赤字国家に召喚されたので、まずは売却から始めます──でも断られたので価値を爆上げして帝国に頭を下げさせることにしました【TOP3入り感謝】

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第六章:共栄連合構想──繁栄は交差する

第十五節:貿易王が切り拓く突破口

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 ──フィルノにて

 「……すみません、今回は見送らせてください」

 問屋の男が、硬い表情でそう言った。

 続いて、織物商も、金貸しのレイフォードも──どこか言い訳がましく、だが確固たる拒絶の意志を示してきた。

 ジル・アルヴァは、それでも笑みを保とうと努めた。けれど、店を出て路地裏に抜ける頃には、その足取りは重くなっていた。

「うーん、失敗……ですよね、これ」

「まあ、そうだな」

 加賀谷の声には、とくに責める響きはなかった。それでもジルは、自分の胸に生じた悔しさをごまかせなかった。

「準備したのに。全部、理にかなってたと思ったのに……」

「理屈だけで人は動かない。ってやつだな」

 肩を落としたジルに、加賀谷は小さく笑って続けた。

「俺もな……最近はずっと、“理”で押してた気がするよ」

「え?」

「数字、構想、システム、改革。どれも正しい。でもな、誰かの気持ちや思い出を飛ばしてきた気もする。押し切って、奪って、走ってきた。その先に、本当に信頼が積めるかどうか……考えることはあるよ」

 静かな夕暮れの風が、ふたりの間を抜けていった。

 そしてその夜。

 ふたりはフィルノの酒場で、反省会と称して木のコップを傾けていた。

「……やっぱり現地の人、難しいですねぇ」

「この辺りは特に“よそ者”に厳しいからな。外から来て、うまくやって、勝手に去る──ってのに慣れすぎてる」

「はあ……」

 ジルが項垂れた、その時。

「ちょっと待って、話は最後まで──え、ウソ、そこでビンタ!?」

 隣のテーブルから、派手な声が響いてきた。

 見れば、ナンパに失敗したらしい男が、頬を押さえて立ち尽くしている。

 加賀谷は、ふとその横顔に目を留め──そして、思わず吹き出した。

「……レオン・グレイブ」

「え?」

「なんでここにいる」

 そう言うと、件の男──加賀谷とともに公国の中継貿易を成功させた"貿易王"と呼ばれたレオンが、にやりと笑って振り返った。

「お前こそなんでいる。……って、あれ? そっちの子は?」

「あ、えっと……ジル・アルヴァです。インターンで、いま一緒に商圏再編の仕事を……」

「ふうん。かわいい顔して、胃に穴あきそうな顔してるな。失敗?」

「う……はい」

 素直にうなだれたジルに、レオンは急に真顔になる。

「どこで断られた?」

「フィルノの織物商と問屋、あと金貸しの……」

「あー……あそこ、昔、俺が助けたことあってさ」

「えっ?」

「ちょっと待て」

 加賀谷が言いかけるより先に、レオンはコップを一気に空け、言った。

「明日の朝、俺も連れてけ。あいつら、俺の顔見りゃ話くらいは聞くさ」
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