ユキ・シオン

初めまして、人間です

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　聞けば、月野木さんは笑也が作る晩飯を目当てに夜の打ち合わせに来ていて、３人で一緒に晩飯を食ったらしい。よく逃げなかったな、直也。すげぇ。


　月野木さんは擬人化種の存在すら知らない、ただの人間だ。それは先に笑也から聞いていたか。


　とりあえず直也は、笑也の遠い親戚として自己紹介を交わしたらしい。すぐには信じてもらえなかった。やっぱりというか、恋人と思われたんだとか。


　必死に誤解を解こうとする直也をからかって、誤解のままに恋人っぽくしてそうな笑也。でもその時だけは、はっきりと「違いますよ。俺は恋人を作らないって言ったでしょ」と、冷たく吐き捨てたんだってよ。


　無表情で、あまりにも冷めていたから。さすがの月野木さんもその一言で信じた。


『……ねぇ。あいつって、何かワケアリなわけ？』


「いや、そこは俺達もわかんねぇ。悪いな。けど、悪いやつじゃねぇんだ。お互いにプライベートには干渉し合わねぇんだろ？ただのシェアハウスなら大丈夫だろ」


『ふぅん…………君がそう言うんなら、信じているんなら、いいけど』


　直也も、笑也はたまに違和感を感じるのか。自分だけがからかわれているとは思ってねぇみたいだけどな。まぁ、なんとかなるだろ。


　まだ初日。お互いに、様子見。笑也は今は仕事中で、明日の朝まで部屋から出てこないんだとか。


　笑也の仕事モードの集中力はすげぇからな。何の音も聞こえねぇ、時間の感覚も麻痺して空腹感もトイレに行きたいのもわからなくなるらしい。


　なら、直也はフリーだ。部屋でのんびりするのも良し、家の中を散策するのも良し。初日の今日はとりあえず俺に文句を言いたかったと。