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参号
15P
しおりを挟むそのままレンマがチユニ達の元へと戻ると、すぐに伸ばされたチユニの手が少女の手に触れた。
他の月子達と同じように右手の甲に三日月に囲まれた“拾”の文様。1つ違うのは、その文様全体が掠れてしまっているということ。
名は体を表す。症状は弱っているから、文様もまた弱々しく掠れているのか。そんなことは誰にもわからない。
ただすぐに全員がわかったことがある。チユニの指先が手に触れた瞬間、少女はビクンッ!と過敏に反応し、更に怯えてガタガタ震える。彼女は――
「もしかして、目が見えない……?」
「せや。両方の目ん玉はないわ声帯もついてへんわで、見ることも声出すこともできんみたいなんや」
言葉を知らない少女は月子達と思念での会話をすることもかなわない。しかし、レンマに伝わったように強い想いをぶつけることはできるようだ。
少女の心からにじみ出る「怖い」という感情が渦巻きレンマにも、他の月子達にも伝わっていく。
ライトはチユニの肩に触れ、ヒロキは顔を反らし、サクマはジッと見つめ、ユラは悲しげに目を反らす。他の者は息をのんだ。
ユラは、自分に似ていると思ったのだろう。心の隅っこでホッとしたのかもしれない。自分よりも酷いと思ったのだろう。両目が見えない。しかもしゃべることができないのだから。
レンマは少女が卵の中で助けを求めているのに気づいた。彼女は溺れていた。
硬い卵の殻の内側で、元々弱くて非力な少女は自力で殻を割ることができず、溺れ死にかけていた。揺れていたのは、必死に割ろうとしていたのかもしれない。
同情以外の何物でない。いや、同情しない方がおかしいほどの不憫さ。
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