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参号
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しおりを挟む「いえ、変な言い方をしてしまった私も悪いですから。それで、もし立ち向かう勇気があるのなら、またうちのゲーセンに遊びに来てください。待ってますから」
「…………せやな、考えとくわ。次会う時は、弟さんのお墓参りに行かせてぇな?」
はにかみながらも彼女の手の上から左手を重ね、ブンブンと振る。怪力だから、彼女の肩が外れてしまいそうなくらい振りすぎだ。
月子で1番、正義感あふれるレンマ。自分の失敗から何年も立ち直れず、背中を向けていた彼に厳しくも温かい言葉をかけてくれた。
陰ながら、ずっと支えてくれていた。彼女だけではない。サクマもチユニも、ライトや他の月子達だってそうなのだ、本当は。
ただレンマが気づいていないだけ。彼女に再会できてよかったな。自分の闇と立ち向かう決心がつくまでまだもう少しだけ時間がかかりそうだが、彼ならもう大丈夫。
お互いの連絡先を交換し「またね」と、一旦の別れの挨拶を交わすと彼女は先に路地裏から出る。
そのまま帰るのかと思いきや彼女は去り際、振り返って満面の笑みで「私、恋人がいますから!」と手を振った。
失恋したわけでもないのに、レンマの背景で「ガーン」と大きく太いゴシック文字が見えそうだ。
彼女はまたあのゲーセンに戻っていった。レンマも、薄暗い路地裏から1歩踏み出して空を見上げた。
「帰ろ。帰って、主に謝らんとなぁ。ほんで、ミレイナの様子見に行かななぁ」
レンマはミレイナが待つ月子研究所へと足を踏み出す。体が軽い。心が、軽い。
そんな彼の様子を、離れたところで気配もなく退屈そうに眺めていた人物がいたことなど、レンマも誰も気づかなかっただろう。
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