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参号
14P
しおりを挟む「ぐあっ!」
力でヒロキの拘束をねじ伏せると、そのまま卵を殴りつけた。レンマの拳から雷が落ちるように卵にヒビが走り、爆音とともに卵は砕けた。
あまりの衝撃に高熱が生まれ、中の白っぽい液が蒸発しレンマと卵が見えない。
皆、口々に何か叫んでいるが足は前に進まない。レンマが新しい月子を殺した、そう思った。ただ、レンマの姿が見えるのを待つことしかできない。それほどに、今のレンマは恐ろしかった。
「………………何でや。何で誰も、この子の悲痛な想いがわからんねや。こんなに……」
白い水蒸気の中からレンマの声が聞こえた。悲しげな、震える声が。
やがてシュウゥゥゥと音を立てて水蒸気が完全に消えると、ようやくレンマの姿が見えた。丈の短い上着を着ていない。代わりに、彼が腕に抱きかかえている人物に着せられている。
レンマにはわかったというのか?この、10番目の月子である幼い少女の心の声が。
人間でいう9歳か10歳あたりの、幼い少女。顔色はハクトよりも悪く、セミロングの明るい茶色の髪は濡れて頬や首に張り付いている。
「こんなに、怯えて震えて助けを求めとったのに!わいにはわかったで。声は聞こえんでも、力強い想いがわいの心を引っ張ったんや」
「その子、生きているのかい?殻はあんなにも大破しているのに、その子は傷1つ付いてない」
「だぁほ、ちゃーんと加減しとったわ。生きとる。けど、かなり弱っとる」
全裸にレンマの上着だけを羽織った状態の少女はかなり衰弱していて、レンマの胸元にしがみついて離さない。目を閉じたまま、何も言わない。ガタガタ震えている。
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