ユキ・シオン

それぞれの暮らし

１５P

「そうか。若干、イラッとした部分はあったな。青春真っ盛りなのにもったいない気もするが、笑也がそう決めているんならそうなんだろうな」


「笑也にとっては自分の恋愛も生活もどうでもよくて、小説を書くことが全てなんだろうな。小説さえ書き続けられれば、って」


「それで人気が出て収入もあるんだから、生まれ持った才能だな。スランプになったことがないだって？そりゃあすごいな。俺も読んでいるが、確かに面白い。近々、別の作品も読んでみようかと思っていたところだ」


　あ、そうだった。悠一は”えみやん”の小説を読んでいるんだった。ＢＬ１８禁なのに。オッサンが読んでるってのが意外過ぎるっつーか。


　小説の話をすればまた悠一がネタバレしそうになったし。わき腹をつねってやって、悶絶しながらどさくさ紛れにギューッと抱きしめてくる。


　……まさかとは思ったが、そういうわけじゃねぇな。


「何か、ホッとしたな。ようやく全ての、俺達が抱えていた問題が解決されたって感じがする。俺の力に対する薬もできたし、シオンの力も最強だってわかったしな」


　なんだ、ただ甘えているだけか。俺の胸元に頭や顔を擦り付けて、耳と尻尾が出てんだけど、起ってはいない。


　オレンジっぽい茶色のボサボサ髪を撫でながら「そうだな」と呟く。本当に、その通りだ。この１年、いろんなことが起こりすぎた。


　でもそのどれもが、結果、良い方に落ち着いて。一気に友達も増えたし、こうして最愛の人と一緒に暮らし愛し合えているんだからな。


　今日のことといい、安心したらドッと疲れた。悠一にもたれかかって、目を閉じる。