ユキ・シオン

初めての

１０Ｐ

　後半は力が抜けて、声もいつもの声に戻って笑っていた。そのセリフに、今度は俺が硬直したんだけどな。


　待てよ。「今まで味わったことのない痛みに襲われて泣き叫ぶ」ような検査って、どんな検査だ！？恐怖でしかねぇんだけど！


　え、待って待って！悠一が渋々「わかった」なんて言ったから、ドクトルが手を離して検診は続行。グルグル回っている変な機械なんかがある部屋に通されて、机の前にある椅子に座らされる。


「右腕を出して、袖を肘の上までまくって。親指を内側に入れてグッと手を握って。そうそう、そのままね……」


　一体何をするんだ？悠一を見上げても、顔を背けられる。まだ不機嫌なのかよ。せめて俺の手くらい握ってくれよ、マジで怖いんだから。


　机の上には小さい台みたいなのがあって、その上に右腕を乗せるとドクトルが肘の上をゴムできつく縛った。


　肘の裏側？アルコールを染み込ませた脱脂綿で拭いて、拭いたところを指で撫でる。何かを探している？え？え？何をするんですか？


　やがてドクトルは「みっけた」と呟いて、注射器を取り出した。


　医者の、真剣な顔。が、一瞬にして崩壊。何かを「みっけた」ドクトルはニヤァと笑って、ドエス降臨。取り出した注射器の針をわざと俺の方に向けてチラつかせる。


　ゾッとする。そ、それ、もしかしてそこに刺すのか？ブスッ！て、俺の腕に刺すのか！？


「えっ！！？」


「大丈夫、痛くしないから。…………たぶん」


　間があった！？注射するのか？けど注射器は空だし。あぁそうか、俺の血を抜いて血の検査をするのか。いやでも！痛いよなっ！？


　ゆ、悠一……あぁだめだ、顔を全力で背け…………ん？これってもしかして。俺を見てないんじゃなくて。