ユキ・シオン

那月

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ハッピーバースデー

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 どこかの高級ホテルのようなロビーにおっかなびっくりのシオンが俺の腕にしがみつき、「大丈夫だ」と頭を撫でてやろうと思ったら、あいつが気づいて近づいてきた。


 おい、俺のシオンをクソガキ呼ばわりするんじゃない。お前、緋桜と同い年じゃないか。俺にとっては十分、お前がクソガキだぞ。


「初対面で怖がらせるのはお前の得意技か、高宮?久しぶりだな。こいつ、俺の恋人のシオン。和服を着たことがないからって連れてきたんだ。お前ならこいつに似合う最高の和服、見立てられるだろう?」


 ほとんど人見知りをしないシオンが、高宮に怯えて1歩下がった。けれど真面目なので、「初めまして」とペコッと頭は下げる。


 タカミヤコーポレーションの社長、高宮正宗。いつでもどこでも誰にでも上から目線でナルシスト、俺様気質。


 千川原のように長い髪はグレーで、海を連想させるような深い青の瞳と同じ色の着物を着ている。生まれてこの方、和服以外を着たことがないとか。


 タカミヤコーポレーションは高宮家の長男が代々社長を引き継ぐ。そのため小さい頃から呉服に関する英才教育やしつけが大変厳しく、けれど呉服のためだけの人生を歩んできたというだけあって立ち居振る舞いは美しい。


 しゃべらなければ、完璧。しゃべったら、台無し。


「当たり前だ、俺様を誰だと思っている?まったく、十数年ぶりに顔を出したかと思えば恋人だと?カースト2位の貴様がノロケなんてな」


「お前も早く本命を作りなよ。シオンは新入りなんだ、お手柔らかに。シオン、色とか柄とか好きなものを――」


「黙れ。俺様が見立ててやるんだ、色も柄も生地も全て俺様が決める。検診は済んでいるな?なら寸法は香さんにでも聞く。出来上がったら電話を入れる。以上、帰れ」


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