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月子の取扱説明書
16P
しおりを挟むパンッパンッと手を叩いて解散宣言をしたチユニは、慰めるようにシャノンの形のいい頭をポンポンと軽く撫でる。
それがさらにレナの機嫌を悪化させた。漫画なら背後にゴゴゴゴゴゴ……と描かれそうだ。だが彼女は耐えた。
いつものレナなら「寂しいわね、悲しいわね!特別にあたしの頭、撫でさせてあげてもいいわよっ!」と頭をグリグリ押し付けてくるだろうに。そうか、空気を読んだか。
ズンッズンッズンッと早足に、腕を大きく振りながら歩き先頭にいるレンマを腹いせに蹴り飛ばし、しっかり口を閉ざしてさっさと帰って行ってしまった。
レナが異常に怒っている理由を知らないシャノンはキョトン。無様に顔からこけたレンマは鼻を押さえながら「うぅぅ、酷い八つ当たりやぁ」とグズる。
どこからともなく取り出した板チョコをかじるルカはイチゴ味の棒キャンディをチユニの、イチゴチョコ味の棒キャンディをシャノン口に突っ込む。
ハクトは気まずそうにうつむき、ユラは小さく溜め息をついて歩く。ヒロキはケータイで楽しそうに誰かと電話をしているな。
シャノンはチユニに手を握られ、真っ赤になって「こ、子供じゃないんですからっ」と手を振りほどく。
ライトは…………最後尾、皆から少し離れ何かを1人で考え込んでいた。
これがmoon child。あまりにも人間によく似ていて、あまりにも人間に似ていない。謎の生物。
彼らの母、といわれている月が空に昇る夜まではまだまだ時間がある。彼らの本当の食事の時間が来るまで、彼らの私生活を覗いてみよう。
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