【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏灯みかん

文字の大きさ
146 / 217
6.元聖女は魔法都市でエルフに会いました。

第145話

しおりを挟む
 明日の朝には魔法都市に向かって出発予定です……!
 ということで、私は荷物をまとめています。
 この街にはまた戻ってくるつもりですが、女将さんは私の部屋をそのまま残しておいてくれていて、必要なものは置いておいていいよって言ってくれました。ありがたいです。

 荷物がまとまったら、夜は教会でナターシャさんたち家族とご飯を食べます。

「お姉ちゃん、もどってきたんだ!」

「ひさしぶり!」

 ステファンとライガと教会に行くと、扉を開けた瞬間、ふわふわした耳を揺らして子どもたちが飛び出してきました。

「わぁぁ、お久しぶりです……!」

 頬を最大限に緩ませて挨拶すると、小さい子たちの後ろから、ノアくん、マナちゃん、ガイくんが現れました。マナちゃんは、私があげた服を着てくれてて、髪の毛も前にやってあげたみたいに編み込んでくれてました。

「レイラ、何だよ、家出なんかして。ガキかよ」

 ノアくんは口を尖らせてそう言いました。
 ――家出というわけじゃ、なかったんですけどね……。
 私はぺこっと頭を下げた。

「ノアくんにも、心配かけてごめんなさい」

 ノアくんはぼそっと「……心配した!」と言うと、背中に回していた手を前に出して、私に何か押しつけました。

「ん!」

「わぁ。なんですか? これ?」

「王都の土産! ばたばたして渡せてなかった!」

 小さい袋を開けると、キラキラした髪留めが入っていました。
 ——『土産買ってきてやる』とは言っていましたけど、あんなことがあったのにきちんと買ってきてくれていたんですね。
 髪留めがかわいいのはもちろんだけど、そのことが嬉しかった。

「わぁ、かわいいですね! ありがとうございます!」

 そう言うとノアくんは、「じゃあ飯の支度手伝ってくる」とぴゅーっとキッチンのテオドールさんのところに行ってしまいました。ノアくんは良い子ですよねえ。

「ほら、みんなご飯にしますから席について。ライガ、シチュー作りましたからね」

 手をパンパンと叩きながらテオドールさんがみんなに呼びかけて、私たちは席につきました。

「ナターシャはまだか?」

 ライガが席を見渡して聞く。そういえばナターシャさんはまだ帰ってきてませんね。

「ギルドが忙しいですからね。そろそろ戻ってくると思いますけど」

 「先に食べてましょうか」とテオドールさんが言ったところで、ガチャっと扉が開いて、「ただいま」とナターシャさんの声がした。

「待たせて悪かったね」

「いえいえ、お疲れ様です」

 私たちは「いただきます」と手を合わせてから夕食を食べ始めた。

「レイラたちは、明日発つんですよね?」
 
 テオドールさんの問いに頷くと、ノアくんは顔をしかめた。

「またどっか行くのか? せっかく戻って来たのに」

「――ごめんなさい、ちょっと魔法都市まで行ってくるんです」

 そう答えると、ノアくんは表情を一転、輝かせて前のめりになった。

「魔法都市って、あの海向こうの? 魔法使いがいっぱいいるんだよな! いいな!」

「いいだろ。船に乗って行くんだぜ。ノア、お前は船は乗ったことねぇだろ。揺れて気持ち悪いんだ」

「ライガは乗り物、苦手だよな」

「地面がないってのが、特に気持ち悪いんだぜ……」

 わいわいしながらご飯を食べていると、時間が過ぎるのがあっという間です。

「じゃあ、ノアたちは小さい子たちに歯磨きさせて、寝る準備させてください」
 
 食べ終わると、テオドールさんはノアくんたち年長のお子さん3人にそう言った。
 私たちは食器の片づけなんかを手伝う。

 子どもたちが寝室の方に行くと、ナターシャさんがテオドールさんの肩をたたいた。

「テオ、ちょっと話聞いて。今日、サミュエルから話があってさ」

「――はい」

 テオドールさんは手を止めて、ナターシャさんに向き直る。

「今回王都の冒険者ギルド所長のグレンダがレイヴィスの件で解任されただろ、だからアタシを王都ギルドの所長に推薦したいって……。アンタには王都の教会の仕事を紹介してくれるって言ってるんだけど……」

「そうなんですか。――君は、話を受けるつもりですか?」

「受けたい、とは思ってる」

 テオドールさんはにっこり笑った。

「――君がそうしたいなら、私はもちろん、ついていきますよ」

 ナターシャさんは「ありがと」と呟いてから、黙った。

「――何か、気になることが?」

「ノアを、この街に置いてくことになるだろ? 親方のとこの修行を終わらせて連れてくわけにも行かないよね。それで、いいかな。——大丈夫かな」

「――本人にどうしたいか、聞きましょう。あの子はもう、自分の判断で決めますよ」

 テオドールさんは微笑んでナターシャさんの金色の髪をくしゃっとすると、奥の部屋からノアくんを呼び出した。

「片付け、僕らがやっておきますからね!」

ステファンがすかさず声をかけて、私たちは片付けに専念する。
その横でナターシャさんたち家族はテーブルに腰掛けて向かい合った。

「ノア、お母さんに王都の冒険者ギルドの所長にならないかっていう話が来ています。私たちは、みんなお母さんについて王都に行きますが、ノアはどうしますか? この街で親方さんのところで修行を続けますか? ついてきますか?」
 
 テオドールさんは単刀直入に聞いた。

「俺は街に残る。親方にはすごい世話になってるし、まだいろいろ勉強させてもらいたいし」

 ノアくんは力強く頷いた。
 ナターシャさんはそんな彼をじっと見つめて聞いた。

「……将来、冒険者になりたいって言ってたけど、大工の修行は続ける気?」

「16になったら冒険者登録はしたい。でも、大工も続ける。どっちも頑張る」

「――そう、それならいいんだ」

 ナターシャさんは笑うと、ノアくんの肩を叩いた。

 ノアくん……しっかりしててすごいなあ。
 将来は大工さん兼業冒険者ですかね!

 ***

 翌日、私たちは荷物を担いで関所に向かった。
 このまま港町ルシドドから船に乗って魔法都市に向かうみたい。
 門のところにはナターシャさんやテオドールさん、リルさんが見送りに来てくれた。

「チャイとクロをお願いします……」

「はい、任せておいてください」

 私は馬の背中を撫でると、手綱をテオドールさんに渡した。
 船に乗るから馬は連れていけないみたい……。

「戻ってくる頃には、ナターシャさんたちはもう王都の方ですかね」

 ステファンの言葉にナターシャさんは耳を掻いた。

「そうだね。――忙しくなるかもしれないから、戻ってきたら王都ギルドに来てくれると嬉しいよ。アンタたち、頼りになるから」
 
 リルさんが「うふふ」と笑った。

「――あら、じゃあ私も王都ギルドに異動願い出そうかしら……」

 私はみんなに向かってお辞儀をした。

「本当にいろいろお世話になりました」

「いいって、気をつけて行って、戻ってきなね」

 ナターシャさんが私に目線を合わせて、頭をぽんぽんと叩いた。

「はい、行ってきます!」

 私は手を振ってリュックを担ぎ直して、ステファンとライガと一緒に門を出た。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

処理中です...