ユキ・シオン

那月

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「ニャー」


 俺は男の問いかけに返事をして、「ニャー」とだけしか言えねぇもどかしさに軽く前足を噛んだ。


 もしも俺も人間の言葉がわかるんだって、ただの白猫じゃないって、本当は擬人化種だって知ったら。あんた、どうする?


「…………そうか」


 今のもわかったのか?本物だな。


「お前もさ、俺の言ってること、わかってるだろ?そういう個体なのか、それとも長い間人間と一緒にいてわかるようになったのかはわからないけどさ」


 ビクッ!ヤバい。返事をするよりもあからさまな反応、しちまった。


 見てる見てる見てる見てる見てる、ぜっっっっったいにこっち見てるっ!うぅぅぅ、顔を上げられねぇ。寝たフリを決め込むか?


「……寝たフリしたって無駄だぞ。俺にはわかるって言っただろ?」


 マジっすか。逃げ場ねぇじゃん。どうする、俺?もう食べ終わったのか、食器の音も聞こえねぇし。


 聞こえるのは、ドッドッドッドッ!と大音量で鳴り響く自分の心臓の音。確実に、密着している男の足にも伝わってんだろうな。


 ヤバい、変な汗が出てきた。冷や汗?とりあえず返事をしてみて、“人間の言葉がわかる猫”で留まらせておけばいいか。


 この男は俺のことがわかるとはいえ、まだ、俺が“擬人化種”だとはわかってないみたいだしな。


「ニャー……ニャッ!?」


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