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8 sideユリウス
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物心つく前から、何処かで違和感を感じていた。思考に靄が掛かっているような感覚だ。それが一体何なのか分からないまま、自分は十歳という節目を迎えることとなる。そこで何が起こるかも知らず、慣例に漏れず神殿へと赴いたのだった。
「ユリウス殿下、お待ちしておりました」
丁寧な礼と共に迎えてくれたのは神官長であり、自分の叔父であった。王弟殿下ではあるものの王位継承権は放棄しており、神殿で神官として身命を賭すことを陛下へと宣言したらしい。その時既に陛下には自分を含めて王子が二人と王女が一人居たため、あまり貴族らと揉めることも無く神殿へと籍を移したとの事だった。一番大きいのは、神殿に務めることの出来る魔力属性と魔力保有量を持っていたからだろうが。
「お久しぶりです、リディオ神官長」
「えぇ、お久しぶりです。此度は節目を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます」
「ありがとうございます」
通された部屋で準備が整うまで待つように指示され、ソファで大人しくしておくことにした。部屋の中には本棚もあるが勝手に触れてはならないだろうし、かといって誰か話し相手がいる訳でもない。護衛はいるけれど、常に職務を全うする忠実な臣下のため話し相手になどなりはしないのだ。
それに待つと言っても大した時間ではないだろう。元々事前に今日訪れることは連絡してあるのだから。
用意された紅茶に口をつけ、少し肩の力を抜いて目を閉じる。緊張することなどないはずなのだが、少し嫌な予感がするのだ。それは多分自分がずっと抱えてきた違和感に直結することだと、何故か確信していた。
(ここで私に何が起ころうと、父王陛下にとってはどうでもいいのだろうな)
再び目を開けたところで、部屋の扉がノックされる。返事をすれば、直ぐに神官長の声が聞こえて顔を出す。
「ご準備が整いました。参りましょう」
促されるままに神官長の後へ着いていき、ひとつの大きな扉の前に佇む。
「部屋の中へはお一人で入っていただくことになります。中央にある魔法陣の上に立って魔力を流していただいた後、奥の台座の紙をご確認ください。ご確認になられましたら紙を精霊の泉の中へと沈めて、儀式は終了となります」
「わかりました」
重そうな両扉を神官がそれぞれ左右に立って開き、一歩を踏み出す。部屋の中は扉に見合った広さのある部屋だった。部屋の中央の床には魔法陣が刻まれており、大人が二十人ほどで囲ってようやく一周出来るほどの大きさだ。その陣の奥には台座があり、部屋の一番奥の壁には沿うように半月の形をした小さな泉がある。壁から突き出るように泉の中央でこの国の精霊王と言われている、水の精霊『ヴィオラ』の彫刻が刻まれていた。
後ろで扉の閉まる音を聞きながら、魔法陣の真ん中へと歩いていく。中央に立ってから地面へ掌を向け、少しずつ魔力を流した。中央から流れるように陣が徐々に光を帯びていく様は、幻想的で美しい。
それに見蕩れながら、陣の外側の円が全て光で満ちるのを確認したその時。
「ッ!」
大きな衝撃とともに、息が苦しくなる。咄嗟に手を翳すのを止めて、喉元へ手を添えた。しかし、魔力を流すのを辞めたにも関わらず魔力が流れていく感覚が途切れない。何が起こったのかと確認しようにも、辺りが眩しくて目を開けることすら叶わなかった。それに、息苦しさがどんどん酷くなってきて、呼吸もままならない。
(私は……ここで死ぬのか? まだ、何も出来ていないのに)
――まだ、あの子に会えていないのに。
「ユリウス殿下、お待ちしておりました」
丁寧な礼と共に迎えてくれたのは神官長であり、自分の叔父であった。王弟殿下ではあるものの王位継承権は放棄しており、神殿で神官として身命を賭すことを陛下へと宣言したらしい。その時既に陛下には自分を含めて王子が二人と王女が一人居たため、あまり貴族らと揉めることも無く神殿へと籍を移したとの事だった。一番大きいのは、神殿に務めることの出来る魔力属性と魔力保有量を持っていたからだろうが。
「お久しぶりです、リディオ神官長」
「えぇ、お久しぶりです。此度は節目を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます」
「ありがとうございます」
通された部屋で準備が整うまで待つように指示され、ソファで大人しくしておくことにした。部屋の中には本棚もあるが勝手に触れてはならないだろうし、かといって誰か話し相手がいる訳でもない。護衛はいるけれど、常に職務を全うする忠実な臣下のため話し相手になどなりはしないのだ。
それに待つと言っても大した時間ではないだろう。元々事前に今日訪れることは連絡してあるのだから。
用意された紅茶に口をつけ、少し肩の力を抜いて目を閉じる。緊張することなどないはずなのだが、少し嫌な予感がするのだ。それは多分自分がずっと抱えてきた違和感に直結することだと、何故か確信していた。
(ここで私に何が起ころうと、父王陛下にとってはどうでもいいのだろうな)
再び目を開けたところで、部屋の扉がノックされる。返事をすれば、直ぐに神官長の声が聞こえて顔を出す。
「ご準備が整いました。参りましょう」
促されるままに神官長の後へ着いていき、ひとつの大きな扉の前に佇む。
「部屋の中へはお一人で入っていただくことになります。中央にある魔法陣の上に立って魔力を流していただいた後、奥の台座の紙をご確認ください。ご確認になられましたら紙を精霊の泉の中へと沈めて、儀式は終了となります」
「わかりました」
重そうな両扉を神官がそれぞれ左右に立って開き、一歩を踏み出す。部屋の中は扉に見合った広さのある部屋だった。部屋の中央の床には魔法陣が刻まれており、大人が二十人ほどで囲ってようやく一周出来るほどの大きさだ。その陣の奥には台座があり、部屋の一番奥の壁には沿うように半月の形をした小さな泉がある。壁から突き出るように泉の中央でこの国の精霊王と言われている、水の精霊『ヴィオラ』の彫刻が刻まれていた。
後ろで扉の閉まる音を聞きながら、魔法陣の真ん中へと歩いていく。中央に立ってから地面へ掌を向け、少しずつ魔力を流した。中央から流れるように陣が徐々に光を帯びていく様は、幻想的で美しい。
それに見蕩れながら、陣の外側の円が全て光で満ちるのを確認したその時。
「ッ!」
大きな衝撃とともに、息が苦しくなる。咄嗟に手を翳すのを止めて、喉元へ手を添えた。しかし、魔力を流すのを辞めたにも関わらず魔力が流れていく感覚が途切れない。何が起こったのかと確認しようにも、辺りが眩しくて目を開けることすら叶わなかった。それに、息苦しさがどんどん酷くなってきて、呼吸もままならない。
(私は……ここで死ぬのか? まだ、何も出来ていないのに)
――まだ、あの子に会えていないのに。
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