ちゃんとしたい私たち

篠宮華

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恋人

13.初めての夜②

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 さっき散々弄られた胸の先を再び愛撫され、鎖骨にぢゅっと音を立てて吸い付かれる。全身を大きな掌で撫で回され、お腹の奥に燻るような快感が溜まっていく。
 中に挿れられた指が、ぐぽぐぽと水音を立てるのを聞きながら、私は堪らなくなって身を捩る。

「あ、そこ……へん、な、かんじ…っ」
「……気持ちよさそうだけど」

 耳の中を舌でぐちゅぐちゅと舐められて、足の間だけでなく、頭にまで水音が響くようで。耳朶を甘噛みされてから、首筋を舌の先で辿られる。

「腰揺れてる…可愛い」
「あっ、だめ、なんか…あ、あっ…」
「中うねってる…もう挿入はいるかな…」
「や、ん…あ、あああっ…!!」

 嬌声を封じ込めるように唇を重ねられる。びくびくっと体が震えて、再び どっと倦怠感に襲われる。さっきもあったこれが、達するということなのかもしれない。

 すると、いつの間にか避妊具を装着した彼が私の脚を大きく開き、その間に体を滑り込ませ、またも探るように足の間の膨らみを捏ねる。それは達したばかりの体には強すぎる快感で。

「まだ、からだ、へんだから、だめ……っ!」
「変じゃないよ、大丈夫」

 あやすように優しく頭を撫でられて息をついたのも束の間、彼のものがぴたりと蜜口に当てられたのがわかって、緊張感に体が強張る。
 そのことに気付いたのか、彼は私の頬や肩をくすぐるように優しく刺激する。

「若菜、キスしよ」
「ん…」
「キスしながらさ、明日したいこと考えて」

 硬くなった彼のものが私の体の中心に触れ、押し広げるように入ってくる。

「美味しいもの食べたいとか、疲れてたら昼寝したいとか」

 息をするように瞼や頬にキスが落とされて、合間に話しかけられる。その度に少しずつ彼のものが奥を目指して進んでくる。

「どっかお店寄って帰ってもいいね」

 異物感は、正直なところものすごくある。でも、思っていたほどの痛みはない。さっき散々ほぐされたからかもしれない。
 むしろ、気を逸らそうと、一生懸命に話しかけてくれている彼の眉間に寄った皺の方が気になるくらい。
 それなら。

「宏隆…っ」

 すると、彼は心配そうに動きを止める。でも、その後すぐに私にそれが伝わらないように、ゆっくりと頭を撫でてくれる。

「……やめておく?」
「ちが、う…」
「ん?」
「へいき、だから…」
「…若菜」
「ちゃんと、おくまで、いれてほし…っ」
「……っ、もう…!」

 その直後、大きく息を吐いた彼が、ぐぐっと私の中に入ってくる。

「あああぁっ…!!」
「きつ…めちゃくちゃしまるんだけど…」

 痛みが全くないわけではないけれど、体の中で彼のものがどくどくと脈打っているのがなんとなくわかるから、そんなことよりも満たされた気持ちになる。

「…大丈夫?」
「…宏隆こそ」
「俺の心配なんかしなくていいよ」

 彼は、汗で張り付いた私の前髪を避けながら額に小さく口づけを落とした。

「…宏隆は、ちゃんと、きもちいい?」
「…うん、想像とは比べ物にならないくらい気持ちいい」

 その言葉に安心して微笑むと、私の顔の横に肘をついた彼がのしかかるように体を倒し、腰を小さく揺らす。

「…動いてもいい?」
「うん…」
「ゆっくりするから」

 じわじわと抜かれ、またゆっくり奥まで押し込まれる。
 はじめは少し引き攣るような感覚があったけれど、さっき指で弄られていた時には届かなかった場所を穿たれて、またもや全身が甘い痺れに支配され始める。
 蜜が抽送を助けるように溢れ、秘所が泡立っているようにすら感じる。痛みよりも気持ちよさが勝って、喘ぎ声がどんどん甘ったるくなってくる。
 そんな私の様子を目を細めて見つめながら、彼もまた時折 快感に小さく呻くから。

「ねえ…っ、どうしよう…」
「…っ、ん?痛い?」

 私のことを気遣うように再びぴたっと動きを止めた彼の頬に手を添えて、猫のようにその唇をぺろっと舐めてみる。

「…なんか、きもちよく、なっちゃってる、かも…」
「……っ…!」

 普段はあまり驚いたり慌てたりすることがなく、穏やかに凪いだ様子でいることの多い彼が、息を呑んだのがわかる。
 でも、もう気遣わなくてもいい。自分本位に動いてもらっても多分大丈夫だと、ちゃんと伝えたかった。

 私の言葉に、大きく息を吐いた彼は体を起こして私の腰を掴む。

「若菜のこと、大体のことは知ってると思ってた。でも、こんな風に煽ってくるなんて知らなかった」
「ごめ、ん…」
「どうして謝るの。大好きな人がベッドの中ではこんなにいやらしいなんて、最高だよ」
「そ、な…っ、こと…んぁっ…!」
「絶対に俺にしか見せないでね」
「見せる、わけ、ない…っ」
「…さすがに理性飛びそう」

 言葉通り、さっきよりも腰の律動が速くなる。中を味わうようにしっかり奥まで貫かれて、また快感に上り詰めていくような感覚に包まれる。耐えられず彼にしがみつくと、潰されるのではないかと思うくらい強く抱き締められた。

「締め付けやばい…っ…気持ち良すぎて腰が溶けそう…」
「あんっ…や、あ…も、もう無理…っ!」
「俺も、もうだめかも…」

 刺激の大きさに背中が弓形ゆみなりに反ってしまうけれど、彼にぎゅうぎゅう抱き締められているので快感を逃すこともできず。
 強烈な刺激が体中を一気に駆け巡り、びくんびくんと全身が震えた。
 ぼんやりする頭で体の力を抜くと、まるで慈しむようにそっと頭を撫でられる。

「ありがとね、若菜」
「んーん…こちらこそ…」
「やばいな…どんどん好きになる」
「私も…」

 そのまま瞼が重くなり、うつらうつらしてしまう私のこめかみに、彼は小さく口づける。それがあまりにも優しくて、私は静かに意識を手放した。




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