(本編完結)あら...私、何か悪いこといたしました？

4 : 成績が良いのは王子妃教育の賜物ですわ。

16*

証言している教授に向かいシュバッ！と素早く指を指し、立ち上がって怒鳴り付けているのは、マーベル様のお父様ですわよね？
皆様から聞いていた通り、あまりマーベル様とは似ておられませんのね。
娘のマーベル様は、柔らかい栗毛でキラキラと輝く紫がかった赤い垂れ目なのに......ルセーヌ侯爵様は、金髪バーコードの恰幅のよい油ぎっしゅなお方です。
お肉に埋もれたお顔の醜いこと...瞳の色すら分かりませんのよね。
学生時代にお母様へ求婚したのをさらっとフラれたからか、殊更私達家族を敵視されていて、度々絡んでこられる面倒臭いお方でもありますの。

「正確には、マーベル様の双子の弟君たちがマーベル様に書かせたものですよ？
こうして２枚目には、
『このような手紙を書く者が我が家から出てしまうなどルセーヌ侯爵家の恥ですが...父も母も跡取りである弟達に成績のことなどで圧力をかけ続けております。
私が何度忠告しても聞く者はおりません。
教授から、証拠としてこの手紙を学園長様に見せて弟達を処罰していただけると助かります。』
と書かれております。
読み終えまして、これは私の手には余りますので学園長の指示を仰ごうと思い、学園長室に向かっておりましたところ、そのフェリス嬢にぶつかられたのです。
これが、その手紙の続きになる２枚目の便箋と封筒です。
陛下、どうぞお確かめくださいませ。
紙の材質もインクも字も、その手紙のものと同じですから。」

「..........ふむ...。
グレーフィル教授の証言通り、これはルセーヌ侯爵家のマーベル嬢の字のようだ。便箋の材質も、使われたインクも同じか...。
そして、この封蝋はルセーヌ侯爵家のものだな。
ルセーヌ侯爵？どういう事かな？？」

グレーフィル教授は額に青筋を幾つか立てられながらも、冷静に淡々とした声で証言なさいます。
徐に、胸元のポケットから便箋と封筒を出し陛下に渡すと、礼をしてから直ぐに戻られました。
...遠目ですが、マーベル様のよく使われているマリーゴールドにより染色された便箋に似ていますわ。

「マーベル？！！これは！どういう事だ？！！」

「ご令嬢の過失では無いだろう？
どうも、双子の嫡男が元凶のようだが？」

「...私、お父様に何度も申しましたわ！
クリューもクーレオも、官吏よりも騎士の方が向いております、と。
お父様は、財務大臣である自分の跡を継がせたかったのかもしれませんけれど、試験の度に２人を１つ上の私と張り合わせるなんて......不毛も良いところですわ。
そもそも、私は淑女科で、あの子達は官吏科ですのよ？
授業内容も試験内容も、全く違いますのよ？
あの子達の成績は、官吏科の中でも良いものでしたのに...叱責しかなさらないのは何故ですの？
幼い頃より民を護る騎士になりたいと願い、そしてその才能もあった２人の可能性を、お父様もお母様も潰そうとなさっておられますのよ？！
あの子達は騎士になるべきです！」

マーベル様は不正を嫌う方でしたもの、可笑しいと思いましたのよね。
ルセーヌ侯爵様は、愚かにも自分の子供を駒だと言うようなゲスでしたのね？
息子達の過失なのに、マーベル様を怒鳴り付けるだなんて...阿呆という罵りでは足りませんわ？この、どクズ！くらいが丁度良いかしら？？
マーベル様は、とても慈愛に満ちた天使のようなお方でしたものね。
親に追い詰められていた弟君達を、いつも大切に慈悲深く見守っていらっしゃいましたけれど.....お２人共、ご両親の影響を多大に受けておられましたから...歪みますわよね。
マーベル様お１人では、反抗期真っ只中の弟君達を諌めきれなかったのでしょう。
だから、教授を通して学園長に助けを求めようとなさいましたのね...？
ご自分も責を負うやもしれませんのに...。





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