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第六章:共栄連合構想──繁栄は交差する
第十二節:等身大の若者たちと休日
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「三日ぶっ通しで働いたんだ。今日は好きにしていいぞ。全力で羽、伸ばしてこい」
カガヤのそんな言葉を背に、三人は学院の寮を出た。
午前中は各自の雑務や睡眠でつぶれたが、昼過ぎには街へ出ようという流れになった。
「俺さ、あの屋台の焼き串、ずっと気になってたんだよな」
ジルが身を乗り出しながら、街角の屋台を指差す。炭火で焼かれた肉の香りが、通りの風に乗って漂ってくる。
「朝食、食べたばっかじゃなかった?」
レーネが呆れたように言うと、ジルは堂々と返す。
「腹が減るのに理由はいらねぇんだよ。働いた分、喰う!」
「はいはい、元気でなにより」
ミュリルは、すこし笑いながらも、目線を屋台に移す。
「……肉まんもある。そっちなら、歩きながらでも食べやすい」
結局、三人とも屋台に吸い寄せられるように立ち寄り、包み紙にくるまれた焼き串や饅頭を手にして歩き出した。
***
昼の市場通りは、活気こそ穏やかだが、旅人や市民の姿もちらほら。
布地屋の軒先には色鮮やかなストールが吊るされ、香辛料の樽からは鼻をくすぐる香りが漂う。
「わ、見てこれ。触ってもいいって」
レーネが、色とりどりのガラス細工が並ぶ店で足を止めた。小さなドラゴンや花のモチーフが、陽の光を受けてきらきらと輝いている。
「壊れそうだな……俺、こういうの絶対落とすタイプだわ」
「じゃあ、手ぇ出さないでね」
ジルの言葉にレーネが即答し、ミュリルがくすっと笑う。
普段は滅多に感情を見せない彼女の笑顔に、ジルも思わず目を丸くした。
「ミュリルが笑ったぞ……!」
「何そのレアモンスター発見みたいな反応」
「だって珍しいだろ? レーネはよく笑うけどさ、ミュリルって“ニヤリ”の精度が高いだけで……あ、怒るなよ」
「別に怒ってない」
ミュリルは涼しい顔で返しつつ、店先の木彫りの置物を手に取る。
そんな三人の様子を見ていた店の主人が、にやにやとした笑みで声をかけてきた。
「学生さんかい? 旅の記念にどうだ、ひとつ半額にしとくよ」
「うっ……買わされそう」
「断りゃいいだろ、ちゃんと!」
ひとしきり冷やかした後、彼らは市場通りを抜けて、街外れの広場へと向かった。
簡素な石造りのベンチと、一本の大木があるだけの場所。けれど、不思議と居心地が良い。
三人はそれぞれ木陰に腰を下ろし、風に揺れる葉音を聞きながら、しばし無言で過ごす。
「……楽しかったな」
レーネがぽつりとつぶやくと、ミュリルも軽く頷く。
「たまには、こういうのも悪くない」
「次は、焼き菓子の屋台だな。絶対寄る」
ジルが前向きに宣言すると、レーネが笑って返す。
「まーた食べるの?」
「うるせぇ、今日は羽伸ばしていいって言われただろ」
どこにでもあるような、くだらないやり取り。
けれど、それが三人を繋ぐ“間”を少しずつ作っていた。
──そしてこの後、夜にはそれぞれが自分の“動機”に向き合う時間がやってくる。
*******
夜。町の灯がひとつ、またひとつと静かに灯っていく時間。
喧騒から離れ、それぞれの場所で三人は思索に沈んでいた。
***
ジル・クラーヴェは、寮の談話室の隅で大の字になっていた。
脇に置いた皿には、からっぽになった揚げ団子の串が転がっている。
「……食った食った……もう満足……。あ、でも炊きたて飯もよかったな」
誰に聞かせるでもなくつぶやいたあと、ジルは天井を見つめてぼんやりとした。
自分にしかできないこと。最初は考えたこともなかった。
けれど、あの湯場の整備をやった日、じいさんの工房を掃除した日……あれは悪くなかった。
「誰かに褒められたとかじゃないけどさ。……なんか、ああいうの、好きかも」
火を焚き、湯を張り、誰かがほっとする空間を作る。
それは、不器用な自分でもできる“小さな仕掛け”だった。
「……でもって、見に来てくれるやつがいれば、なお良しってな」
頬を掻きながら、ジルは立ち上がった。
今度はもう少し丁寧に湯温の調整をしてみよう。誰に言われたわけでもなく、そう思っていた。
***
レーネ・アステリアは、久々に実家の工房を訪れていた。
木製の扉をくぐると、かつての母の姿が目に浮かぶ。ミシンの音、裁ちばさみの鈍い光、積み上がった布。
今は無人だが、空気にはまだ魔力の名残がある。
「……ここの布、燃えにくいんじゃなくて、熱を逃がす加工だったのよね」
彼女は懐かしい反物の一端に触れながら、母が遺した技術の断片を思い返していた。
「こういうの、戦闘ギルドとかに売り込めないかな……。あ、でも量産がネックか」
思わず独り言も多くなる。
けれど、それは“誰かに伝えたい”という気持ちが芽生えている証でもあった。
技術を磨くのは好きだった。だけど、誰のために? 何のために?
それが今になって、少しずつ変わってきた気がする。
「ジルとミュリルが、使ってくれるなら……なんか、ちょっと、がんばれそう」
笑いながら、照れ隠しのように鼻をつまんだ。
***
ミュリル・フェーンは、手元のノートをめくっていた。
書き込まれたのは、今日の鉱脈調査のメモと簡易測定の記録。
数値の並びの下には、赤ペンで書かれた文字がある。
《再評価余地:通信インフラ向け特需/代替供給網の形成》
一見して地味なログ。けれど、そこには彼女なりの“勝算”がある。
「掘り返すだけじゃ意味がない。どう資金を引き込むか……。あの人なら、どう見るだろう」
ぼそりと呟いたのは、加賀谷のことだ。
無鉄砲ではなく、冷徹でもなく。けれど“賭ける”ということに異様に長けた、あの人。
ミュリルは軽く笑った。
「まあ、私の案件が投資先に選ばれる気でいるけどね」
自信か虚勢か。それは、彼女にしかわからない。
***
加賀谷は、夜の窓辺で草のような細い紙巻をくゆらせていた。
部屋には誰もいない。けれど、思考の中には三人の姿があった。
(……どれも、ちゃんと“火”を持ってる)
誰かに見せるためじゃない。
自分なりの理由、自分にしか拾えない価値。
その断片を、それぞれが確かに掴もうとしていた。
「この街、いけるかもしれねぇな」
賭け先は、まだ選ばない。けれど、賭けられるテーブルがあるなら──話は早い。
「しばらくは、見させてもらうさ。お前らの“芽”が、どこまで火を引っ張るか」
静かに、窓の外の灯を見つめた。
まだ夜は浅い。
けれど、火種くらいには──なってきた。
____________
____________
★あとがき
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この第十二節では、戦略や投資というキーワードから一歩距離を置き、
ジル・レーネ・ミュリル、それぞれの“等身大”の姿を描きました。
決して完璧ではない三人が、それぞれの小さな動機を抱えながら、
ちょっとした自信と照れくささを胸に、一歩踏み出す──
そんな一幕を楽しんでいただけていたら幸いです。
カガヤのそんな言葉を背に、三人は学院の寮を出た。
午前中は各自の雑務や睡眠でつぶれたが、昼過ぎには街へ出ようという流れになった。
「俺さ、あの屋台の焼き串、ずっと気になってたんだよな」
ジルが身を乗り出しながら、街角の屋台を指差す。炭火で焼かれた肉の香りが、通りの風に乗って漂ってくる。
「朝食、食べたばっかじゃなかった?」
レーネが呆れたように言うと、ジルは堂々と返す。
「腹が減るのに理由はいらねぇんだよ。働いた分、喰う!」
「はいはい、元気でなにより」
ミュリルは、すこし笑いながらも、目線を屋台に移す。
「……肉まんもある。そっちなら、歩きながらでも食べやすい」
結局、三人とも屋台に吸い寄せられるように立ち寄り、包み紙にくるまれた焼き串や饅頭を手にして歩き出した。
***
昼の市場通りは、活気こそ穏やかだが、旅人や市民の姿もちらほら。
布地屋の軒先には色鮮やかなストールが吊るされ、香辛料の樽からは鼻をくすぐる香りが漂う。
「わ、見てこれ。触ってもいいって」
レーネが、色とりどりのガラス細工が並ぶ店で足を止めた。小さなドラゴンや花のモチーフが、陽の光を受けてきらきらと輝いている。
「壊れそうだな……俺、こういうの絶対落とすタイプだわ」
「じゃあ、手ぇ出さないでね」
ジルの言葉にレーネが即答し、ミュリルがくすっと笑う。
普段は滅多に感情を見せない彼女の笑顔に、ジルも思わず目を丸くした。
「ミュリルが笑ったぞ……!」
「何そのレアモンスター発見みたいな反応」
「だって珍しいだろ? レーネはよく笑うけどさ、ミュリルって“ニヤリ”の精度が高いだけで……あ、怒るなよ」
「別に怒ってない」
ミュリルは涼しい顔で返しつつ、店先の木彫りの置物を手に取る。
そんな三人の様子を見ていた店の主人が、にやにやとした笑みで声をかけてきた。
「学生さんかい? 旅の記念にどうだ、ひとつ半額にしとくよ」
「うっ……買わされそう」
「断りゃいいだろ、ちゃんと!」
ひとしきり冷やかした後、彼らは市場通りを抜けて、街外れの広場へと向かった。
簡素な石造りのベンチと、一本の大木があるだけの場所。けれど、不思議と居心地が良い。
三人はそれぞれ木陰に腰を下ろし、風に揺れる葉音を聞きながら、しばし無言で過ごす。
「……楽しかったな」
レーネがぽつりとつぶやくと、ミュリルも軽く頷く。
「たまには、こういうのも悪くない」
「次は、焼き菓子の屋台だな。絶対寄る」
ジルが前向きに宣言すると、レーネが笑って返す。
「まーた食べるの?」
「うるせぇ、今日は羽伸ばしていいって言われただろ」
どこにでもあるような、くだらないやり取り。
けれど、それが三人を繋ぐ“間”を少しずつ作っていた。
──そしてこの後、夜にはそれぞれが自分の“動機”に向き合う時間がやってくる。
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夜。町の灯がひとつ、またひとつと静かに灯っていく時間。
喧騒から離れ、それぞれの場所で三人は思索に沈んでいた。
***
ジル・クラーヴェは、寮の談話室の隅で大の字になっていた。
脇に置いた皿には、からっぽになった揚げ団子の串が転がっている。
「……食った食った……もう満足……。あ、でも炊きたて飯もよかったな」
誰に聞かせるでもなくつぶやいたあと、ジルは天井を見つめてぼんやりとした。
自分にしかできないこと。最初は考えたこともなかった。
けれど、あの湯場の整備をやった日、じいさんの工房を掃除した日……あれは悪くなかった。
「誰かに褒められたとかじゃないけどさ。……なんか、ああいうの、好きかも」
火を焚き、湯を張り、誰かがほっとする空間を作る。
それは、不器用な自分でもできる“小さな仕掛け”だった。
「……でもって、見に来てくれるやつがいれば、なお良しってな」
頬を掻きながら、ジルは立ち上がった。
今度はもう少し丁寧に湯温の調整をしてみよう。誰に言われたわけでもなく、そう思っていた。
***
レーネ・アステリアは、久々に実家の工房を訪れていた。
木製の扉をくぐると、かつての母の姿が目に浮かぶ。ミシンの音、裁ちばさみの鈍い光、積み上がった布。
今は無人だが、空気にはまだ魔力の名残がある。
「……ここの布、燃えにくいんじゃなくて、熱を逃がす加工だったのよね」
彼女は懐かしい反物の一端に触れながら、母が遺した技術の断片を思い返していた。
「こういうの、戦闘ギルドとかに売り込めないかな……。あ、でも量産がネックか」
思わず独り言も多くなる。
けれど、それは“誰かに伝えたい”という気持ちが芽生えている証でもあった。
技術を磨くのは好きだった。だけど、誰のために? 何のために?
それが今になって、少しずつ変わってきた気がする。
「ジルとミュリルが、使ってくれるなら……なんか、ちょっと、がんばれそう」
笑いながら、照れ隠しのように鼻をつまんだ。
***
ミュリル・フェーンは、手元のノートをめくっていた。
書き込まれたのは、今日の鉱脈調査のメモと簡易測定の記録。
数値の並びの下には、赤ペンで書かれた文字がある。
《再評価余地:通信インフラ向け特需/代替供給網の形成》
一見して地味なログ。けれど、そこには彼女なりの“勝算”がある。
「掘り返すだけじゃ意味がない。どう資金を引き込むか……。あの人なら、どう見るだろう」
ぼそりと呟いたのは、加賀谷のことだ。
無鉄砲ではなく、冷徹でもなく。けれど“賭ける”ということに異様に長けた、あの人。
ミュリルは軽く笑った。
「まあ、私の案件が投資先に選ばれる気でいるけどね」
自信か虚勢か。それは、彼女にしかわからない。
***
加賀谷は、夜の窓辺で草のような細い紙巻をくゆらせていた。
部屋には誰もいない。けれど、思考の中には三人の姿があった。
(……どれも、ちゃんと“火”を持ってる)
誰かに見せるためじゃない。
自分なりの理由、自分にしか拾えない価値。
その断片を、それぞれが確かに掴もうとしていた。
「この街、いけるかもしれねぇな」
賭け先は、まだ選ばない。けれど、賭けられるテーブルがあるなら──話は早い。
「しばらくは、見させてもらうさ。お前らの“芽”が、どこまで火を引っ張るか」
静かに、窓の外の灯を見つめた。
まだ夜は浅い。
けれど、火種くらいには──なってきた。
____________
____________
★あとがき
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この第十二節では、戦略や投資というキーワードから一歩距離を置き、
ジル・レーネ・ミュリル、それぞれの“等身大”の姿を描きました。
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