赤字国家に召喚されたので、まずは売却から始めます──でも断られたので価値を爆上げして帝国に頭を下げさせることにしました【TOP3入り感謝】

25BCHI

文字の大きさ
73 / 76
第六章:共栄連合構想──繁栄は交差する

第二十四節:異世界でもIPO

しおりを挟む
 加賀谷は深く頭を下げ、静かに礼を述べた。
 その動作ひとつが、場に誠意を伝える。議場の空気が、協調と期待に変わっていくのが分かる。

 その後ろで、ミロがもう一枚の魔導投影を展開する。そこには、第一号企業の構想図が描かれていた。社名はまだ仮のものだが、事業内容、初期資本、所在地、そして運営予定の人材が記されている。

「第一号企業は、このヴェステラにて設立予定です。事業内容は――魔導輸送と情報通信の一元化。名を『ルミナリンク社』と仮称しています」

 ざわめきが広がる。
 この都市の急成長を支えてきた、魔導路と転送点、それに連なる通信網。誰もが便利さを実感していたが、それを“事業”として切り出す発想は、まだ斬新だった。

「これまで国家やギルドの枠組みに依存していたインフラを、一企業として独立採算で運営する。そのかわり、利益と成長は投資者全体に還元されます。──まさに、新時代のモデルケースです」

 議場の前方。ティグラット連合のレオンが再び口を開く。

「……その企業の株を、俺らにも譲渡できるということだよな?」

「もちろんです。議決権の範囲や、初期保有比率は調整しますが、連合としての出資も歓迎します」

 レオンは腕を組み、ふんと笑う。

「いいだろう。うちの若い衆にも“金が働く仕組み”ってやつを学ばせてやるさ」

 その横で、ゼルハ・トゥーラの代表が静かに手を挙げた。

「では、我らも少額ながら出資しよう。……一口に、砂漠に光の道を通せるかもしれんからな」

 次いで、港湾都市メルフィリアの代表が頷く。

「港にも、情報と輸送の網は必要だ。出資だけでなく、港の一角に拠点を提供しよう。広域運営の実験地として、我が街を使え」

 次々に、前向きな声があがる。
 この瞬間、ひとつの理念が制度となり、制度が現実へと踏み出したのだった。

 加賀谷は、壇上で静かに目を閉じる。

(ここから先は、ただの制度導入ではない)

 それは、“誰もが未来の担い手になれる”という、希望の可視化だった。
 資本は、差別の道具にもなり得る。
 だがそれを“共有する力”として扱うなら、人は生まれや境遇に関係なく、夢を持てる。

 壇上の彼の横で、ミロがそっと囁いた。

「れ、れいしゃちょー……設立申請書の署名、よろしいですか……?」

「……ああ。ありがとう、ミロ」

 彼女が差し出したのは、一枚の契約書。
 それはこのヴェステラから始まる、“未来への最初の出資証明”だった。

 加賀谷は羽根ペンを手に取り、一文字ずつ、確かに名前を書き記す。
 その筆跡を読み取るように、魔導投影が光り、議場の中央に“企業設立”の証と、その名が浮かび上がった。

 ──ルミナリンク社。
 この瞬間、異世界に初めて“上場企業”が誕生した。

 加賀谷零、ミティア公国大公にして、CEO。
 彼にとって、これは人生で二度目の上場だった。
 今度は異世界の地で。

 だが――

 その意味は、かつての比ではない。
 これは一国の希望を背負った、“民の手で育てる国家”という夢への第一歩だった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...