ユキ・シオン

１人たす１匹は２人

１Ｐ

　世の中の生き物は人間と、人間以外の動物、植物がある。そしてほとんど知られていない、動物から人間へと変わる“擬人化種”というものも存在する。


　生まれた時は普通の動物なのに、成長途中で人間に変身する。タイミングは個体差があるが、その後完全な人間になるか完全な動物に戻るのかは本人の心次第。


　突然変異、奇病だという研究者もいる。国からの指示で、自発的に研究に協力している友好的な“擬人化種”もいるらしい。


　そりゃあそうだろう。急に人間になったり動物になったり、コントロールできないと色々と生活が大変だ。


　早く研究を進めて、自分の未来を自由に選べるようになりたい。そして何より“擬人化種”の存在を広め、世間に受け入れてもらって、人間も動物も“擬人化種”も共存できる世界になってほしい。


　けれど現実はそんなにキレイじゃない。個体数が少なく珍しい種類の“擬人化種”は高値で売れる。


　専門に狙い売買するハンター、捕まえて監禁して解剖したり飼い殺したりと狂った趣味を持つクソ人間だっているんだ。


　俺も、最近何度か捕まったことがある。そのたびに上手く逃げだしてやったけどな。俺を甘く見過ぎなんだよ、バーカ。


　そう、俺もそんな“擬人化種”の、白猫。


　野良猫だった俺の親兄弟とは嵐の夜にはぐれてしまい、当時子猫だったため２日経つともうフラフラ。道路の脇で座り込み弱々しく鳴いていた俺は、１人暮らしのおばあさんに拾われた。


　その時はまだただの白猫だったし、おばあさんもよくある捨て猫だと思ったんだろう。


　動物を飼うのは初めてだったのか、あれこれ試行錯誤しながらも俺を甲斐甲斐しく世話してくれたんだ。人間の、おばあさんの言葉はその時から何となく理解できた。