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それぞれの暮らし
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しおりを挟むうちで暮らしていたら免疫ができると思ったんだけどな、そう簡単にはいかねぇか。
「なぁ笑也。どうして会ったこともない年上の、それもムショ出たばっかの男と一緒に住むの承諾してくれたんだよ?普通なら怖いからとか、住むのはさすがにってなるだろ?」
出入り口のドア付近で直也と悠一のやり取りを退屈そうに眺めていた。あ、いや…………これは。眺めているようで、小説のことを考えてんな。視線が動かねぇ。
反応がなかったからそばに寄って「おい」って声をかけてやっと、漆黒の瞳がこっちを向いた。
これは聞いてなかったな。そう思ってもう1度、さっきと同じことを言おうとしたら漆黒が反らされた。向いた先は、楽しそうに笑う直也。おい、悠一で遊ぶなよ。
「別に。断るのが普通って言っても、俺は普通じゃないんで。うちに少しの間でも住んでいたシオンさんならわかるでしょ?俺んち、俺だけが住むには広すぎるからさ。空き部屋を使ってもらった方が楽ってわけ、それだけ」
本当にそれだけ、なのか?
俺は「そうか」としか答えることができなかった。笑也が悪いことを企むようなやつじゃねぇってことは、わかってんだけどさ。
どうしても気になってしまう。モヤモヤするじゃんかよ。モヤモヤしたまま悠一と直也に目を向ければ、直也が鼻高々に何か自慢してんな。悠一も苦笑して、楽しそうだな。
「……強いて言えば。誰かが俺の家で一緒に暮らすっていうのが、割と楽しかったというか。仕事的にもちょっと余裕ができたし、話を聞いた限りでは何の問題もなかったし」
「1人であんな大きな家で暮らすのは寂しいだろ。いや、でもお前。仕事に余裕なんてねぇだろ?漫画化とアニメ化だっけか?大忙しじゃねぇか」
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