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次に目を覚ましたときも、変わらずあの人の腕の中だった。まだこの腕に居られることに安心して、掴んだままだった金色のひもをまた口の中へ入れる。
「これが気に入ったかな」
「……ぁう?」
頭上から降ってくる優しい声に、眠たいながらも顔を向けた。さっき見た時よりも近くにきらきらしたお顔があってびっくり。食べようとしていた金色のひもを掴んでいた手も離してしまうが、それをその人がまた握らせてくれた。
「君なら幾らでも食べていいよ」
そう言われて、反射的にぱくりと金色のひもを口に入れた。もぐもぐしながら、ふとそのひもの先を辿ってみる。
その先に繋がっていたのは、金色の三つ編みで。もう一度三つ編みからひもの先に戻って、もう一度三つ編みを辿る。何度見返しても、それはその人の髪の毛だった。
その事実に一層驚いてぽかんと口を開けると、口に入れていた髪の毛がぽとりと落ちていく。
「あれ、もう要らない?」
「う……あぶぅ……」
自分の涎まみれにしてしまったので怒られても仕方ない事だと思うのだけれど、寧ろこの人は嬉しそうにどうぞってしてくれた。なんでだろう。
とりあえず、ごめんなさいの意味を込めて言葉を発する。多分伝わってはいないけれど。
「ユリウス殿下、ベルンハルト様、準備が整いました」
その声でやっと僕は周りを見たのだった。椅子のひとつにこの人は座っていて、机を挟んだ向こう側に僕の家族が座っている。この人とのさっきのやりとりを家族は見ていたはずなのに、なんで何にも言わないんだろう。僕が赤ちゃんだからかな。赤ちゃんって直ぐになんでも口にしてしまうって、聞いたことがある。六歳までのサイカの頃のことを覚えてるのに、この体が赤ちゃんだからか同じようにしてしまっていた事に少しだけ悲しくなる。
「あぁ、分かった。では行こうか、カスバート公爵」
「はい」
扉のそばで声を掛けてくれた男の人に、皆が立ち上がって着いていく。準備が出来たって言っていたけど、何が始まるんだろう。楽しいことだといいな。
◇◆◇
移動した先はさっき居た部屋よりも少し広くて、真っ白な部屋だった。部屋の中にあるのは小さな布団のようなものだけ。それも部屋の真ん中にあり、とても小さい。それこそ僕一人しか使えないような小さな小さな布団だった。
本当にこれで準備できたのかなと心配していると、僕を抱えたその人が迷いなく布団へと近付いていく。
「ランドルフ、少しの間だけこの上で大人しくしていてね。大丈夫、少し我慢すればまた私が迎えに来るからね」
「うー!」
その人は僕を布団の上に寝かせると、家族が居た場所まで下がっていく。寂しいけれど、離れる前にその人が僕の手に三つ編みを結んでいた白いひもを握らせてくれた。少しだけど甘い匂いがする。
離れていくその人を見送ると、少しずつ不安が押し寄せてくる。今までは居ないことが当たり前だったはずなのに。
不安を落ち着けるためにひもを口に咥えて、もぐもぐと頬張る。早く終わって、またあの人に抱きしめて欲しいなぁ。
「それでは始めさせていただきます」
男の人の声がしたすぐ後に、布団が少し揺れた気がした。そして直ぐに辺り一面を光の膜が覆って、何も見えなくなる。それをじっと見ていると、自分一人がどこが別の場所に行ってしまったような気がして怖くなった。ひもをぎゅっと手に握ったまま、助けてと乞うように泣き叫ぶ。
涙で何も見えず、自分の叫ぶ声で何も聞こえない。けれどずっとそうしていると、ふいに強く甘い匂いが漂ってきた。
「ランドルフ、ランドルフ! ごめんね、怖かったね。もう大丈夫だよ」
光の膜はいつの間にかなくなっており、またあの人が僕を抱き締めてくれる。家族よりも先に僕を抱き上げてくれたことが、何故だがとても嬉しかった。
暖かい手に頭を撫でられ、ひくりとしゃくりあげはするものの涙は次第に止まっていく。
「大丈夫。たとえ君がこの先どうなろうとも、私は君を愛してる」
その言葉はとても小さかったけれど、抱きしめられている僕にははっきりと聞こえていた。
それは嘗てサイカだった時に、大切な人――幸人さんがくれた言葉と同じだった。
「これが気に入ったかな」
「……ぁう?」
頭上から降ってくる優しい声に、眠たいながらも顔を向けた。さっき見た時よりも近くにきらきらしたお顔があってびっくり。食べようとしていた金色のひもを掴んでいた手も離してしまうが、それをその人がまた握らせてくれた。
「君なら幾らでも食べていいよ」
そう言われて、反射的にぱくりと金色のひもを口に入れた。もぐもぐしながら、ふとそのひもの先を辿ってみる。
その先に繋がっていたのは、金色の三つ編みで。もう一度三つ編みからひもの先に戻って、もう一度三つ編みを辿る。何度見返しても、それはその人の髪の毛だった。
その事実に一層驚いてぽかんと口を開けると、口に入れていた髪の毛がぽとりと落ちていく。
「あれ、もう要らない?」
「う……あぶぅ……」
自分の涎まみれにしてしまったので怒られても仕方ない事だと思うのだけれど、寧ろこの人は嬉しそうにどうぞってしてくれた。なんでだろう。
とりあえず、ごめんなさいの意味を込めて言葉を発する。多分伝わってはいないけれど。
「ユリウス殿下、ベルンハルト様、準備が整いました」
その声でやっと僕は周りを見たのだった。椅子のひとつにこの人は座っていて、机を挟んだ向こう側に僕の家族が座っている。この人とのさっきのやりとりを家族は見ていたはずなのに、なんで何にも言わないんだろう。僕が赤ちゃんだからかな。赤ちゃんって直ぐになんでも口にしてしまうって、聞いたことがある。六歳までのサイカの頃のことを覚えてるのに、この体が赤ちゃんだからか同じようにしてしまっていた事に少しだけ悲しくなる。
「あぁ、分かった。では行こうか、カスバート公爵」
「はい」
扉のそばで声を掛けてくれた男の人に、皆が立ち上がって着いていく。準備が出来たって言っていたけど、何が始まるんだろう。楽しいことだといいな。
◇◆◇
移動した先はさっき居た部屋よりも少し広くて、真っ白な部屋だった。部屋の中にあるのは小さな布団のようなものだけ。それも部屋の真ん中にあり、とても小さい。それこそ僕一人しか使えないような小さな小さな布団だった。
本当にこれで準備できたのかなと心配していると、僕を抱えたその人が迷いなく布団へと近付いていく。
「ランドルフ、少しの間だけこの上で大人しくしていてね。大丈夫、少し我慢すればまた私が迎えに来るからね」
「うー!」
その人は僕を布団の上に寝かせると、家族が居た場所まで下がっていく。寂しいけれど、離れる前にその人が僕の手に三つ編みを結んでいた白いひもを握らせてくれた。少しだけど甘い匂いがする。
離れていくその人を見送ると、少しずつ不安が押し寄せてくる。今までは居ないことが当たり前だったはずなのに。
不安を落ち着けるためにひもを口に咥えて、もぐもぐと頬張る。早く終わって、またあの人に抱きしめて欲しいなぁ。
「それでは始めさせていただきます」
男の人の声がしたすぐ後に、布団が少し揺れた気がした。そして直ぐに辺り一面を光の膜が覆って、何も見えなくなる。それをじっと見ていると、自分一人がどこが別の場所に行ってしまったような気がして怖くなった。ひもをぎゅっと手に握ったまま、助けてと乞うように泣き叫ぶ。
涙で何も見えず、自分の叫ぶ声で何も聞こえない。けれどずっとそうしていると、ふいに強く甘い匂いが漂ってきた。
「ランドルフ、ランドルフ! ごめんね、怖かったね。もう大丈夫だよ」
光の膜はいつの間にかなくなっており、またあの人が僕を抱き締めてくれる。家族よりも先に僕を抱き上げてくれたことが、何故だがとても嬉しかった。
暖かい手に頭を撫でられ、ひくりとしゃくりあげはするものの涙は次第に止まっていく。
「大丈夫。たとえ君がこの先どうなろうとも、私は君を愛してる」
その言葉はとても小さかったけれど、抱きしめられている僕にははっきりと聞こえていた。
それは嘗てサイカだった時に、大切な人――幸人さんがくれた言葉と同じだった。
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