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6.元聖女は魔法都市でエルフに会いました。
第156話
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「な……」
エドラヒルさんは紫の瞳を大きく広げた。
「お父さんのことを知りたいですし、行くつもりなんです」
「行ったら大騒ぎになるぞ? 幽閉と言ったのは大げさではない。閉じ込められてずっと花ばっかり食わせられるぞ」
花ばっかり……。
「それは嫌ですけれど……、そうならないように、ステファンが協力してくれるって言ってくれましたし」
「あの狼じゃない方の人間か。どうするつもりだ。一介の冒険者に何ができる?」
「――ステファンのお父さんが、アスガルドの辺境伯さんなんだそうです。お父さんを通じて、エルフにお話の場を作ってもらえるよう相談してくれるって……」
そこまで話したところで、私はエドラヒルさんが目の色を変えたことに気付いた。
「“鬼殺し”のアスガルド辺境伯があいつの父親なのか?」
「……お知り合いですか?」
「――いや、奥方をよく知っている。元々魔術師ギルドにいた優秀な魔法使いだった。通りで、似ているわけだ」
エドラヒルさんは深く息を吐くと、話を続けた。
「アスガルドのマーゼンス辺境伯は、辺境民を喰らって増えた鬼を駆逐し、アスガルドの領地を取り戻した男だ。辺境に増えた鬼はエルフにとっても邪魔な存在だから、それを滅ぼしてくれた辺境伯が申し出るなら、確かにエルフ側も話を聞くかもしれないな」
私はぐっと手を握った。
エルフのエドラヒルさんがそう言うなら、ステファンのお父さんに力を貸してもらえれば、エルフの里の人たちとお話しできるんじゃないですか?
「――――しかし、お前は、その父親らしきエルフのことを聞いてどうすつもりだ? 推測ではあるが、お前の母親が魔族であるならば、お前の父親は魔族と繋がった罪で幽閉されていると思うぞ」
「それなら、おかしいって言います。お父さんを出してあげてくださいって」
自分でも無意識のうちに声が大きくなってしまった。
「何で私のお母さんが魔族だったら、お父さんは捕まらないといけないんですか? それって悪いことなんですか? 思い出したんです、私。お父さんは、とっても私のことを大事にしてくれてたって。私はちゃんと、大切に思われてたって」
まくし立ててるうちに、言いたいことがまとまらなくなってきて、ぼろぼろ涙が溢れてきた。
「なんで、そんな魔族だからとかで、ひどいことされなきゃいけないんですか。だって何もしてないのに、お父さん連れて行かれちゃって、私だけ置いてけぼりで、キアーラに連れて行かれて、寂しかったし、耳なくなっちゃうし」
「……落ち着け、とりあえず……」
エドラヒルさんは困り果てたように、わたわたと手を動かした。
私は目を手でごしごしこすると、エドラヒルさんに言った。
「だから、言います。お父さん返してって」
「そう、――そうか」
それからはっとして、頭を下げた。
別にエドラヒルさんがお父さん連れてったわけじゃないのに、感情的になってしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「……すいません、エドラヒルさんに、こんなこと言っても仕方ないんですけど」
「……いや……いいんだ、エルフとして申し訳ないとは、思う」
それから自分の花壇を指さして言った。
「そ、そうだ。欲しい花があれば、どれでもやろう」
「……いえ、ありがとうございます。でも、せっかく育てているものをあんまりいただくのも、悪いですから」
「いくらでも咲かせられるから、遠慮しなくてもいいぞ」
「そうなんですか?」
「ああ。見ていろ」
エドラヒルさんは、花壇横の物置棚の引き出しから何か出してくると手にのせて私の方に差し出した。覗き込むと、それは、小さい黒粒……花の種のようなもので、そこからにょきにょきと緑の芽が伸びて、あっという間にぽぽぽぽんっと白い花が咲いた。
「わぁ!」と歓声を上げると、エドラヒルさんは満足そうに笑って、咲いた花を私の両手に押し付けた。
「持って行け。また花が欲しければ、私のところに来い」
「ありがとうございます!」
嬉しいけど、どうしようかなぁ。オリヴァーさんのお宅の借りている部屋に飾りますか。
そこで、私はもともとエドラヒルさんのところに来た目的を思い出した。
「そうだ。オリヴァーさんが今日も夕食を私たちにご馳走してくれるそうなんです。それで、エドラヒルさんも一緒にどうですかって、私聞きにきたんです」
「いや、私は……」
「ご飯、みんなで食べたほうが美味しくないですか? エドラヒルさん、それ食べてるとき、あんまり美味しそうじゃなかったから……」
私はちらりとテーブルの上のお皿を見た。
「……」
「良かったら一緒に食べましょうよ。あの熱くなったり冷たくなったりする魔法草のソース、エドラヒルさんが考えたんですよね。今まで食べたことない味で面白かったです! あれ、他のもあるんですか?」
「……びりっと痺れる雷属性のソースも作ったが却下されたな」
「そうなんですか! それもちょっと食べてみたいですね……」
エドラヒルさんはため息を吐いてから、ふっと笑って答えた。
「じゃあ、夕食までに作って持って行ってやろう」
エドラヒルさんは紫の瞳を大きく広げた。
「お父さんのことを知りたいですし、行くつもりなんです」
「行ったら大騒ぎになるぞ? 幽閉と言ったのは大げさではない。閉じ込められてずっと花ばっかり食わせられるぞ」
花ばっかり……。
「それは嫌ですけれど……、そうならないように、ステファンが協力してくれるって言ってくれましたし」
「あの狼じゃない方の人間か。どうするつもりだ。一介の冒険者に何ができる?」
「――ステファンのお父さんが、アスガルドの辺境伯さんなんだそうです。お父さんを通じて、エルフにお話の場を作ってもらえるよう相談してくれるって……」
そこまで話したところで、私はエドラヒルさんが目の色を変えたことに気付いた。
「“鬼殺し”のアスガルド辺境伯があいつの父親なのか?」
「……お知り合いですか?」
「――いや、奥方をよく知っている。元々魔術師ギルドにいた優秀な魔法使いだった。通りで、似ているわけだ」
エドラヒルさんは深く息を吐くと、話を続けた。
「アスガルドのマーゼンス辺境伯は、辺境民を喰らって増えた鬼を駆逐し、アスガルドの領地を取り戻した男だ。辺境に増えた鬼はエルフにとっても邪魔な存在だから、それを滅ぼしてくれた辺境伯が申し出るなら、確かにエルフ側も話を聞くかもしれないな」
私はぐっと手を握った。
エルフのエドラヒルさんがそう言うなら、ステファンのお父さんに力を貸してもらえれば、エルフの里の人たちとお話しできるんじゃないですか?
「――――しかし、お前は、その父親らしきエルフのことを聞いてどうすつもりだ? 推測ではあるが、お前の母親が魔族であるならば、お前の父親は魔族と繋がった罪で幽閉されていると思うぞ」
「それなら、おかしいって言います。お父さんを出してあげてくださいって」
自分でも無意識のうちに声が大きくなってしまった。
「何で私のお母さんが魔族だったら、お父さんは捕まらないといけないんですか? それって悪いことなんですか? 思い出したんです、私。お父さんは、とっても私のことを大事にしてくれてたって。私はちゃんと、大切に思われてたって」
まくし立ててるうちに、言いたいことがまとまらなくなってきて、ぼろぼろ涙が溢れてきた。
「なんで、そんな魔族だからとかで、ひどいことされなきゃいけないんですか。だって何もしてないのに、お父さん連れて行かれちゃって、私だけ置いてけぼりで、キアーラに連れて行かれて、寂しかったし、耳なくなっちゃうし」
「……落ち着け、とりあえず……」
エドラヒルさんは困り果てたように、わたわたと手を動かした。
私は目を手でごしごしこすると、エドラヒルさんに言った。
「だから、言います。お父さん返してって」
「そう、――そうか」
それからはっとして、頭を下げた。
別にエドラヒルさんがお父さん連れてったわけじゃないのに、感情的になってしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「……すいません、エドラヒルさんに、こんなこと言っても仕方ないんですけど」
「……いや……いいんだ、エルフとして申し訳ないとは、思う」
それから自分の花壇を指さして言った。
「そ、そうだ。欲しい花があれば、どれでもやろう」
「……いえ、ありがとうございます。でも、せっかく育てているものをあんまりいただくのも、悪いですから」
「いくらでも咲かせられるから、遠慮しなくてもいいぞ」
「そうなんですか?」
「ああ。見ていろ」
エドラヒルさんは、花壇横の物置棚の引き出しから何か出してくると手にのせて私の方に差し出した。覗き込むと、それは、小さい黒粒……花の種のようなもので、そこからにょきにょきと緑の芽が伸びて、あっという間にぽぽぽぽんっと白い花が咲いた。
「わぁ!」と歓声を上げると、エドラヒルさんは満足そうに笑って、咲いた花を私の両手に押し付けた。
「持って行け。また花が欲しければ、私のところに来い」
「ありがとうございます!」
嬉しいけど、どうしようかなぁ。オリヴァーさんのお宅の借りている部屋に飾りますか。
そこで、私はもともとエドラヒルさんのところに来た目的を思い出した。
「そうだ。オリヴァーさんが今日も夕食を私たちにご馳走してくれるそうなんです。それで、エドラヒルさんも一緒にどうですかって、私聞きにきたんです」
「いや、私は……」
「ご飯、みんなで食べたほうが美味しくないですか? エドラヒルさん、それ食べてるとき、あんまり美味しそうじゃなかったから……」
私はちらりとテーブルの上のお皿を見た。
「……」
「良かったら一緒に食べましょうよ。あの熱くなったり冷たくなったりする魔法草のソース、エドラヒルさんが考えたんですよね。今まで食べたことない味で面白かったです! あれ、他のもあるんですか?」
「……びりっと痺れる雷属性のソースも作ったが却下されたな」
「そうなんですか! それもちょっと食べてみたいですね……」
エドラヒルさんはため息を吐いてから、ふっと笑って答えた。
「じゃあ、夕食までに作って持って行ってやろう」
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