あの人と。

Haru.

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After Story

可愛い伴侶

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「ここだよ」

 お義父さんに案内された部屋には、ズラリと絵が並んでいた。新しいものが入り口の近くに飾られて、奥に行けば行くほど古いものが飾られているらしい。

「そうだなぁ……ユキちゃんが喜びそうなのは……この辺かな」

「か、か、かわ……かわいいっっ!!!!」

 お義父さんが示した絵には2歳くらいの、ふくふくとした子供らしい輪郭を持ったダグがいた。クマのぬいぐるみを抱えたダグはペタンコ座りをしてコテリと首を傾げながらこっちを見ている。

 これは反則だよ……! 可愛すぎるよ!!!

「他のものも好きに見ていいからね」

「はい!!!」

「父上……」

「ユキちゃんが喜んでいるんだからいいだろう?」

「たしかに喜ぶユキは可愛いですが……」

 複雑そうな顔をするダグを尻目に僕はあっちに行ったりこっちに行ったりダグの絵を次々と見ていく。5歳くらいのダグもすっごく可愛くて、この頃はちょっと生意気さが出た頃なのかツンとした表情が子供っぽくて可愛いかった。10歳くらいのかっこよさと可愛さが同じくらいになってきたキリッとしたダグも可愛いんだけどね!! 

 とりあえずどれを見てもダグは可愛いということがわかりました!!

 ちなみに12歳くらいになるとたしかに体格は僕を追い越すくらいになってきて、可愛いをかっこいいが追い越す感じになってきた。12歳に負ける僕……まぁいいんだけどね。10歳から12歳の間の成長具合がものすごいからこの世界はこれくらいが成長期なんだろうね。

「キリノの望みでこうして絵姿を残してきたけれど、ユキちゃんが喜んでくれたのならためになったね。ここにいる間はいつでも見ていいからね」

「ありがとうございます!!」

 お義母さんもありがとう!! お義母さんのおかげでこんなに可愛いダグを沢山見れたんだもん。僕は幸せです。

 可愛いダグを目一杯見て満足した僕はこれまたルンルンとさっきの部屋へとダグと一緒に戻った。道中はいかにダグが可愛いかったかを熱く語りましたよ。ダグには微妙な顔をされたけど。


 そのあと少しばかりお茶をしたら解散になった。僕とダグが泊まることになったのはダグの部屋!! ダグの生まれ育ったお部屋ですよ!! ダグがここから離れた後も定期的に掃除されているらしくて、埃1つなくて空気も綺麗だった。

「ここがダグの部屋……」

 ここで勉強したのかな、とかここでトレーニングしてたのかもしれない、とかここではお昼寝とかもしてたのかなぁってウロウロと見て回り、寝室もお風呂もひと通り見てからテーブルセットの元へ戻ればダグにひょいと抱えられて膝に乗せられました。ガッチリとホールドされて身動き取れません。

「病み上がりなんだからあまり動き回るな」

「だってダグの部屋だよ? どんな風に過ごしてたのかなぁって気になっちゃったんだもん」

「暫くいられるんだからゆっくり見たらいい。今日はもう大人しくしておけ」

「はぁい」

 たしかにまだ日にちはあるから今日は大人しくしてよう。今日無理して明日とか動けないなんて目も当てられないからね。大人しくダグに捕まっておきます。

 ぽふ、とダグにもたれるとまるで言うことを聞いて偉いぞ、とでも言うかのように撫でられて、その気持ち良さにさっきまで興奮してた気持ちはどんどんしぼんでいった。それと同時にとろとろとした眠気がやってきて、僕の瞼はもうひっつきそうです。

「寝てもいいぞ」

 寝ていいと言われたらとうとう僕の瞼は開くことを諦めまして。もぞもぞと居心地のいい体勢を探してから本格的に寝る体制に。

「んむぅ……おやすみ……」

「おやすみ」


 優しい声を最後に意識を飛ばし、温かい体温に包まれながらスヤスヤと眠った僕が次に起きたのは夜ご飯の時間だった。朝早くコルンガを出て、ここに着いたのがブランチにちょうどいいくらいの時間で……それから小一時間ほどしてから寝始めたから……

 お昼も食べずに眠っていたのか……と少し愕然とした。どうりでお腹も空くわけです。お腹がキュルキュルと空腹を訴えてます。

 鳴り止まないお腹を抑えてむくりと起き上がるとハラリとダグのらしきシャツが落ちたのに気づき、条件反射でとりあえずシャツを抱きかかえる。流石にダグも僕をカウチにおろしたみたいだね。僕も流石に6時間程も抱えてろなんて言いませんよ。シャツがあるから満足です。

 ところでダグはどこに言ったのかとキョロキョロ見渡せば、トイレに続くドアが開いてダグが出てきた。どうやらトイレに行っていたらしい。

「起きたのか。やはり疲れていたんだな。怠かったりはしないか?」

「ん、大丈夫。いっぱい寝てスッキリしたよ」

「ならいい。辛かったら無理するなよ」

「うん」

 クシャクシャと頭を撫でられ、にへ、と笑えば抱き上げられて膝に乗せられた。もちろん僕も擦り寄ってよりひっつきますとも。温かくて気持ちいいです。

「昼を食べていないが腹は……」

 なんてダグが言った瞬間に一旦鳴きやんでいたお腹がまた空腹を訴え始めまして。

「くっくっく……空いているんだな。明日は一緒に食べたいと父上が言っていたぞ。今日は疲れてるだろうから遠慮するそうだが」

「ん、わかった。今日のご飯何かなぁ」

「すぐににリディアが持ってくるさ」

 くつくつと笑われながらクルクル鳴き続けるお腹を抑え、まだかまだかとリディアを待てば、すぐにリディアが美味しそうな香りを放つワゴンを押して戻ってきた。

「よかった、起きていたのですね。夕食にいたしましょう」

「うん!」

 ダグはそのままテーブルまで運んでくれて、ダグの膝に座らされた僕はリディアが次々と並べてくれるご飯に涎が垂れそうです。つい前のめりになったらくつくつと笑ったダグに頭を撫でられて、落ちないようにとグイッと引き寄せられました。

「ふふ、お元気なようでよろしゅうございました。沢山お食べくださいね」

「うん! いただきます!!」

 さぁダグラスさん、食べさせてください!!

 ペシペシとお腹に回ってる腕を叩いて促せばすぐにサラダが口に運ばれた。……お肉が食べたいけどお昼食べてないしいきなりお肉なんて食べたらお腹がびっくりしちゃうよねぇ。大人しく最初はサラダ食べます。え? 次はスープ? お肉……

 少しシュンとしたのがわかったのかダグは頭を撫でてから小さめのお肉を口に運んでくれました。むっ、これは牛ほほ肉ですね……! しっとり柔らかでかつ脂っこくなくて赤身の旨味が口に広がる……! ああ、僕は幸せです……

 デザートのレアチーズケーキまでしっかりと食べてお腹いっぱいになったらダグにじゃれつきながら食休み。……薬もちゃんと飲んだよ。相変わらず絶対慣れることはないでしょっていう味でした。心を無にして飲むべし、です。

「明日は何をする?」

「明日? うーん、何しよっかなぁ……リディア、ここっていつまでいられるの?」

 いつまでいられるかによってどんな過ごし方をするかって変わってくるよね。二泊三日の旅行と五泊六日の旅行だったら全然計画も変わってくるでしょ? 

「短くとも4日ほどですね」

「本当に結構いられるんだね。なら明日はゆっくりする?」

「そうだな。それもいいだろう」

 というわけで明日の予定は決定です。のんびりとお茶でもします。お義父さん達ともまたお話しできたらいいなぁ。あとダグとお昼寝もいいよね。最近は暖かいからお庭でお昼寝なんて気持ち良さそうです。

 なんて考えつつしばらくしたらお風呂に入ることになり、リディアによって隅々まで磨き上げられた。それはもういつもより念入りに。

 まさか……

「こちらをお召しくださいね」

「やっぱり……!」

 薄々気付いてたよ……!

 リディアが用意したのはベビードール。見覚えのないデザインということはダグがまた注文したのかな……そしてこれを着せられるということはそういうことで。こうして用意されるのは今更ながら恥ずかしいね……
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