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轟木直也
6P
しおりを挟む俺は俺の口を塞いでいた直也の手の平に、容赦なく噛みついた。
普段より長く伸びた犬歯が突き刺さり、離れると傷口から血があふれ出る。思わずもう片方の手で押さえて、睨みつけてくる直也。表情が、こわばった。
変わったのは犬歯だけじゃねぇ。飛び退いた直也の拘束がなくなって起き上がった俺の背中から、白い尻尾が現れる。頭の上には耳もあるぜ。
直也の俺への想いはわかった。でも全てじゃねぇ。俺は直也じゃねぇからな。同情もするが、だからって全てを好きなようにはさせねぇ。怒る時は、しっかり怒る。
「言っとくけど、笑也はもっとおっかねぇからな。キレたらすんげぇ蹴り技繰り出すんだ。少々クセはあるけどさ、根は優しいやつ……だと思うから」
「何、今の絶妙な間は。優しいの確定じゃないんだ?…………はぁ。あーーーーーーーーーーもう、萎えちゃった。疲れた。全部、疲れた。でもなんか、シオン君にここまでしっかり拒絶されてやっと、スッキリしたって感じがするよ」
血が止まるように心臓より上、押さえたままの手を上げて、壁にもたれかかる直也。
自分の血と、俺の液で汚れた手を舐めようとしてやめた。ティッシュの箱を差し出すと、苦笑をこぼして拭く。あとでソランさんに手当てしてもらうからな。
俺は謝らないし、手当てもしねぇ。直也も、謝らない。これでいいんだって思う。
「それにしても、さぁ。その姿のシオン君も、やっぱり綺麗だよねぇ。耳とかフワフワだし、内側はピンクで可愛いしぃ?」
いきなり何を言い出すかと思ったら、声が大きい。わざと、扉の向こうにいる悠一に聞こえるようにしてんだな。
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