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柒号
4P
しおりを挟む「ヒロ、キ……遅いよ……」
「ハルヒッ!あぁ、どうして…………こんなことになるなら、ずっと一緒にいるんだった。外になんか行かせないでずっと俺達の部屋で……」
フッと負荷が消え、すぐさま駆けだしたヒロキの手がハルヒの手を握る。硬い地面を引っかいていた爪は割れ、指先は皮が破れ血まみれ。
黒い影もハウンドもリンクスも、消えていなくなっていたのに2人は気づかない。
「ううん。きっと、こうなる運命だったんだ、よ。これでも結構、頑張って戦ってたんだよ?でも……あいつ、強すぎた。多すぎた。だからごめん…………卵、守れなかった……」
「そんなことッ!くっ……俺…………嫌だ。死ぬなよハルヒ。俺達、結婚するんだろ?結婚したら俺、女遊び辞めるって約束したじゃん。子供2人欲しいねって、幸せな家庭を築いていこうねって話、したじゃんか……」
「ごめん」
「動物園にもいないような珍しい動物を一緒に探しに行こうって約束は?」
「……ごめん」
「今度の主の誕生日に、2人で大きなケーキを作ってプレゼントしようって約束は?」
「…………ごめんなさい。ヒロキ……私、もう……」
握りしめているハルヒの手が、耳が、人間のものに戻り尻尾が消える。彼女は様々な動物に擬態することができる特殊能力を持っている。
今のように体の一部だけを変えることができれば、種類を問わずに完全に変化することもできる。
スルリと落ちる細く白い手を、ヒロキの赤く染まった手はつかむことができない。
何の音も聞こえない。呼吸をするのも忘れてしまった。目の前でゆっくり、ハルヒのまぶたが閉じていく。薄ピンクの瞳が濁り、見えなくなった。
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