その血は呪いか祝福か 不死人は己を憂う

陽仁狼界

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Funky Monkey Bloody

15の欠片

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 蛇王達との戦いから数日。
 蛇共を誘い込んだ屋敷は取り壊される事になり、娼館街の一角にぽっかりと空き地が出来ているさまは微妙な景観になっていた。
 嬢達の戦闘での傷も完全に癒えたし、確認したいことが山程ある。

「よーし着いた」

「ビットさん、目的地も告げずに『出かけよう』って言われたからついて来たけど…」

「ここ、教会ですよね」

 というわけで、俺は嬢達吸血種ノスフェラトゥ組を連れてアルヴィラ教会を訪ねていた。
 何故教会なのか、嬢とジャコの二人はそんな目で俺を見ている。

「………来れば分かる」

 俺がどういう意図でここに連れて来たのか分かっているキーシャは、少し青い顔でキャスケットを深くかぶり直した。
 ああ、うん。俺はもう慣れてたから然程気にはならないけど、キーシャは俺の記憶の中で奴の正体を見たんだったな。
 確かに、見慣れない間のあいつの外見は、少し刺激が強すぎる。
 苦笑しながら礼拝堂に入り、奥に居た神父のジィさんと目が合う。

「…おや、あなたですか。お連れが居るとは珍しい」

「よう。ちょいと訳ありだ、奥借りるぞ」

「ええ、どうぞ。神の思し召しがあらんことを」

 勝手知ったるなんとやら、俺は挨拶もそこそこに礼拝堂の奥へと足を運ぶ。
 ジィさんは苦笑しながら俺の背中に向かって祈りを捧げる動作をした。
 ケッ、野郎の思し召しなんぞ知ったことか。




「………この辺でいいか」

 俺達は教会堂の一室に入り、そこに備え付けてあったソファに掛ける。
 ここならあいつを呼び出すための御神体があるし、人目につかないので丁度いいだろう。

「……ビットさん、そろそろなんの目的があってここに連れて来たのか、教えてくれてもいいんじゃない?」

 嬢が疑わしげな目を向けてそう問いかけてきた。
 堪え性が無いねぇ。せっかちな女は嫌われるぜ?

「………見てんだろ?アルヴィラ」

 嬢への返答も無く、俺は奴へと声を掛ける。
 次の瞬間、世界はひび割れて暗転し、座っていたソファ以外の全てが消滅した。

「!?」

「落ち着け、害はない」

 嬢とジャコが目を見開いて周囲を見回すが、それをキーシャが窘めた。
 偶然とはいえ、事情を知ったキーシャが居て本当にありがたい。

『今回は再会が早いではないか。如何用か?『器』よ』

「五月蝿ぇ。見てた癖に何すっとぼけてんだ化け物フリークス

 骨と内臓だけの上半身をボロ布で纏った、八つ目で嘴を持つ二対の腕を生やした化け物。
 創世神アルヴィラのご降臨だ。

「なっ…!何者ですか!?」

「落ち着け化け提灯ジャック・オ・ランタン。これは敵ではない」

 血晶魔法ブラッドアーツを発動しようとするジャコを窘めながらキーシャは俺を見る。
 俺の口から言えってか。

「び、ビットさん、この人?は一体…」

「アルヴィラだ。お伽話位ガキの頃読んだだろう?」

 魂を引っ張りあげられた影響で顕在化した鎖を鳴らしながら、俺は肩を竦める。
 軽く口にしたそれに、嬢達は明らかな動揺を顕にする。

「アルヴィラ…って、もしかして創世神アルヴィラ様?」

『呵呵、我など所詮は異界より喚ばれた一つに過ぎんのだがな。貴様らヒトには、そのように呼ばれている』

 アルヴィラが牙の生えた嘴をカチカチ鳴らして肯定すると、二人はオロオロとして頭を下げた。

『楽にするが良い。堅苦しい礼など求めておらん』

 アルヴィラは呆れたようにそう言うと、七本指の一本を立ててアルカ嬢とキーシャを指し示す。

『2つ、か。幸先が良いではないか、『器』よ』

「…………テメェ」

 その言葉で確信した。
 この野郎、資格者が一人じゃないことを知っていやがった。

「知ってて黙ってやがったな、このクソボケ」

『左様。我は貴様がどう動こうとも、過剰に貴様に干渉せぬ。それに』

 アルヴィラは涼し気な態度で一拍置く。

『我は資格者が1人だなどと言った覚えは、一度としてない』

「殺す!ぜってー殺っ…ぶっ!」

 アルヴィラに飛び掛ろうとしたが、鎖が重くてつんのめった。
 アルヴィラが定義付けたのであろう床に突っ伏してそのまま五体投地。
 コイツに頭を下げるなんて屈辱以外の何物でもない。

『呵呵、呵呵』

「こ、の、野、郎…!」

 嬢の肩を借りながらソファに座り直し、笑っているアルヴィラを睨みつける。

「ビットさん…神様に対してそんな口の利き方…」

『構わん。我はこの者にそう言われても仕様の無き事をした』

 ひとしきり笑って満足したのか、アルヴィラは嬢の苦言にそう言って俺を見る。

『貴様の用向きは心得ている。『手掛かり』が欲しいのであろう?』

「………」

 やはりコイツ、全てを知っていながら、ヒントを小出しにして俺がどう動くか見物するつもりだ。

『それくらいしか娯楽が無いのだ。許せ』

「心を読むんじゃねぇ。…………で、今回はどんな謎掛けをよこすつもりだ?」

『うむ』

 アルヴィラは俺の問いにひとつ頷いて、静かに語り始める。

『………15の欠片、鍵とも呼べる。それを『器』に満たすこと。しかし心せよ、『器』が満ちる度、『器』は我から離れ、いずれは滅びを迎えるであろう』

「…………」

 15の欠片。
 ………まさかな。
 だが、確実な事は、『資格者』の明確な人数は15人だって事だ。
 そいつに俺の血を飲ませること、それが俺の呪いを解く方法だと思えばいいのだろう。

「テメェは嫌いだが、一応礼は言っといてやる」

『呵呵、貴様は嫌いではないから、その言葉は素直に受け取ろう』

 憎たらしくも皮肉を返され、俺は不満を露わに鼻を鳴らした。

「訊きたいことは全部聞いた。もう帰せ」

『左様か。……『欠片』共よ』

「え?」

「私達の事か」

 俺達の対話を傍観していた嬢とキーシャは、アルヴィラに話しかけられて居住まいを正す。

『この者が目的を果たすには貴様達の存在が文字通りの『鍵』となる。貴様達の行動一つで世が動くことを然と自覚せよ』

「私達の行動一つで…一体っ…!?」

 嬢が訊き返そうとするが、既にアルヴィラの姿はそこに無く、世界は元に戻っていた。

「……戻ってきた様だな」

「ああ、あの野郎、最後の最後で面倒な事を言い残して行きやがった」

 ホント、だからアイツは嫌いだ。
 まずはまだ見ぬ3人目の資格者。
 そいつを見つけることから始めよう。
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