺は小さく息を吐いた。
「じゃぁテーブルセッティングしましょうか……」
「そうですね。時間も迫っていますし」
意気揚々と客席に向かうステラさんの後をついてキッチンを出ようとする前に、今一度タフィーさんの方に視線を向ける。
「じゃぶじゃぶじゃぶじゃぶ~。今日も沢山、ピカピカだよるるる~」
俺たちの騒ぎにも気付いていなかったのか、それ程洗い物が大好きなのか――――タフィーさんは鼻歌を歌い続けながら夢中で器具を洗っている。
「挨拶……後で良いのかな?」
またちょっと複雑な気持ちを抱えつつ、俺はテーブルセッティングへと向かった。
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