【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏灯みかん

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7.元聖女は辺境の地を訪れました。

第179話

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 えぇっと、ステファンの話を整理すると、ステファンのお父さんが昔鬼をひどい倒し方したから、それで呪われちゃって、その時に逃げた鬼が長い時間かけて増えて、このお屋敷らへんを襲おうとしてるってころですね。

 それで、わざとちょっと遠いところに巣を作って、そっちにアイザックさんたちの気を引いている間に、襲って来ようとしてるってことですよね。

 ……鬼って、頭良いんですね。

 私が頭を整理している間に、アイザックさんは金色の髪をわしゃわしゃっと掻きむしった。

「――――そう、ですね。あっちの巣は囮か……、しかし」

 言葉を切って、ステファンを見つめる。

「僕らが巣を叩きに行った隙を狙って、こっちに攻めてくるとして――どこからです? うちの領地を狙うなら正面の草原から以外に……」

 そこで、はっとした表情になって黙った。ステファンも頷く。

「裏山の方からは考えられるね。――様子を見てきた方が良い」

「裏山か……」

「僕がライガと明日見に行ってくるよ。今日はもう暗くなりかけてるし……、まぁ、すぐに来るわけじゃないだろうし。一応、裏山沿いにも警備を入れておいた方が良いと思うけど」

「――ステファンお兄様に、任せるの?」

 フィオナさんが意味ありげにアイザックさんに聞く。
 
「……」

「裏山は僕らのが詳しいから、僕が行くよ。獣道とかも、分かるし」

 ステファンの重ねての言葉に、アイザックさんはため息を吐いてから、呟いた。

「そうですね……、兄上はライガを連れて裏山にばかり籠っていましたからね」

「まぁね」

 ステファンは実家に帰ってからずっと浮かべている苦笑の表情で、頷いた。

「……お願いします」

 アイザックさんがそう言ったその時……、カッカッカという高い足音が響いた。
 ばんっと扉を開けて、女の人が部屋に飛び込んでくる。

「アイザック、お帰りなさい! ……ステファンとライガが一緒に帰って来たって、先ほど聞いたのだけれど……」

 ふわりとお花のような良い香りが漂った。ドアの近くにいた私は、飛び込んで来た女の人を見上げて、思わず見とれてしまった。美味しそうな蜂蜜みたいな色の髪を結ってまとめていて、素敵な淡い紫色のドレスを着ている。すらっと背が高くて、綺麗という言葉が似あう女の人だった。

「ヴィクトリア様……」

 アイザックさんは、険しくしていた表情をふっと緩めた。
 あ、やっぱりこの人がアイザックさんの奥さんのお姫様で、ステファンの元婚約者のヴィクトリアさんですか……。

 彼女は、部屋の中にいる私たちを見回して、顔を赤らめた。

「お義母かあ様、フィオナに……ステファン、ライガ、お客様も……、すいません、忙しなくしてしまって……」

 ヴィクトリアさんは私を見つめて、名乗った。

「アイザックの妻の、ヴィクトリアと申します」

 それから、ステファンとライガを見つめて、明るいオレンジ色の瞳を潤ませた。

「ステファン、ライガ……お帰りなさい……」

 ライガは「おう」と手を上げて、挨拶した。ステファンは、また苦笑したような笑顔を浮かべている。

「急だけど……ただいま」

「……腕は、どうしたの?」

 ヴィクトリアさんは、ステファンの添え木で固定されて包帯を巻いた腕を見て、顔色を青くした。

「ああ……戻りがけに、鬼に襲われて。でも、アイザックに助けてもらったよ」

 ステファンは左手で髪を掻いた。
 ヴィクトリアさんは小さく「鬼」と呟いてから、アイザックさんを見つめた。
 唇が震えていて、今にも泣きだしそうだ。
 
「……アイザック、領地内に、鬼が出たのですか?」

「いえ、領地の外です。――外にいる辺境民のテントが襲われただけです。全部退治しましたし……、安心してください」

 アイザックさんはおろおろしたように、ぎこちなくヴィクトリアさんの背中をさすった。フィオナさんが、アイザックさんをじとっとした目で睨む。

「お兄様、だから、帰ってきたらまず、お義姉ねえ様のところに行ってと言ったのに。お兄様が国境沿いの見張りに行かれてから、ずっと心配してらしたんだから」

「すいません、兄上のこともあったので……、取り急ぎ、家族で話をと思ってしまって……」

 アイザックさんは、視線を泳がせて口をごにょごにょさせた。
 何だか、さっきまでのびしっとした様子と全然違いますね……。
 奥さんの前だからでしょうか。

 私はナターシャさんとテオドールさん夫婦を思い出して、首を傾げた。

 でも、奥さんと旦那さんにしては、ちょっと距離感のある雰囲気のような気もしますね……。

「家族、で」

 フィオナさんは表情を少し強張らせて、アイザックさんの言葉を小さく繰り返した。
 フィオナさんが持っていた杖でアイザックさんの背中を小突く。

「僕が母さんに話があって、急がせたんだ。ごめん」

 ステファンが少し大き目な声で、「なぁ」とアイザックさんの肩を叩いた。

「そうなのね……、邪魔してしまって、ごめんなさい」

 ヴィクトリアさんは息を吐いて柔らかく微笑むと、一歩後ろに下がった。
 アイザックさんは焦ったように髪をくしゃっとさせた。

「いえ、邪魔などとは……」

 ステファンがぽんっとアイザックさんの肩をまた叩く。

「じゃあ、裏山は明日僕らが調べてみるよ。フィオナ、僕の部屋ってそのままかな? ライガの部屋は?」

「――全部そのままにしてるわよ。魔法の練習場にしようかと思ったけど、お母様がそのままにしとけって言うから」

 フィオナさんはぶっきらぼうにそう答えた。
 ステファンは引き続き苦笑して答える。

「そっか、ありがとう。レイラにも部屋を用意してもらってもいいかな?」

「わかったわ。――いくつか、部屋は空いているから、気に行ったところを使ってもらって構わないわ」

 フィオナさんは私に声をかけた。

「ご案内するわ。ついてきてくれるかしら」

「ありがとうございます」と彼女について部屋を出ようとした時……、

「私も一緒にご案内します」

 ヴィクトリアさんもそう言って、一緒に私たちについてきた。
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