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神楽とチユニ
4P
しおりを挟むカラスの記憶は映像が見えるだけで、音は全く聞こえない。そのため、カラスがすぐ近くにいる神楽と何か話をしていても何と言っているのかまではわからない。
カラスも神楽も、採取したミレイナの血液で彼女の怪我が治らない原因を調べている所だろう。
いたって真剣に作業に打ち込んでいる中、景色が少し暗くなりパソコンのキーボードを叩くカラスの手がピタリと止まった。
振り返ると白衣を身にまとった神楽が立っている。無表情で何か言っている。やがてニヤッと不気味に顔がゆがむと、鮮血が舞った。
グルリと映像が回りカラスが倒れると、目の前にドアップであの双子が映った。持っている2本の片ハサミが血で濡れている。
部屋にいた小カラスが飛んでくるが、それもすぐにバラバラに。それからは目を背けたくなるほどの残酷。赤と黒の乱舞。
何度も斬りつけられ、蹴られ、殴られ、たまに映る神楽は腕組みをして楽しそうに笑っていた。
「こんな……酷い、ことを…………神楽君、どうして。あれ?」
双子のリンチが終わり、カラスがまぶたを閉じたのか赤く染まっていた映像が真っ暗になって終わったかと思った。しかし、しばらくしてまぶたは再び開かれた。
場所は、やっぱり研究室。でも神楽も双子もいない。目の前に広がる血だまりと、小カラス達の残骸。それと、誰かの足が見える。
その人物はしゃがんだようで腰から下が見え、カラスがユラユラと顔を上げたようだ。彼――ライトの悲しげな顔が見えた。
手を差し伸べることはなく、うつむいて何か言っている。カラスが何か言ったのか目だけはこちらに向け、クスッと苦笑を漏らす。
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