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神楽とチユニ
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しおりを挟む「そうか、君にはわかるんだね。だからこんなにも――なんだ。不思議。君はまだ生まれて間もないのに、その手で皆に触れて知ってしまった。まるで、パズルを組み立てるみたいに」
「なんだか私だけ置いてきぼり?寂しいなぁ」
「……チユニさんは、そんなに近くにいたのに気づかなかったんだ。神楽さんの心の闇に。カァ子は彼を蹴落としたようなものだから、恨まれても仕方ないけど」
「心の闇?悩みがあれば話を聞いていたよ。ほとんど相談されたことはないけど、この前だって『老いは怖いね』って話をして、これからのことも――」
「これから先の未来、自分達は老いていつかは必ず死ぬ。その時、月子達はどうする?そんな話じゃなかった?」
カラスの睨むような真剣な瞳と、16歳の女の子とは思えない低く凄みのある声にチユニの体は震えた。
つい最近のことなのだ、カラスが口にした内容の話を神楽としたのは。チユニは41歳だし神楽は36歳だ。体の老いを実感し始める年齢。
パソコンや難しい機械とのにらめっこで近視になり眼鏡の世話になっていたのに、ある日近くが見えづらい。手元のキーボードがかすんで見える。あぁ、これが老眼か。
研究者にとっては恐ろしいことだろう。目だけではない。手足や脳の衰えもまた、目に見えて現れてくる。
そんな中で神楽は出会ったのだ、最初のmoon childと。人間の形をした、人間の言葉をしゃべる人間ではない何か。
本物の神様かどうかは置いておいて。特別な力を持ち不老不死である彼女が、絶望の淵にいた神楽には神々しい神に見えたのだ。
信仰し、崇拝する偶像。全てをゆだね縋る。命も人生も全部捧げてでも隣にいて守り抜きたい、そんな尊い存在。
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