ユキ・シオン

那月

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譲渡会

11P

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「――なんか。殺処分寸前だったのに譲渡会に出てみたら新しい家族に引き渡された、って感じだなぁ」


「家族っ!?」


 道中、悠一が中心になって擬人化種について直也に説明していたらあっという間に我が家に着いた。


 で、車を降り緊張した様子で家の中に足を踏み入れた直也。小さく「お邪魔します」って呟いて、リビングに入るとキョロキョロ。


 少ししかない私物を胸に抱いて、思ってもみなかった爆弾発言。俺と悠一も驚いたけどさ。1番は、言った本人が「えっ?」と驚くっていう。


「保護観察だ。悪いが、どうしてもお前は家族のようには見えないし扱えねぇ。シオンの親友が異例の長期間、ホームステイするって考えてる」


「すっげぇ嬉しかったけどさ、俺も、直也は家族って言うより親友だな。これからよろしく」


 まずはその荷物を置くためにも、直也が使う客間へと案内する。途中で通る風呂場とトイレを教えればより一層、譲渡会で引き取った猫?犬?しつけみたい。


 六畳の和室。押し入れに布団があって、壁際に座卓が1つあるくらい。部屋を壊したり汚したりしなけりゃ好きに使っていいから。


 そう声をかけると直也はカーテンを半分閉めて「はぁ」と溜め息を吐きながら、暗い壁際に腰を下ろした。


「先生さぁ、僕が市長さんにいじめられてるからって同情して引き取ってくれた感じなんでしょ?そういうのいいから。僕はそれ相応のことをしたから罰を受けた、反省もしている。僕は家族なしで生きていく。1人でいい」


 直也が刑務所で過ごしている間、香さんから虐げられていたというのは香さんからの報告と直也の様子でわかった。


 出所後、香さんのもとで保護観察期間を過ごすのは危険だ。だから悠一は引き取った。それを、直也は気づいた。


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