ユキ・シオン

それぞれの暮らし

３P

「オシャレは表向き。渋いのが本当の直也なんだよ。俺も最初はビックリしたぜ。笑也は確か、好き嫌いってなかったよな？」


「俺？肉が好きだな。肉肉しい肉。けど野菜も食うし、魚もたまに食う。んー……そうだな、嫌いなものはな――あ、納豆は嫌いだ。食ったやつに近づくのも無理だな」


　晩御飯にと、直也が大学の帰りにコンビニでおにぎりを買ってきたのを見たらしい。高菜と、焼きシャケと、昆布。それにカップのシジミ汁。


　見た目と年齢に似合わない。まぁ、人の好みだから文句は言わねぇけどさ。笑也も、驚きのあまり２度見したらしい。


　目が合って、何もなかったって言うけどさ。絶対、何かあったんだろうな。自分で作った焼きそばを食っていた笑也が、本当は渋い好みの直也をからかわずにいられるとは思えねぇ。


　その証拠に笑也、声は平然としているけどさ。口元、ニヤついてんぜ。


　笑也が納豆が嫌いなのは新しい発見だな。匂いすら嫌なのか。でも確か、直也も納豆は嫌いだったはず。というか、ネバネバ系が苦手か。


「――本日の青年、異常なし、たぶん。若々しい血はいいねぇ。あでっ！わ、わかってるから叩かないでよもぉー……じゃあネコヤン、こっちに来て来て」


　話が終わったのか、検査室に着いて悠一がドクトルに引っ張って行かれた。って！直也の手首から血が出てねぇか！？


　ドクトルが上機嫌で舌なめずりをしていたあたり、吸血で診断したのかよ。吸血後、ドクトルが舐めると傷は塞がるけどさ。すぐにわかるけどさ、普通の採血でいいだろ。


　ドクトルの頭の上にタンコブが乗っかっているあたり、ソランさんの目を盗んでやったな。公私混同すんな。職権乱用だ。