ユキ・シオン

那月

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ぬくもりのなかで

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 …………目の前に先生がいる。あれ、デジャヴ?いやでも、今回は近い。スッゲー近い。なにせ目の前、数センチの距離に先生の寝顔。


 超ドアップ。今気づいたけど、左目の下にほくろがある。鼻筋が通っていて綺麗な顔なのに、最低限に整えられてもいねぇ髭が全てを台無しにする。


 え、寝顔?先生寝てんの?俺の隣で、しかも先生の両腕が俺の体をガッチリホールドしてんだけど?というかここ、先生のベッドか。俺、また先生に助けられたんだな。って、冷静だな俺。


 うーん。やばい。顔が熱くなってきた。俺、先生のベッドの中で先生に抱きしめられてんだって、意識したら心臓が爆発寸前。


 だめだ、もう我慢できない。俺は大きく息を吸いこみ、口を開く。


「や、やめろ、朝から俺を殺さないでくれ。この距離だと鼓膜が破壊される。おはよ、シオン」


 瞬間、パシッと口が塞がれた。どうやら起きていたらしい先生の、大きな手の平が俺の口を覆う。目を開いた先生は苦笑し、「危なかったぁ」と手を離す。


「寒くない?死人レベルで体が冷たかったし、こうしてずっと抱きしめていれば俺の熱で温まると思ったんだけど…………シオン?」


 気が付いたら俺、離された手をパシッと両手でつかんでいた。


 言葉を止めた先生が「もしかして、また声が出ない?」と心配そうにもう片方の手で俺の頬を撫でる。おい、叫んでほしいのか?無意識か?


 そんなことをされたら俺の心拍数が急激に上がりまくって、冷静じゃいられなくなる。口を開けば確実に先生を殺してしまう、先生の鼓膜を殺す。


 叫び声が武器の殺人兵器になっちまうぞ。だから俺、伝えたい想いを全部、態度で示す。


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