(本編完結)あら...私、何か悪いこといたしました?

神谷 絵馬

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1 : 悪口が罪ですって?!

4*

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「第2王子、証人などがいるのならば出しなさい。」

「はい!オースティン!証言してくれ!!」

「はい。」

さて、少し固まってしまわれた国王陛下を放置した王妃陛下により、証人への聞き取りに入りましたわ。
それにしても、殿下の呼んだ"オースティン"ってもしかして近衛騎士団長の甥子さんかしら?あらまぁ、この阿呆詰んだわね。

「ご指名を受けました、3学年騎士科に所属しております、オースティン・シグ・デリシュと申します。」

「うむ、申せ。」

「はっ!
あの日、自分は、殿下と腕を組み撓垂しなだれかかるその女性を見ました。
女性があまりにも品の無い格好をしていましたので不快に感じ、自分はその場を即座に離れようとしていましたが、近くに殿下のご婚約者であるユーティリカ様方がいらっしゃることに気付きました。
皆様衝撃を受けて真っ青になり震えておられましたので、せめて視界だけでも遮ろうと動きましたところ、自分の従者がユーティリカ様より警備の者を呼んできて欲しいと頼まれた次第でございます。」

「陛下の前で嘘を言うな!!
オースティン、貴様!!
雌狐側に寝返ったのか!!」

「?自分は殿下に頼まれました通りに、事実を申しあげたまでですが??
それとも、自分が受けたのは殿下に都合の良いように話せとの要請でしたか?
それは、申し訳ございませんが...自分は偽りが言えぬ人間ですので、どうかご容赦下さいませ。」

「何だと!!?」

「黙れ!」

「ッ?!」

真摯に証言してくれたオースティン様は、さっぱりとした鈍色の短髪に真面目そうな赤茶の目をしたとても実直な方なのです。
たとえ自分や家族の為と分かっていても、偽りを申すことは出来ない程に中身まで実直でして...難儀なものですわよね。
ですから、ご本人も極力権限の低い王立騎士団への入隊を希望しておられますの。
王族や高位貴族の護衛をする近衛では、機密に触れる機会が多すぎますもの...自ら心配なさるお気持ち、お察し致しますわ。
殿下は、オースティン様のこの性格をご存知無かったのね。
知っていたら、自分に都合の良いように証言してくれないオースティン様には頼まないはずだもの。
まぁ、私としては有難いことなのですけれど。

「今述べられたオースティン殿の証言は、先程ユーティリカ嬢がした説明と合致するな。
一応、ユーティリカ嬢の証人にも話を聞こうか。」

「はい、マリエル、頼めるかしら?」

「かしこまりました、ユーティリカ様!」

「巻き込んでしまって申し訳無いけれど、よろしくお願いしますね?」

「ご指名を受けました、マリエル・リグ・ラーシュアと申します。」

「うむ、申せ。」

「はい。

あの日は、ユーティリカ様と私と他6名で昼食を摂るために食堂まで移動しておりました。
何だかいつもよりも周囲が騒がしく感じましたので何か遇ったのかと足を止めました所、人目も憚らず、殿下とその女性が抱き合っておられるのが見えました。
私、とても驚きましたわ!
殿下の大胆すぎる不貞にもですが......その女性は、とても容認しがたいはしたない格好をしておられましたので。」

「ふんっ!流石に雌狐の取り巻きは、どんな偽りでもスラスラと出てくるんだな!!」

この男、本当に面倒臭いですこと。
少しも黙っていられないのね...あぁ、煩わしい......猿ぐつわでも噛ませてしまいたいわ。
マリエルが丁寧に事実を話してくれているのに、自分に都合が悪いからと邪魔しないでほしいわ。
証言中のマリエルを指差し怒鳴り付けるなんて、裁判の場ではあり得ない暴挙ですわよね。





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