第二王子に浮気されたオメガ令息は、第一王子から求愛されました

こたま

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 13歳になったヒューゴは、アルファと診断されたのち貴族学院に入学した。勉学、剣の稽古に励み、次代を担うべく政務を学ぶことも怠らない。
 学院では生徒会に所属し組織の運営に尽力し、同年代の若い貴族師弟との交流をはかる。
 時期国王となる理想的な王子と称されるように努力してふるまい、15歳を迎えた。
 その年、弟のザッカリーも貴族学院に入学した。兄弟は顔立ちは大変似て整っていたが第二王子の性別はベータであった。

 ザッカリーは、友人が多く、明るく楽しい性格で多数の取り巻きに囲まれていた。しかし、アルファの兄に性別でのコンプレックスを感じているのか、事あるごとに兄に反発したり競って自分の力を誇示するところが見受けられた。

「ザッカリーも生徒会に入ろうね」
「わかっていますよ。お兄様」
「うん。それなら良いよ。私は君を副会長に推薦する。僕の次の代に会長になって欲しい」
「わかりました。勿論そうなると思っていました。私の補佐や会計、書記の人選ですが私が選んでも良いですね?」
「ああ。目星がついているの?」
「はい。補佐と会計には私の側近候補を。書記にはマテオを入れてください」
「わかった。そのように取り計ろう」

 一年生から生徒会に入るのは王子達との親密さを表すことになる。マテオが希望したわけではなかったがザッカリーの希望で入会することになった。

 マテオは学院に入るときの性別判定で、事前に思った通りオメガとわかった。
 発情期が来ると定期的に休んで迷惑をかけるかもしれないので、生徒会での役職が務まるのか不安もあったのだが

「マテオ。君は書記になるんだよ。それからなるべく私の言うことを聞いて。お兄様よりも私を優先して欲しい。いずれ私が会長になっても君には僕を支えてもらうのだからね」

 ザッカリーが兄に対して持つ対抗意識に巻き込まれた状況で生徒会書記になる事は望んでいなかった。しかしマテオが何か意見を言える立場にはない。

「はい。ザッカリー殿下。かしこまりました」

 実際に学院生活が始まると勉学も楽しく、これまで縁の無かった他の貴族家の子息とも友人関係になれて楽しい面があった。
 マテオが在籍するのはオメガだけのクラスであったので、普段はザッカリーや側近候補の取り巻き達と一緒に過ごすことはなかった。

 慣れてくると生徒会の集まりや仕事には、ザッカリーはあまり真面目に参加しないようになった。取り巻きに囲まれて、ただそこにいるだけだったり、補佐に仕事を押し付けて自分はサボる事が少しずつ増えた。
 一方マテオは、生来の真面目さで毎回必ず出席して、議事録を作成し、必要な時には配布する文書を作り会長のヒューゴに見てもらう事が多かった。

「マテオはとても良く纏めることが出来て素晴らしいね。字も綺麗で読みやすいよ。いつもありがとう」
「こちらこそ、お褒め頂いてありがとうございます。嬉しいです」
「大変な時には私が手伝うから遠慮しないで直ぐに言うんだよ」
「はい。お気遣いありがとうございます。ヒューゴ殿下」

 生徒会にザッカリーがいる時には

「マテオ、週末は王宮に遊びにおいで。他国の珍しいお茶が手に入った」
「かしこまりました。ザッカリー殿下、お伺いいたします」
「それから庭も見せてあげる」
「ありがとうございます」

 兄の前で、わざわざ兄がお気に入りのマテオとの親密さを見せつけたり、自分が奪うような態度を取っているザッカリーであったが、本心でもマテオに惹かれてはいた。
 しかし、次第に生徒会の活動や貴族の人間関係など、真面目に覚えるマテオの方が知識を蓄えていった。また学業もザッカリーより優秀なため、少しずつマテオを疎ましく感じる気持ちも感じるようになってしまっていた。

 夜会に参加した折に、貴族家の名前や関係図の思い浮かばないザッカリーに、側でそっと耳打ちしてお教えしたり。
 学院での生徒会事務仕事について、ザッカリーが失念していたら補佐役と一緒に代わりに行ったり。
 いずれもザッカリーが批判されないように彼の為を思っての行為ではあったが、それを当然のように受け取られる上に段々うるさがられるような態度をザッカリーが取りはじめたことをマテオも感じるようになった。

「マテオ、君は私に冷たい。もっと優しくしてくれないか」
「失礼いたしました。私の行いに無礼があれば改めます」

 それからザッカリーは学院で同級生の女性数人と浮き名を流すようになった。女性と連れだってサロンに出入りしたり、ベンチで女性の手を握って親密そうに話している姿を見かける。
 それも一人ではなく次々と相手が代わって行く。兄のヒューゴがそれをたしなめてもどこ吹く風と、逢瀬を楽しんでいる様子だった。

 だからもうマテオには興味が無いのだろうと思った。関心が自分から薄れていく事に対しては、残念だとも思わないマテオであった。

 
 ヒューゴは卒業して、周辺国に短期の留学や視察に行ったり政務を行うようになった。
 ザッカリーは生徒会長に就任したが、相変わらず実務は補佐役とマテオが行っていた。
 女性との付き合いも変わらず、下級生もその相手に選ぶようになっていった。

 だからマテオは、まさかザッカリーが自分を兄のヒューゴに対する当て付けだけで婚約者候補にするとは思ってもいなかったのだ。
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