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プロローグ
左遷先は、異世界
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東京・大手町。夜。
ビルのロビーで、警備員に腕をつかまれた。
加賀谷 零(れい)は抵抗しなかった。
「お引き取りを。ここはもう、あなたの会社ではありません」
冷たい声が耳に残る。
ただ、それを否定する気力すら、もう残っていなかった。
ひと月前。
彼が創業した会社は、外資と結託した旧経営陣に株を握られ、あっけなく乗っ取られた。
敵対的買収――TOB。教科書通りの展開だった。
守ってきた社員も、取引先も、信頼も。
全部、数字の一行で消えていった。
夜の風が吹いている。
零は、いつの間にかビルの屋上にいた。三十五階。
眼下に広がる街の灯が、妙に遠く感じた。
「皮肉だな」
小さく呟く。
「一番それをわかってたのは、俺のはずなのに」
資本は力だ。
ルールを知っている者が、ルールの中で一番強い。
それだけの話だった。
目を閉じた。
耳鳴りが、風音にかき消されていく。
そのとき。
世界が、歪んだ。
風景が“ねじれ”、空気がひっくり返る。
光が逆流し、音が消え、重力の感覚がどこかへ飛んでいった。
――そして、目を開けると、そこは石造りの広間だった。
目の前に、金髪の少女が立っていた。
長い睫毛を伏せ、神妙な面持ちで口を開く。
「異界より来たりし御方よ。我が国を、お救いください」
加賀谷 零、二十五歳。
すべてを失い、そして今――異世界に立っていた。
▼読んでいただきありがとうございます!
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ビルのロビーで、警備員に腕をつかまれた。
加賀谷 零(れい)は抵抗しなかった。
「お引き取りを。ここはもう、あなたの会社ではありません」
冷たい声が耳に残る。
ただ、それを否定する気力すら、もう残っていなかった。
ひと月前。
彼が創業した会社は、外資と結託した旧経営陣に株を握られ、あっけなく乗っ取られた。
敵対的買収――TOB。教科書通りの展開だった。
守ってきた社員も、取引先も、信頼も。
全部、数字の一行で消えていった。
夜の風が吹いている。
零は、いつの間にかビルの屋上にいた。三十五階。
眼下に広がる街の灯が、妙に遠く感じた。
「皮肉だな」
小さく呟く。
「一番それをわかってたのは、俺のはずなのに」
資本は力だ。
ルールを知っている者が、ルールの中で一番強い。
それだけの話だった。
目を閉じた。
耳鳴りが、風音にかき消されていく。
そのとき。
世界が、歪んだ。
風景が“ねじれ”、空気がひっくり返る。
光が逆流し、音が消え、重力の感覚がどこかへ飛んでいった。
――そして、目を開けると、そこは石造りの広間だった。
目の前に、金髪の少女が立っていた。
長い睫毛を伏せ、神妙な面持ちで口を開く。
「異界より来たりし御方よ。我が国を、お救いください」
加賀谷 零、二十五歳。
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