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ネコタチ
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しおりを挟む「しっかし、すっかり綺麗になったなぁ。ドクトル、そんなに腹が減っていたのか?」
「吾輩もお稲荷さんが食べたかった、かも。まだまだ食べ足りないよう。足りない足りない。子猫ちゃん、吾輩を助けてくれるよねぇ、たぶん?麗しい子猫ちゃんの若い血を恵んでくれたら吾輩、ほんの少しでお腹いっぱいに――」
「ドクトル。この俺の前でよくそんなことが言えるなぁ?そんな顔をしてもだめだから。俺達に限らず、人のもんに手を出すんじゃないよ」
「ネコヤン、変わっちゃったねぇ、たぶん。昔はこんなに格好良くなかったのに、たぶん。愛を知ってから人って変わるのね、かも。あぁ、道に迷って、危うくあの場所で(ピー)されかけて泣き叫んでいた20代のお前さんがねぇ……」
「む、昔の話だろっ!もう忘れてくれよ、黒歴史だ……」
あの場所って、ドクトルが個人的に嬉しいあの場所か。何があったのか、あえて聞かないでおいてやるからな。だから泣くなよ悠一。
さすがというか、香さん用に作っていた128個のいなり寿司はゴマの粒1粒も残っていない。手巻き寿司の具材も酢飯も、香さんと店長が持ってきてくれたのも空っぽ。
さながら、残飯処理係のドクトル。あんまり食べられなかったのか腹を摩り、俺に熱い視線を向けてくる。
いくらド変態で異常な、嫌われ者のドクトルでもこのまま帰すのはかわいそう。お人好しなんだよ、俺は。
だから俺、冷蔵庫の中を思い出して何か作ってやろうと思う。どうせもうお開きになるだろうし、簡単なもので。
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