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【1】聖女 目覚める

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 百年って……じゃあ、他のパーティ・メンバー……盗賊シーフ召喚士サマナーも……?

 あまりの年数にくらくらする。
 絶句するわたしに、魔王は何を勘違いしたのか両手をぱたぱた上下に振って、

「あっ、大丈夫ですよっ。ルチルさんは変わらずずっと可愛らしいですよっ」

 そう言って、背後から手鏡を取りだした。ぬいぐるみと同じくらいの大きさだ。

 どっから出したの……それ……。

 促されるままに受け取る。黒蝶貝と、瞳と同じ色のルビーで装飾されたそれを覗き込んだ。

 淡い金のロングヘアーに、グリーンの瞳。ちょっと顔色が悪い気はするけれど、見慣れた自分の顔だ。

 そのまま視線を下げると、金糸で縁取られた白い法衣ローブが目に入る。肩から垂らした長いマント。要所要所に付けられた、小さな八つの緑色の宝珠オーブもあの日のままだ。

 ……え? なのに、外の世界は百年も経ってるの……?

 ゾッと背筋が寒くなった。

「あ、ありがとう……」

 お礼を言って手鏡を返すと、ぬいぐるみは嬉しそうにぽっと頬を染めた。

「あ、あの、具合が悪そうですけれど大丈夫ですか?」

 鏡を背中に仕舞いつつ、上目に覗き込んでくるぬいぐるみ。

 だからどこにしまってるの……?

 わたしは小さく頭を振りつつへたり込む。

「あんまりだいじょばない……。え? てかほんとに、ひゃ、百年……?」
「はいっ。本当です!」

 胸を張る魔王。

「実は僕、ルチルさんより二年ほど早く目覚めたんですよ~。で、さっきの手鏡で外の世界を映して、色々見ていたんです。
 正確には封印されてから、今年で百と三年目ですね」

 ぽにゅっぽにゅっと足音を立てて、魔王がこちらに近づいてくる。

「あ、あの安心して下さいっ。ルチルさんの事は、僕が全力でフォローしますから!」
「…………ぬいぐるみが……?」

 魔王が魔王のままでも困るけれど、ぬいぐるみに生活の援助をされる未来が明るいとも思えない。

 眉根を寄せるわたしの足元まで来ると、

「それについては、ちょっと試したいことが」

 ぬいぐるみはぴょんっとジャンプした。
 わたしの顔に向かって。
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