Smile

アオ

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1章

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 こうと決めたからにはとことん最後までやりぬく私だけど、
 次の日にはかなり後悔していた。
 「ひなた様、両腕を真っ直ぐ横にあげてください」
 「ひなた様、色を合わせたいのでこっち向いていただけますか」
 「ひなた様、このような生地はいかかでしょうか?お顔に合うと思うのですが」
 「ひなた様は御髪が黒くとても美しいのでこの髪飾りが映えると思いますがどうでしょうか?」
 私の周りには今、人が10人ぐらいたかっている。
 儀式用のドレスを縫うために準備をしてるのだけども、
 寄ってたかって私に合うものを必死になって選んでくれている。
 しかも一週間ごときたもんだから時間がなく大変そう。
 私も私で今までこんなことしたことないから言われてることもちんぷんかんぷんだし
 ファッションも世界観が違うもんだから流行りとかもわからないし
 そもそも部活ばっかりでジャージと制服しか着てなかった私にとって苦痛以外なにものでもない。

 だーれーかーたすけで~。
 私にはもう限界。腕も疲れてきた。
 ドアの外からノックの音が。
 一応、私の前に立てかけてあるものがあって直には見えないようになってるので
 入ってくるように答えた。
 たてかけからニコが丁寧にお辞儀をするのが見えた。
 あ、ニコ!!たーすーけーてーーーー。
 「陛下がお呼びですわ、ひなた様。
 ・・・・・・・。ブブッ。」

 ひどっ。私の泣きそうな顔を見て笑いやがった。他の人がいるときはきちんとメイドをしてるのだけど、
 我慢ができなかったのか、下を向きながら笑っていた。
 

 後でみとれよ。ニコのやつ。
 国王のおよびとなれば何事よりも優先しなきゃといって、
 集まった彼女達に後はニコに任せてるのでと伝えて逃げてきた。
 寸法も測り終わったし、だいたいのことはもう伝えたしね。
 ということで国王の部屋に。

 「失礼しまーす。国王様なんですか?用事って」
 相変わらずお仕事中なのか、書類いっぱいの机に向かっていた。
 「ロンだ」
 「は?」
 「国王様じゃなくてロンだ」
 「え?ああ、名前ね。なんで急に?」
 「お前が自分のこと名前で呼べって言っただろう。ならばお前も
 オレのこと名前で呼ぶべきだ。大体オレ以外には皆名前で呼ぶのに・・・・」
 あれれ、気にしてたんだ。
 「だって、国王様を名前で呼ぶと失礼かなって」
 「そもそも、国王様といい方もおかしい。
 お前は自分を一人の人間として見てほしいと言ったそうだな。
 じゃあお前もオレのことは一人の人間として見てくれないのか?」
 「え?見てるけど・・・。さすがに名前は・・・王様だし、国で一番偉いんだし」
 「オレがいいって言ったからいいんだよ。決まりだ」
 「わかった・・・。ロン・・・ね」
 「・・・・。うん」
 満足したように微笑まれた。
 イケメンの笑顔が眩しい。直視出来ない。
 それになんだかな、この空気。
 はずかしいぞ。照れるぞ。
 変な空気になったので話をそらした。
 「ああそういえば用事ってなんだったの?」
 「お前がそろそろ辛いだろうからってお茶でも誘ったんだ」
 なんと、私が限界超えてたことを違う部屋にいたのにわかったの?
 凄くない?さっすが国王!
 「おお~。さすが~。気が利くねぇ。もう、みんなすごいんだもん。
 あんなこと初めてだったし。」
 いつの間にかお茶の準備が整っており、私は座り心地のいいふかふかのソファーに
 促される。
 向かい側に座ったロンは優雅にティーカップを持ち上げた。
 「お前のいたところでは服とかはどうやって決めてたんだ?」
 「ああ、それはね・・・・。」

 その後は私の世界の話で盛り上がった。いろんなことに興味があるロンは
 私の世界のものについて聞いてきた。
 私に答えられることは答えたけど
 さすがにパソコンやテレビの仕組みとかはわかんないからさ。
 いまさらながらいろんなこともっと勉強やっとけばよかったと深く後悔。
 彼との話はとても楽しくあっという間に時間が過ぎた。
 気づけば夕食の時間になっていた。
 夕食も一緒にと言われたのでずうずうしくもロンの部屋で食べた。
 もともと仕事ばかりしている彼は私がきていなかったときは
 ほとんど食堂で食べることなく、この部屋で食べていたらしい。
 食事中も私は質問責めだった。だけど質問ばかりではなく、それらに合わせて
 この国ではどうしているのか、代わりに何を使ってるのか教えてくれた。
 話をしながらも笑ったり驚いたり急がしかったけどとっても楽しかった。

 ロンは意地悪と思ったのに意外といいヤツだった。
 多少、所々に意地悪なところがでてたけど、最初ほど嫌な感じもなく威圧感もない。
 今日1日でだいぶ打ち解けたと思う。

 
 なんとなくベッドに入ろうとした時にロンと話したことを思いだした。
 思い出し笑いをしていた私を見てニコが微笑んだ。
 そして私に暖かいシーツをかけてくれた。
 「なんだか、よっぽど楽しいことあったみたいだね」
 「うん、ロンって意外といいヤツだってことがわかった」
 国王に対していいヤツとか言うのは失礼かなと思ったけど、ニコはそれに対して何も言わなかった。
 それどころか、ニヤニヤされた。
 ニコはお休みなさいとだけ私に告げ、ドアの近くまで行き部屋の明かりを消した。

 なんでにやけるんだよぅ。なんかへんなこと言ったかなぁ。
 まあ、いっか。明日も早いし、寝ることにしよう。
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