運命が分からないのなら

レイ

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過去

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 主人公 佐藤ひなた
 幼馴染 進藤真琴

 ________________

 読み飛ばしても大丈夫な、作者の思うオメガバース。


 この世界には性別とは別に、二次性といって、アルファ、ベータ、オメガと性が別れる。

 人口の8割を占めるベータ性。これは俗に言う平凡で、普通の人である。世界人口の8割を占めるが、上から下まで幅広くいると言っても過言ではない。

 1.5割程のアルファ性。これは世界の中枢を牛耳る者が多い、人種的にも非常に優れた人である。何をやっても文武両道、出来ないことはないと言われる超優良優秀、それがアルファ性だ。

 そして最後にオメガ性。これは人口の0.5割ほどしかおらず、一見ベータ性と変わりないが、3ヶ月に一度、1週間ほどのヒートと呼ばれる発情期がある。その期間、特にフェロモンが増え、男女、アルファベータ性ともに魅了される。アルファと番った者は、アルファ性しか生まない為、重宝されるものの、3ヶ月に一回の発情期と垂れ流しのフェロモンがある為、社会的な地位は低い。近年、法改正によりオメガ性でも働ける社会が世に広まってきた。

 番制度というものがこの世には存在し、オメガ性の首の後ろをヒート中に噛むことにより成立する。成立すると、そのオメガは番った番にしかフェロモンを出さなくなる。運命の番というものも伝説上に存在し、それは出会うことが稀とされる。出会ってしまえば、相手に他の番がいようが構わず手を伸ばし襲いたい衝動に駆られる。但し、それはアルファのみで、オメガは番った時点で運命のつがいが他にいようとフェロモンを感じなくなる。



 ###

「俺、フェロモンが分からないんだよね…」

 昨日の夕飯のメニューを話すような感じで、隣を歩く幼馴染から言われた言葉を理解するのにはしばらく時間を有した。

「え?」

「ふはっ、なんだよその顔。鳩が豆鉄砲喰らったような顔してんぞ?」

「いや、なんだよ鳩って…。そんな顔にもなるだろ…いつからだ?」

「んー、この前検査あったじゃん、そこ。」

「この前って…半年以上前じゃねぇか!」

 中2の新学期入ってすぐの頃、思春期を迎えた子供は皆、第二次性がなんなのかという検査を受けることが義務付けられていた。

「そ。この半年間色々探ってみたんだけど、他人のフェロモンも自分のフェロモンも一切わかんねぇの。病院にもいってみたんだけど、数値的には問題ないですって。変わったばかりなので気持ちの問題でしょうだってさ、ははっうけるよな」

「いや全然ウケねぇよ、んで?」

「ん?」

「急に話したってことはなんかあんだろ?」

「いや、特に」

「は?」

「そんな怒んなって、幼馴染と恋バナするくらいいいだろ?」

「いや怒ってねぇし、これ恋バナか?」

「恋バナ恋バナ。俺一生結婚できねぇかもなぁって」

「……いやでも、数値はでてんだろ?フェロモンの」

「そーそー、俺が感じ取れないだけ。どーすんよ、もしも俺の運命が目の前に現れたら。俺見つけれないじゃん。どーするよ?」

「大丈夫だよ、きっと運命のほうが見つけてくれるよ」

「あー!その手があったか、やっぱお前に相談してよかった!さすが俺の幼馴染!!」

「はいはい、よかったね」

「返事テキトーかよ。…なぁ、ひなた」

「ん?」

「もし、俺が番見つけれなかったら俺をもらってくれる?」


 ###


 懐かしい夢を見た。そうそれは、中2の夏の話だ。あの時、俺はなんて返したっけ。

 俺、佐藤ひなたはオメガである。そして、幼馴染で同級生の進藤真琴はアルファだ。家は隣同士で親同士も仲がいいので自然に仲が良くなるのは当然ともいえる。

 真琴がアルファだって知った時、番えるって思って嬉しかったと同時に俺が運命ならいいのにと切望した。運命の番かどうかがわかるのは、オメガのフェロモンが出る初めての発情期以降だ。真琴は運命を求めていた。それは他の誰より幼馴染の俺が知っている。

 俺が第二性を知るってことは周囲の人間も知るってことだ。アルファ性もオメガ性も珍しく、騒ついた。幸にして、俺のオメガ性は発情期も始まってないことから配慮され、秘匿されたためベータと偽装できたが、真琴のアルファ性はそうもいかない。何せ本人が有能なのだ。

「えー私進藤くんはアルファだって思ってたんだ!」
「私もオメガだったら付き合えたかもしれないのにー!」
「いや、ベータでもいけるんじゃない?」
「無理だろ、運命の番探してるらしいぜ」
「私運命感じちゃってるかもしれない」
「え、私も!」

 だなんて会話はよく繰り広げられ、本人に告白してくるものも多かった。しかし問題は…

「運命を感じました!付き合ってください!」
「断る。俺は運命なんて感じてないし信じてない。…そこどいてくれる?いくよ、ひなた」

 運命なんて稀とされるほど、なかなか出会うものではない。だからこそ、「運命」だなんて言葉を軽々しく使う者も多い。ましてや真琴はフェロモンを感じないアルファだ。オメガバやアルファにとって絶好のまとである。

 目の前で繰り広げられた公開告白を一言で切り歩き出す幼馴染の後を追いかける。中学、高校と何度も何十回も繰り返された光景だ。初めのうちは、幼馴染も真面目に対応していたが、回数を重ねるうちに疑心暗鬼とかし、遂には軽く流すようになった。断るだけ紳士なのであろう。

 そして、もっともその告白現場を近くで見ている俺はというと、最初の方は幼馴染がどう対応しどう返事するのかドキドキで見守っていた。いや、今も俺は、幼馴染が告白をされると緊張で冷や汗が止まらなくなる。もしかしたら、話を受けるのではないかと。俺が付き合ってもいないくせに。

 いくよって言ってくれる言葉に安堵してしまう自分が嫌だ。でも、この関係を崩したくない。周りが運命だなんて言葉を軽々しく使っているというのもあり、同じ人間だと思われたくもなかった。

「…どいつもこいつも運命、運命って反吐が出る。希少なんじゃないのかよ」

「…稀だからこそ使うんだろ」

「はっ、俺フェロモン分からないって公言してるの理解したうえでか。最低だな。もし運命が目の前に現れても俺は本物か偽物かの判断がつかないからまじで運命って信用ならねぇ。」

「そう言うなって」

 天を仰ぎ、ちょっとやさぐれている幼馴染の頭に手を伸ばす。それに気づいたのか、ちょっと屈んでくれる幼馴染は俺に対しての警戒心が皆無だ。そのことが俺にとってどんなに嬉しいかなんてお前は分からないんだろうな。

頭をくしゃくしゃと撫でる。毛質の良いサラッとした髪が指の間をすり抜ける。ふわっと柑橘系のいい香りが漂い慌てて手を離した。

「もう終わり?」

「もうってなんだよ」

「俺ひなたに撫でてもらうの好きなんだよね、もっとする?」

「今はもうしない」

「そりゃ残念」

止めていた足を進める。

「はぁ、ひなたが運命ならいいのに」

俺もだよ、そう言いたいのに言えない。

「ひなたが運命なら俺も流石に気づくと思うんだよね」

本当に?

「ひなたはまだきてないの?」

「来てたらここで歩いてないだろ」

「まぁ確かに」

「はぁ、このままだと一生結婚なんてできねぇかも。…そんときは運命じゃなくても俺をもらってくれる?」

ちらりと幼馴染に目を向ける。冗談か本気かも分からないような目だ。アルファのくせに、伺いを立てるのは俺だからかお前だからか。運命じゃなくても、だなんてどんだけ俺が嬉しいかこいつはほんとに分からないんだろな。今朝の夢を彷彿とさせる質問に、笑みが溢れる。

「その時はお前が俺を貰うんだろ」



 
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