ユキ・シオン

轟木直也

２P

　やっと直也が心を開いてくれた、そう思った矢先だったのに。俺がまた直也を傷つけちまったから。


　それがきっかけで、俺と悠一が幸せに暮らす家に同居するのが完全に嫌になった。というより、完全に無理になった。限界、なのかもな。


　けど、もう安心していいぜ。俺達の幸せに当てられて心を痛めることも、肩身の狭い思いもしなくていい。直也は、俺と悠一の家には帰らない。


「なぁ直也。前にさ、俺に新しい人間の友達ができたって話しただろ？１７歳で作家の、引きこもりの男。直也は今日から、そいつの家に居候するようになった」


「はぁっ！？何それ、また勝手に決めちゃったの？人間とも動物ともつかない擬人化種が、罪を犯したってだけで人間を好き勝手にしていいと思ってるわけ？言ったよね？僕がこの街から出て行けば、２度と姿を現さなきゃいいだけの話だって。そうすれば僕もシオン君も先生も都合がいいんだってさぁ？」


　直也が怒るのはわかっていた。今日から直也は笑也の家で暮らす。笑也にも話して、承諾してもらっている。


　本人達はまだ顔を合わせたこともないけどさ、同じ人間だし歳も近い。笑也はあの大きな家にずっと１人で暮らしていて、掃除とかも大変だって言っていたし。


　ただし、笑也が言った。「いいですけど。あくまで俺の家を貸すだけ、俺が大家で轟木さんが住人。お互いのプライベートには干渉し合わないのが条件つき」と。


　そんなことを言われるとは思ってなかった。笑也とは親しくなったけど、正直、知らないことの方が圧倒的に多い。