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それぞれの暮らし
4P
しおりを挟む直也が検査室の壁にいる。その反対側の壁に悠一が立たされて、直也が悠一を直視。
前は、これくらいなら平気だったよな。そんで、時間が経つとジワジワ直也の様子がおかしくなって、まるで発情したみたいになった。
悠一が椅子に座り、直也が少しずつ近づく。まだ大丈夫。まだ……もう少し進んでみる。まだ、大丈夫。もう少し……っていう感じで、本当に少しずつジリジリ。
「ネコヤンは絶対、動いちゃダメだからね、たぶん。青年も、我慢しないで、少しでも変になったら言うように」
あ、1歩下がった。
「ふぅ……はぁ…………うん、大丈夫です。まだ行けます」
目を閉じて、鼻から大きく息を吸って。一旦止めてからゆっくり、口から細く長く息を吐く。そうすると心が落ち着くんだって、前にドクトルに教えてもらったんだってさ。
今までも直也はその呼吸法を実践してきた。実践せざるを得なかった時が多々、あったんだなぁ。遠い目をしてみる。
うちにいた時、特に夜だろうなぁとか考えていたら。悠一の「すごいな」って声が聞こえてハッと顔を上げた。
悠一の目の前に、直也が立っている。ただ、ちょっと歯を食いしばっているな。耳も赤いし、まだ魅了の力の影響は出ている。
そのまま、手を伸ばした。待て、どこに触れるつもりなんだよ?と、ちょっとジェラシー。
「あ。ちょっと……ここまで、かなぁ。っ……はぁ、はぁ……熱い。たぶん、これで触れてしまったら正直…………抱きついてしまいそうな。ものすっごく不可抗力だけど、さぁ」
悠一に触れる前に、手が止まった。こめかみに青筋が浮かんで、汗も流れている。抱きつきたい衝動を我慢してんだな。もちろん、抱きついた瞬間飛びついて引き剥がしてやるから。
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